第31倭 原典の 絶望超えて 此処に十界直霊せん 【前編】
其之壱 『正気と狂気 全て受け止め産まれ直霊せん』(ヤチホコ之章)
ヤチホコは、鏡水顕導神、そして「大いなる真理」の深淵で観せられた、前乃世の根源神威に「書き換えられる」。
そして彼のいにしえの刻へ跳ばされる。
それは、「供犠の剣」を産み直霊して暫く経ち、嬉々として狂気の好奇心を満たしていた頃。
突然彼は、その「狂気」を「書き換え」られて「正気」に還される。
「ヒヒッ! オマエまで狂ってちゃ、これから先の催し物が面白くないからねぇ!」
その世界にて観た光景……。
それは、「告発の担い手」が産み出した調和魂の顕現、道化師ジェスターが齎した「偽りの深紅の怨嗟」よって、己の伴侶である根源神威之妹が、「破壊の女神」へと「狂い直霊」されてゆく処であった。
「……無事終わったねぇ? ほおらよぉく観てごらん?
アイツが『キミ』の仇敵、根源神威さ!
アイツはキミの『息吹』なしでは大した事無いからねぇ!
とことん痛めつけてやりたまえ! ヒャハハハハ!」
「ナミィィィイイッ!!」
「……邪魔ですわ、あなた。わたくしにしつこく纏わりついて五月蠅いですわ……!」
繰り出されるは……四大すべてが猛りし暴風。
根源神威は、彼女の大凬の息吹無く、完全に目覚められない虚空で辛うじて喰らい尽くすも、ただの一撃で身動き取れなくなってしまう。
「……今度邪魔しましたら……『輪を廻らせ』ますわよ! アーッハッハッハッ! 船をお出しなさい、『召使い』!」
「ヒヒッ! コイツは最っ高に退屈しないねぇ!
ふたりとも同じじゃつまらないからねぇ!
はいはい船出しますねぇ! ヒャハハハハ!」
それは、「創造主」に全権を任されし「片腕」の一柱、「告発の担い手」に湧き上がりし探求心。
――正気と狂気が掌を取り合えるか――
「……貴様も我の手伝いするならば、共に連れて行ってやろう……」
告発の担い手の冷徹なる勧誘。
イザナミから離れられないイザナギは、苦渋の判断で頷く。
「破壊の女神」は、告発の担い手の手下として、世界に暴虐の限りを尽くす。
「一体なぜこんなことを!」
イザナギは惨状を観て激昂する。
「これは奇異なる事を。
世界に怨嗟満ち溢れる程、我の権能高まりし故なり」
世界を紡ぐ「負の想念」の担い手である彼が、至極当然の事として告げる。
その影で、同じく世界を紡ぎし「正の想念」の導き手が、救い直霊し調和を取る。
「こんな事をしなくても、産まれ直霊されてしまった『禍々しき想念』を直霊するだけでこの星系の調和は叶うだろう!」
今の根源神威と全く同じ想いを抱き、告発の担い手に相対する存在。
「あい変らず暑苦しいねぇ、真理の導き手さまは。
あんなヤツラ足りなくなったら「綴り直霊」したらいいだけの存在なの……!」
ジェスターが言い終える前に厳しく反論する。
「ジェスター。
『キミ同様』、彼等の身体に宿る魂。
それは――正真正銘『本物の意思』を持つ存在だ!
決して軽んじていいものじゃない!」
ジェスターは、興ざめとばかりに両の掌を天に向け、わざとらしく首を横に振り引き下がる。
一つ溜息をつき、ルシファーはイザナギへ向き直る。
「……キミは……どうやら『正気』のようだね?
改めて名乗ろう。
私は……『主』の左手、『想いと自由』の顕現、真理の導き手」
それは、宇宙の摂理の如く自然に成されていった事。
希望と自由を詠う、真理の導き手と根源神威。
絶望と管理を記述する、告発の担い手と根源神威之妹。
相反する存在同士、すべてにおいて反目していく。
「邪魔な羽虫を抓み取るのに、何ゆえ躊躇うのかしら?
とてもではありませんが、わたくしには理解できませんわ」
袂を分かちてしばしの刻が流れてゆく。
いつしか、真理の導き手の導きで、根源神威が産み直霊した天之鳥船達。
彼は、その希望の翼を星の海目掛けてはためかせる。
赤き星……細やかな星々の海……立派な輪を湛えた巨星……。
翔け抜けてゆく。
「素晴らしい! 『金翅鳥』、キミは最高の翼です!」
瞬く間に太陽を遥かな後方へ置き去りに、根源神威は更なる外へ向かおうとして征く。
辿り着いたのは……この「星の連なり」の果て……。
「な、なんだ、これは……!? か、壁が……くっ!」
意を決し飛び込むと……事もあろうに、この「連なり」の反対側から顕れる。
「……とうとう知ってしまったか……」
己の自由意思を得る、それは、「知りたくない真実」をも自身の掌で掴み取れてしまう権利を持つ事でもあった……。
「ここは、偽りの『宇宙』! で、では……僕達は……僕達も……!」
天之鳥船其の弐、変形式一体型鳥船、「金翅鳥」を背負いて星の海を翔け廻った根源神威。
彼は、この「果ての壁」によって、自分達も「主」に綴られし「産み出されしもの」である事を理解してしまう……。
彼の胸中に湧き上がるのは……絶望への際限ない怒り。
彼は、誰にも知られずに、ルシファーより授かった己の「自由意思」に、「管理を齎す主への反逆」の想念を「書き込んだ」。
それは、因果の下、彼に生み出されし遍く存在へと波及していく……。
その後、告発の担い手から離れ離れにさせられ、操られて「破壊の女神」と化した彼女を救う為、サタンの命に従うふりをして、血の涙を心の中で流しながら、「主」への反旗の象徴、『天超飛翔神威之城』を完成させる。
「呪檻にて怨嗟を放つ四氣王よ、天を超えて我を飛翔させよ!!」
根源神威は、「城」の権能を限界まで暴走させ、「バグ」と呼べる神威を以て、最上位管理神である、「告発の担い手」を屠る。
そして無理筋徹し、「主」の喉元へ詰め寄る。
御前にて、彼を倒してなお、正気を喪ったままのイザナミに相対する。
「羽虫……いいえ、『我が背』。
そう呼ぶに相応しき無理筋徹した神威ですわ。
よろしい、尋常に比武して差し上げますわ……!」
絶対なる空間にて行われる極みの比武。
横に浮かぶ紺碧の球体……。
この「世界の礎たる大地」程度では、とても支えきれぬ根源神威達が齎す終焉の波動。
「いい、とても宜しくてよ我が背! このわたくしが……見初め直霊してしまいそうですわ……!」
妖艶さに残酷さを迸らせて四大の暴風が襲い掛かる。
「呪縛怨嗟之刃!!」
呪いの咆哮が暴風を喰らい尽くす。
「そうこなくては……! 最高ですわ、我・が・背! アーッハッハッハ!」
根源神威之妹は、己の全力を行使出来る事に対し、恍惚なる歓喜を顕す。
玄室の入り口、静かに起き上がる存在。
「まさか『被造物』相手に我が真に顕現せねばならぬとは……」
従者二柱が吸い込まれて逝く。
爆発的に放出される神聖波動。
背に輝くは白金の十翼。
「根源神威之妹よ、邪魔者を排除せよ! 付与魔闘氣呪!!」
強制付与される夥しい怨嗟の氣力。
それは、完全に根源神威之妹から正気を奪い去った。
限界を超え、身体中から炎の様に噴血しようとも一向に構わず、彼女は持ち得る最大限の神呪を放つ。
その凄まじさに一方的にイザナギは翻弄され、打ちのめされ、輪を廻る寸前まで追い詰められる。
「アハッ! 最後はわたくしが……この掌で、あなたを永久に眺められるようにしてあげるわ!」
一足飛びにイザナミが襲い掛かる。
怨嗟の火焔迸る手刀にて、彼の面と胴体に別離を齎そうとしたその瞬間、イザナギは彼女の手刀を背負いし剣で受け止めて、全力で抱きしめる。
「こ、今世で叶わぬならば……と、共に『輪を廻り』……次の世、で……!」
息絶える直前、意を決した根源神威は、己ごと根源神威之妹をアメノオハバリで貫いて『輪を廻ろうとする』。
「その様な叙事詩を、『わたくし』は綴っておりません」
「主」の言の葉が響いた瞬間、二神は硬直し、輪廻の直前で魂はそのまま捕らわれてしまう。
その後の子神達による、「想いと自由」を護り徹す為の、決死の禁呪での外なる世界への流転……帰還……。
そして更なる深淵……。
超然としすぎたが為、綴り直霊されたもう一人の「自分」が顕れる……。
その歪んだ健やかさ、裏に潜む醜悪さ……。
ヤチホコは、彼の歩みを見せ付けられて魂の底から辟易する。
だが、その「却下された自分」があるからこそ、今の狂気的な程直向きで、
愛ゆえに過ちを犯す程の、「想いの強さを内包する」自分と成れた……。
ヤチホコは誰に言われるともなく、自然に感謝の想いが口伝に溢れ出す。
「……ありがとう……。
僕は……『今の僕』が……犯した過ちや罪でさえも……大好きです!」
静かに微笑みを湛え消え逝く幻影……。
ヤチホコは、彼の想いをも己の虚空で受け入れてゆく……。
そして、「原典」の残滓……幻影の彼が抱く、昏き情欲を観じ取り、静かに語りかける。
(そうか……。
『キミ』は……揺蕩う想いありながらも……。
それほどまでに……誰でもなく、『彼女』の事が好きだった……のですね……)
もう一人のヤチホコの抱く、「健やかな強さ」と「昏き情欲」、そして「彼女への想い」も、「自分」として抱き直霊する。
いくら前乃世の非道、誤った自分を見せつけられようとも、ヤチホコはその奥にある「真理」を見い出し、見抜き、直霊する。
「これはすべて真実です……。ですが、『今』じゃありません!」
瞬間、世界が翻り直霊してゆく。
ヤチホコは、記述に造られし「回帰の呪檻」である事を見抜いて暴く。
そしてかつての、「異なる道筋の自分」さえも受け入れ切った姿で、力強く立ち上がる。
管理と秩序の「法」を超えた、清濁混沌なれど愛すべき、想うが儘の「自由」。
今、それを説き、万民へ届けしルシファーの「想念」を完全に受け継いで、更なる先へと歩み征く。
真輝銀に輝く髪、紅玉の神瞳、万象と全次元すら受け入れ得る程に高まった無限の虚空……。
顕れたるは完璧なる「希望の器」。
今、ヤチホコは、『統治之神威 伊弉諾』として完全覚醒を果たす。
其之弐 『引き継ぎ直霊す自由の翼』(アビヒコ之章)
アビヒコが遡るのは……遥かなる創世の過去。
「……ダメです……。祝詞の声掛けの順番を違えてしまったせいでしょう……」
根源神威は、残念そうに産まれたての存在を見遣る。
「そんな……せっかくはじめて御陰之目合の儀を執り行ったと言うのに……」
彼の言葉を聴いて落胆を隠せない根源神威之妹。
「……『主』へ詔を賜りに参りましょう……」
「この世に産まれ直霊し事に変わりありません。
ここ、天地の狭間の海に流せば、地上の海へと流れつき、そこで生を紡ぐでしょう」
居た堪れない面持ちで、二神は生命の実の葉で優しく包み、船へと直霊して産まれ落ちた存在を乗せる。
それは、骨や筋……身体を一切備えず、臓腑と霊体のみの蛭子であった……。
(……そう……ぼくは……神威降ろしされてすぐに『棄てられた』……でも……)
湧き上がる原初の記憶……。
それは、「蛭子」として地上の海を漂っていた頃……。
天より舞い降り、静かに歩み寄る一柱の女神。
「あなたもここへ流れてきたの……?」
(ぼくは……できそこない。だから……棄てられたんだ……)
その言葉を聴いた女神に静かに心に燈る情熱。
「そんなこと誰が決める事でもないわ! わたしはあなたもまた、素晴らしいたった一つの存在と認めるわ! 四氣王よ!」
(そう……あの刻、ぼくは本当の意味で『産まれ直霊』でき……そして……)
魂の奥底から響いてくる、父の熱い咆哮。
「神威降臨乃儀!
この儀を以って、我らは永久に契り交わす事誓う!
そしてこの蛭子を『魂の息子』とし、育まんと欲する!」
(はは……ぼくは何を臆する必要もない……。
こんな素晴らしい両親のもと、『子』として育ててもらえたのだから……)
次に観えてくるのは……今世の一番の絶望。
自分の身体が調律を乱し崩れ去ろうとしたその刻。
両親に助けてもらえなかった絶望……。
それは、一つ遡りし刻、あのオロチの乱の終結後、両親不在のまま「露丝」の街から出てしまった為に齎された出来事……。
「ぅうぁあっ! か、身体が……! だ、だれか! ぼくに『氣力』を!!」
近隣を治める頼みの綱であるウガヤも、意宇之國へ出向して不在であった……。
「あぁ……だめだ……崩れて……もとに……『蛭子』に還ってしま……」
「させないわ! わたしがあなたを支えてみせる!」
顕れたのは……民衆の乙女。
「気持ちはうれしい。でも君じゃぼくの身体を保つほどの……!」
「師匠達! わたしに霊力を!」
掛け声と共に彼女へ降り注がれる煌めく霊力。
ただの民の乙女から、観る間に莫大な黄金の氣力が吹きあがる。
「啊啊啊啊啊啊っ!
付与生氣呪!!
そしてセイリュウ! 快癒呪……!」
莫大な氣力の付与により、瞬く間に身体が造り直霊されてゆく。
その直後に降り注ぐ紺碧の輝きが、憔悴しきっていた彼を癒してゆく。
「あ……あぁ……あぁぁあっ! ありがとう……本当にありがとう……!」
アビヒコは涙ながらに彼女へ感謝を伝える。
観ると、彼女の眼から彼以上に熱い滴が溢れている。
「良かったね、本当に……。
ううん、良かったのは……わたしだわ……!
なんだか昔のわたし自身も助けられた気がして……」
自然と抱き合い、想い想いに今在る幸せを噛み締める様に、声が枯れる迄、共に泣き続けた……。
アビヒコは、崩壊寸前の自分を救ってくれた、姉の様に頼れる彼女を思い出す。
(そう。彼女の氣力を受けた、あの刻からぼくは……)
必死で全力を籠めた彼女の付与。
それは四大の氣力、そのすべてが籠められていた。
(そのおかげで、すべての氣力を遣いこなし、足並みさえ揃えられるように……!)
その想いに至った瞬間、一つ遡りし刻の、「崩壊の悪夢」は霧散した。
続けて観えてくるのは……更なる過去……「原典」。
「これは……そ、そうか。
今のぼくよりも……ずっと子供なのか……!」
瞬時に見抜けてしまった。
それは、幼さゆえの母への執着と偏愛。
そして母を卒業しようと、よく似た彼女への憧憬と羨望。
「はは、そんな想い、誰にだって湧き上がるものじゃないか。
そう、ぼくは『彼女』を尊敬しているし……たしかに『好き』、だ。
だけど、彼女の想いがどこにあるかも……残念ながらこの一蓮托生呪で『知ってしまって』いる。
なら、『姉』として応援してあげるのが……善男子だと思うよ」
眼前に自分だけの彼女が顕れ、アビヒコにしなだれかかる。
「彼女にそうされたら、確かにうれしい。それは認めるよ。
でもね、彼女なら、自分が欲しいなら……両手両足をへし折ってでも抱きしめるさ。
こんな穏やかにせまるなんて……ありえない……!」
彼女の幻影が霧散した後、最後に齎されるのは……圧倒的な「神威之奔流」。
それは、微弱な五大の氣力しか遣えないアビヒコに対する、有無を言わせぬ真なる絶望。
膨大な神威に圧し潰されそうな彼から立ち昇る、天界を覆い尽くさんばかりの巨濤のような神威之力。
「父さんも母さんも、あの乱の後のみんなを救うため、ぼくから離れていたんだ。
それはぼくを蔑ろにしてなんていない。
ぼくの、ぼくの内に眠る本当の権能を……ふたりとも信じていたから。
今こそ目覚めよ、ぼくの内なる『無限乃希望』!!」
響き渡るアビヒコの絶唱。
それは、五大の氣力を纏め上げ、根源の氣力、霊力の下に放たれる、至高の権能「神謡者」。
彼の咆哮が聖塔に響き渡る。
「これは……! まさかアビヒコが!?」
聖塔と繋がりし天之磐船。
そこに宿るオオトシの驚愕。
迸る瑞光に籠められた氣力は、今の彼をも超え得るほどの途轍もなさであった。
「こ、これはまさか!」
廣目天がすべての眼を見開き刮目する。
彼の眼を湛えた「謙虚乙女」も同時に驚く。
「廣目天さま! この瑞光に宿る神威……!」
「まさしく。まさかあのお方が黄泉還られるとは……!
い、いや、これは異なる者……新たなる……である……か!」
途轍もない何かの胎動を観じ、廣目天をはじめ、四大王と乙女達はさらなる祈りを真寧に捧げる。
波動を感知した聖塔が、眩い一筋の瑞光、『希望道導』を放つ。
光はどこまでも伸びてゆき、自由都市露丝と掌を取り合う。
街の最奥部の神殿にまで差し込む瑞光。
途端神殿が光り輝き、喋り出す。
それは、ルースが純陀と共に造り上げた絡繰り。
生命之法具の応用で、想い宿りし神殿であった。
「……新たなる、そして真なる『神謡者』確認。
都市名、『露丝』より、本来の真名、『露絲』へと『綴り直霊』いたします……」
その声明が響いた瞬間、露丝の街を幾重もの、輝く「縁の糸」が包み編み上げてゆく……。
其れと共に、今まで鳴りを潜めていた五大の氣力が目覚め始める。
「……名称の解封に伴い、記述の中和、解除。
只今から、『露絲』は綴られし叙事詩に顕現可能。
これより、二大創世封印解除します。
『新生乃中和』解封……完了。
『新生乃中和』解封……完了。
属性反転……『不退転』発動……!
神威之色身体 飛翔! 新たなる導き手の元へ!」
「おぉ! これこそがこの神殿に祀られし神威……!」
神殿を預かる神官が、随喜の涙を流しながら跪き、両の指を絡め真寧に祈る。
緋緋色金に輝く十二翼をはためかせ、翔け抜ける先々に祝福を振り撒きながら神威之色身体は聖塔を、天界を、そして奪還すべきかの城を目指し一直線に雷光の如く飛翔する。
音も、空も、刻でさえも置き去りにする程の迅さ。
「ようこそ、父さんからぼくが受け継いだ神威之色身体!
ぼくの想いと重なり直霊せよ!」
緋緋色金の瑞光が迸る。
アビヒコは、眩い巨躯に吸い込まれる様に重なり合ってゆく。
「なんだと……。貴様……いや……彼の刻の『不良品』……。
身の程を知らぬ不届き者……!」
回帰の呪檻が粉砕される。
漆黒の砕片の中顕れたのは……。
漆黒から、人肌、真輝銀から緋緋色金まで、変幻自在に直霊叶い、想うが儘に増減させながら翼をはためかせる始まりの御使い。
それは、清濁併せのむ、混沌たる緋徒の「想いと自由の顕現」。
「……見事顕現叶いし事、一先ず誉めてやろう。
参れ、新たなる『真理の導き手』よ」




