↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神威(カムイ)の流転と聖なる詩片  作者: カムイ ピリマ(神はひそかに教える)
第壱部 『神威息衝く古代國』編
71/102

第32倭 久遠の合掌を撃ち抜く希望之一閃 【後編】

 凄絶なる前乃世の事変……。

 彼の胸中に秘められたあらましが、ここにすべて開闢されてしまった……。


「……おのれジェスターめ……!

 我に『綴られし分際』でよくも……!」


 告発の担い手(サタン)は、想いもよらぬ自神の別御魂が齎した「暴露」に対し、怒り心頭に声を荒げる。


「まずいです!

 みんな、僕の後ろへ来て下さい!

 目覚めよ! 虚空(ニス)ーっ!!」


 漆黒の雷光迸る虚無の波動。

 それは、触れるものすべての「記述」を消滅させて襲い掛かる。

 ヤチホコは己の虚空を極みまで高め、全力で喰らい尽くす。


「――掌が、動きが、凪いでいるぞ!!」


 冷酷な笑みを浮かべ、虚空より黄金に輝く剣を呼び出してサタンは襲い掛かる。


 その刻……「緋緋色金」に直霊されし究極の城壁を打ち破る轟音。

 地響きと共に閃光が迸る。


「よくやったアビヒコ!

『サタン(こいつ)』には積もる話がある。

 お前達は一足先に……『最上の世界』へ行きたまえ!」


 そこに顕れたのは、アビヒコの父、「ルース」。

 だが、その姿は生身ではない。

 曾てイザナギと共に「星々之海」を翔け廻った、身に纏う翼。

 天之鳥船其之弐、「金翅鳥(ガルダ)」。

 ルースより託された「想い直霊し姿」へと、鍛冶師チュンダと掌を取り合いて「打ち直霊」し、今此処に顕現する。


「ル、『真理の導き手(ルシファー)』!! 

 ……憐れなり。

 民衆(ウタラ)の身に窶(やつ)した故の斯様に無様な姿。

 ――成程、賢しき。

 だが、同様の剣、この掌にあらん!」


 ルースを観て驚くも、不敵な笑みを浮かべ黄金に輝く剣で斬りかかる。

 激しく響く金属音。

 舞い散る金属片。

 その音を、ルースが纏いし巨躯の衣はいつまでも美しく鳴り響かせる。


「その音の響き具合――ま、まさか!!」


 不敵な笑みを浮かべている様に観える、朱金に輝く巨躯の仮面。

 床の敷石へと深々と刺さる、へし折られしサタンの剣。

 その剣は、「緑柱石(ベリル)」と「赤銅(フレカネ)」を火に焚べて「綴り直霊」した金属。

 管理者の象徴、超硬なる「真輝金」を鍛えし業物。


「悪いが……。

『真輝金(それ)』ではこいつには傷一つ付けられん。

 なにせこれは……『ホンモノ』だからな!」


 胴体中央の扉が開き、観えてきた操舵の座に顕れた、得意満面の笑みを浮かべるルース。

 想い還すは……豪快に笑うチュンダの断言(ピリマ)。


「真輝金(オリハルコン)?

 ないだってそったらもん、『貧者の金』だべさ!

 『ホンモノ』はもっともっとなんまら固いべさ!」


 そう言い放ったチュンダは、更に緑柱石を加え始める。


「燃え盛り溶け合いて産まれ直霊せよ!」


 「封輪火斬」より賜りし、極みの熱さを持つ大焔《アペヌィ》に焚べ、打ち直霊す。

 出来上がった金属を神殿に捧げ、真寧な祈りを捧げる。

 それは、想いと祈りを籠める程、「刻を置く程」に強く練り上がってゆく。


「とっくと観るべさ! これが本当の……!」


 奉じられた真輝金は、真なる輝き、朱金之光を放つ、「緋緋色金《ヒヒイロカネ》」へ産まれ直霊する。


「す、素晴らしい……!

 これぞまさに民衆(ウタラ)と神威(カムイ)が『掌を取り合い』し象徴……!」


 最高の素材を得て、ルースと純陀は掌を取り合い、民の希望を造り直霊して征く……。


「したから、コイツを……だべ……」「それはいい! で、ここはこう、そしてこの羽を……」


 寝食も忘れ没頭する二人。

 微笑ましく見守り、甲斐甲斐しく差し入れをする香(シャン)。

 前乃世で、イザナギの背に纏われ、星々之海を翔け廻った金翅鳥。

 今此処に、ふたりの想いをその身に受けて、纏いて乗り込む神威の姿の、「新たなる天之鳥船」として産まれ直霊されてゆく。


「――『現人神威(ウタラ=カムイ)』。

 それが私達が与えた真名だ」


 彼の刻の翼が「究極装甲」として蘇生《よみがえ》る。

 「緋緋色金」に輝く、十二翼の如意宝珠を受け皿とし、乗り手の「智慧と想念」を、「権能と動く力」に「詠い直霊」して顕す巨躯。


 それはまさに、神威と民衆が掌を取り合った姿……。

 驚いて食い入るようにアビヒコが見つめる。


「父さん、これって、この『神威之城』と同じ技で……!」


 ルースは一瞬「伊弉諾《ヤチホコ》」を見遣る。

 そして大きく頷く彼と共に、力強く笑みを浮かべ拳を握り締める。


「そりゃそうさ。

 『あの刻』、『イザナギ《かれ》』に建造法を遺したのは、何を隠そうこの私だからね!

 研究を重ねたこの機体は、私の『想いの強さ』如何で……この『神威之城』をも超える。

 それは、『かつての私(ルシファー)』に限りなく近い!」


 ルースが操る「現人神威」が、サタンの虚無を朱金の拳で殴りつける。


「さぁ、今からこの力で、君たちを次元の彼方……。

 『妙覚』の境涯を抱く私《ルシファー》と、『等覚』の『サタン(かれ)』しか辿り着けぬ、最高位の境涯……。

 『仏界』まで次元跳躍させる!

 全員、己の神威を全力で放て!

 行くぞ!

 現人神威之力(ウタラカムイ=マゥエ)!――『 希望之一閃(レンカ・トゥィエ)』!!」


 ヤチホコの銀髪が、スセリの新緑の風が、瑞月の紺碧の光が……。

 「十界の顕現」全員の想念が、ルースの巨躯へと集束する。

 闇黒の紅蓮燃ゆる輝きから「真輝銀」へ至り、「緋緋色金」を超えて極光となって煌めく。

 一条の眩い「希望之閃光」が、天界を劈き撃ち抜いて、遥か虚空まで翔け昇り征く。

 因果を、次元を、そして絶望を置き去りにして、「十界の顕現」達は最上目指し上昇し続ける。


 そして――。

 光が収まった先、彼らが辿り着いた広大無辺な玄室。

 それは、全ての記述されし叙事詩の、「創世《はじ》まりと終焉《おわ》り」が交錯する空間であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。