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神威(カムイ)の流転と聖なる詩片  作者: カムイ ピリマ(神はひそかに教える)
第壱部 『神威息衝く古代國』編

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詩片の狭間 幕外 目指す先に坐す 猛ル宗像之大王

(『あの方』に何としてもお逢いして……『これ』を献上いたしませぬとなりませんわ……)


 今より一つ遡りし刻。

 それは、ミチヒメが英雄王ラーマとすべてを成して帰還した刻。

 ジェスターに棄てられ、正気に還ったミカヅチは、神聖城国(パセ=コル=モシリ)より、独りひたすら南下する。

 向かう先……奴國ナ・ラ神託啓示ノ國(イトムコカヌ=ナ)


下伽耶アラカヤは……もう謝る民衆ウタラすらおりません。

 ですがあのモシリは……。皆様の住まいについても、償いをしないとなりませんわ……)


 両刃の大剣の柄に座し、紺碧の海を斬り裂く様に渡っていく。

 上陸し、剣から降りて大地に立つ。


「たしかこの辺りだったはずですわ……」


 記憶を辿り歩を進めていく。

 すると観えて来る人影。


(……やはりワタシの接近、お気付きになられましたわね……)


 腕を組み悠然と立ちはだかるは……神託啓示ノ國(イトムコカヌ=ナ)の神官王。

 祭祀を掌る禰宜、ミチヒメの実兄であるのタカヒコであった。


「……お出迎えありがたく存じますわ。こちらから探す手間が省けましたわ」


「先の闘いの結果は、まさにおれの不甲斐なさ。

 それ故……住まう民に多大な被害を……。

 すべては……そなたのいでたちに惑わされしおれの未熟故。

 しかるに、本日は何用であるか?

 如何なソナタであろうとも……単身で我が国攻め入るとは、流石に思い難きだが……?」


「……お伝えしようとも、俄かには信じて頂けないでしょう……。

 故、ワタシが、是が非にも献上したくなりますよう、ラマトゥ揺さぶる素晴らしき勇敢さ、顕し下さりませ!」


 そう言うとミカヅチは、両刃の大剣へ雷光を迸らせる。


「……凄まじくも素晴らしい!

 彼の刻は……真なる権能チカラ隠したままであったか。

 つくづく己の未熟さに腹が立つ!」


 タカヒコは、眼前の存在への賞賛と、自神の未熟さへの憤りを露にする。


「……ワタシのものではございませぬ。

 狂気の戯れにて、彼の道化師により『書き込まれし』もの。

 言いますれば、夜空に浮かびて陽光を受け、優しく輝きを返す月光の如く……。 しかし輝いているのもまた事実。

 アナタさまも等しく輝く事叶わなくば、一合で、『遥かな天に坐す星のように』瞬く事になりますわ。

 覚悟のほどはよろしくて?」


 静かに謙遜を顕すミカヅチに、タカヒコは力強く頷いて長揖する。


「かまわん!

 まずは……礼を。

 先の闘いによって、そなたが見つめし星の瞬く空、共に眺める事叶いしなり!

 むぅん!」


 そう言うとタカヒコは氣力を全解放する。

 観る間に大きさも強さも練り上げられていく。


「素晴らしいですわ。氣力トゥムは明らかにワタシを上回っておりますわ。ですが、そのままでは、みずから星となりて天に昇るようなものですわ」


「我が業は我が為すに非ず!

 世界モシリに遍く精霊神ヤオヨロズよ!

 今、あなた方の声を拝聴し、我が身へと宿り直霊し給え!

 『精霊神顕現(カムイ=エウン)』!!」


 裂帛の気合と共にタカヒコは神呪を放つ。

 刹那、タカヒコの背後に浮かび上がる無数の精霊神。

 それらがすべて彼の鎧へと宿り直霊する。

 観る間に彼は変貌してゆく。

 大地を鎧として纏い、最後、炎の精霊神達が宿って強力に焼き締める!


「顕現! 『猛ル宗像(タケルムナカタ)之大王(ノ・オオキミ)』!」


 彼等の霊力が宿りし鎧を纏い、力強き大地の神威を放つ。


「猛りしも、禅定抱きてまします大王さま――素晴らしいですわ!

 よくぞここまで自力で練り上げられましたわ!」


「おれ独りでは叶かなわぬ事。

 精霊神ヤオヨロズと化した民達の協力によって為せる業。

 故に、我が業は我が為すに非ずなり!」


「その想念イレンカ、そしてそのお姿こそ……極みに至る道へと歩みし証拠ですわ!

 さぁ!

 その状態でございましたら、ワタシにも不服などございませんこと。

 いざ! 参りますわ!」


「おう!」


 ミカヅチは、権能を込めて己が相棒である両刃の大剣を全力で薙払う。

 剣撃は、音を置去りにして鋭い三日月が空を切り裂く。

 疾風の刃は、凄まじい速度でタカヒコに襲い掛かる。


 タカヒコは、後ろが観える程に大きく振り被り、強烈に掌底を打ち出す。


 超高圧縮された空が大筒と化す。

 それは、ミカヅチの観えざる刃と真っ向から衝突する。

 すべての存在を断じられるが如き痛烈な破裂音。

 暴風が吹き荒れ、刃も大筒も互いに消し直霊する。


ニスを固め放ち、我が刃打ち消すとは……流石ですわ!

 では、これならいかがなさりますかしら?

 やぁぁぁっ! 『猛リシ御雷(タケリシミカヅチ)』!」


 ミカヅチは、氣力を全解放して剣へ徹す。

 そのまま天高く舞い上がる。

 振り下ろす剣の重みで激しく自身を廻天させ、其の儘撃ち降ろす。


「今のおれに只の氣力トゥムなど――効かぬ!」


 タカヒコは仁王立ちに構えたまま、平然と己の身体で受け止める。


「本物ですわ……!

 でしたら…………次は真なる権能チカラで参りますわ!」


 叫びと共にミカヅチは剣を天に翳す。

 湧き上がる水と風の気力に、観る間に雷雲が立ち込める。

 天を仰ぎ裂帛の気合を放つ!


「いやぁぁぁっ!

 曇天に住まう雷ノ神威(カンナ・カムイ)に申します!

 その大いなる権能チカラ、我が剣にお授けくださいませ!」


 轟音と共に、ミカヅチの剣目掛けて降り注ぐ凄まじい稲妻。

 乾いた破裂音を放つ輝く光に、己の氣力を混ぜ合わせ直霊してゆく。


「――参りますわ!

 我が『両刃の大剣カムイ エムス』よ、雷纏い猛り狂いて神威顕し給えぇっ!

 いっやぁぁあああっ!!」


 それは、ミカヅチの究極剣技、「雷神ノ剣(カンナカムイ=エムス)」。

 迸る稲妻と共に大上段から全力で振り下ろす!


「大地に遍く精霊神ヤオヨロズよ! すべてを遮る神威之防楯を顕し給え! ぬぅん!!」


 両腕を眼前で揃え顕現させるは、全てを防ぐ大地の顕現、「深山神威(ヲヲヤマツミ)」。


「それがただの岩塊でしたら、稲の如く刈り取りましてよ!」


 躊躇せず全力で剣を振り下ろす!

 激しい衝突音と波打つ波動が、周囲に容赦なく吹き荒れる。

 凄まじい衝撃。

 後に遺るは……木々も大岩さえもすべて吹き飛ばされた荒野……。


「凄まじき剣撃! 斯様な剣筋は祖父ハヤスサノヲ以来なり!」


 ほぼ無傷で受け切ったタカヒコ。

 その彼からの忌憚なき驚きと称賛。

 


「ほ、ほほ。この技でさえ傷すら負わぬのでございますか……。

 これは……今のワタシにアナタさまを倒す術はございませんわ……」


 ミカヅチはゆっくりと剣を下ろす。


「では……降参、か?」


「ほほ、そうでございますわ……参りましたわ」


(まだまだ余力有りと観えるが、何かの策か……?)


 タカヒコは警戒しつつ様子を伺う。


(今回、ミカヅチからは禍々しき想念(ウェンイレンカ)は全く観じぬ。

 むしろ此度は、まさに尋常の『比武』……)


「ワタシに勝ったのですから、報酬として……この権能(チカラ)、お受け取り下さいませ!」


 ミカヅチは、己に宿りし全ての権能を両の掌に凝縮させてゆく。

 瞬く間に雷光を纏う光球が浮かび上がる。


「こ、これを……両の掌で……お持ち、下さい、まし……」


 全てを放ち切り、息も絶え絶えに、ミカヅチは辛うじて光球を差し出す。

 タカヒコはしかと頷き両の掌を差し出す。

 その姿を観て、微笑みを湛え彼女は光球を丁寧にタカヒコの掌に乗せる。

 途端、身体を貫かれんばかりに迸る雷撃!


「ぬぐぉ!」


 タカヒコの身体は仰け反り、両腕は理不尽な程の暴威によってあり得ない曲がり方をする。

 その光景を眼にした者には、まさに彼がミカヅチに両腕をへし折られている様に観えたであろう。


「ワタシの全て、お受け取り下さいまし!」


 優しく静かにミカヅチは光球から手を離す。

 力無くよろめき、みずらがほどける。


 神威としての、精悍さと険しさに覆われた荒魂あらみたまが形を潜め、穏やかさと愛らしさの調和魂にぎみたまが顕れる。

 中性的で細くしなやかな肢体に、豊饒と妖艶さの曲線美が顕れる。

 崩れ落ち跪く姿。

 それは、まごう事なき麗しきヒメ……。


「これでワタシは、唯の民の乙女メノコでございますわ……。

 これは……に……恐ろしき……。

 今……アナタさまを拝見いたす事が……。

 この恐怖こそ……ワタシが民達に強いて来た所業……。

 まさに絶望と恐怖の略奪者ですわ……!

 ――さぁ!

 国を滅ぼした重罪人、正しき想念イレンカのもと、跡形もなく消し去ってくださいまし!」


 今はもう「ミカツヒメ」は、一頻り伝えると閉眼し、両腕を広げ大地に背を預ける。

 それは、迷いも恐れも後悔も一切観じず、為すべき事を為し遂げた晴れやかな表情と佇まい。


(う、美しい……。こやつ、真に乙女メノコであったか。

 年の頃はおれとさほど変わらぬ、これは……!)


 タカヒコは、静かにミカツヒメに歩み寄る。

 傍らで片膝をつき、慈しみを籠め、彼が触れるだけで壊れてしまいそうな、滑らかで美しい頬を、最大の注意を払い、優しさを以ってそっと撫でる。


「おれの……負けだ。

 オマエは、スゴイ奴だ。

 そして……まさに神懸かり的に美しい(キンラ=ピリカ=レカ)……」


 それは、向津日霊女ムカツヒルメの、「高潔な聡明さ」に触れた刻以来の胸の高鳴り。

 まさに稲妻に撃たれたかの如き魂の邂逅。

 眼前に横たわる彼女は、誰にも観せられないであろう、腑抜けた己の醜態など、一向に介さず惚けてしまう程の美麗乙女ピリカ・メノコ


「……ワタシの事、お気に召されましたのなら、どうぞお望みのままにして下さるとよろしいですわ……」


 静かに瞼を開き、全てを委ねる眼差しで彼を見つめる。

 そして再びゆっくりと閉眼する。

 タカヒコの胸は張り裂けんばかりに高鳴る。

 無抵抗な美麗乙女を、「想うが儘」にしたい熱情。

 昏き情欲が、暴風の如く渦巻き溢れそうになる。


「ワタシの本懐は果たしましたわ。

 最早この身がどうなろうとも……。

 『輪を廻る』事となり申しても……一向に構いませんわ……さぁ……」


 今の彼女は、タカヒコの想いひとつでどうとでもなる存在。

 だが、タカヒコは、魂の奥底より湧き上がる激しい渇望に必死で抗う。


「オマエ、いや、ソナタが、欲しくてたまらぬ!

 しかし……今は契りし事叶わぬ!」


「何故? ワタシはお望みのままにと申し上げてらっしゃいますのに!」


想念イレンカ交わして目合を。慈しみなくして契る事なかれ」


「それは一体……?」


「奇しくも以前ソナタに敗れし刻、傷ついた身体癒す為、向津日霊女ムカツヒルメ様の元へ伺い、治療の際に賜った言の葉だ」


「そんな事! ワタシはすでにアナタさまの捕虜同然ですわ。どう扱おうとご自由になされれば……」


 その言葉を聴いたタカヒコは……意を決す。


「では……自由にさせてもらう! むぅん!」


 タカヒコは気合と共に、先の光球を引き裂いていく!

 元の一割ほどの小さな光球を、己のラマトゥに翳す。

 すると、何の抵抗もなく身体に沈み込む様に入っていく。

 残りの殆どを、再度両の掌を翳し、想いを籠めて光球と化す。

 そのままミカツヒメの胸元より魂へと挿入していく。


「ナ、何故この様な!

 あぁ、入ってきますわ……ワタシの奥まで!」


 戸惑いと抵抗をよそに、深々と刺さり込む光球と権能。

 ミカツヒメは改めて受け入れ、己の魂の奥深くに刻み直霊した。

 途端、全身から迸る眩い輝き。

 彼女は乙女のまま、先のミカヅチの如く精気溢れる状態となった。


「こ、これは? 変成男子へんじょうなんしせずとも……氣力トゥムが御せますわ?」


「そなたが研鑽の果てに掌にした権能チカラ。御せぬ道理はなかろう」


 おかしな事をとばかりに、タカヒコは笑みを浮かべる。


「しかし、あの復讐を誓った刻以来……変成男子致しませぬと権能を揮えませんでしたわ?」


「それも……恐らくは己が想いが造りし縛りあろう」


「ワタシの想いが……?」


「あぁ。そなたの権能、その一部がおれに宿りし刻、想いの全ても共に宿りしなり。故、委細承知……!」


「――っ!」


 ミカツヒメは図らずも、消し去りたい忌まわしき過去を曝け出してしまう。

 彼女は恥辱と絶望感に苛まされ、その場に力無く項垂れる。


「そう、ですわ……。ワタシ、乙女としての価値など……ございませ……」


「斯様な事は断じてあらぬ!」


 ミカツヒメの自責を遮る、タカヒコの強く真寧な想い。


「そなたは素晴らしき乙女!

 それは、おれ自身のみでは敵わない程に素晴らしきもの。

 まさに、剣を携えた向津日霊女ムカツヒルメ様の如き。

 おれは……斯様な強さと美しさを併せ持つソナタを……魂の奥底より、好ましく想いしなり。

 故に、所有や支配などではない。

 互いに求め、真に愛し合いたい。

 その秘めし想念イレンカ……癒やす事叶う刻までおれは待つ!

 故、共に歩んでゆかぬか? 

 おれの……『いも』として!」


 タカヒコの真寧なる言の葉。

 耳に届き心に染み入る。

 瞬間、彼女の両の眼から止めどなく溢れる熱い歓喜の顕れ。

 タカヒコはそっと近寄る。

 頬を染め、少し照てれくさそう空を見上げる。

 そしてミカツヒメの肩を逞しい腕で、優しく、力強く抱き寄よせる。


「あ……。ワ、ワタシは、アナタさまの国を襲いし大罪人!

 それでも……このような事が許されてよろしいのでありましょうか?」


「かまわぬ、と言えばウソになるな。

 良き想い抱けず、苦言や厳しさを投げつける者も多くいるだろう。

 すべて受け入れて、受け止めた上で生きていけ!

 『輪を廻る』よりも辛き中、それでも前に歩め!

 おれは常にソナタの傍らで、共に背負い支えてやる!」


「タカヒコさま……。これはもう……。


 『かしこまりましたわ、仰おおせのままに』

 

 斯様にしか、お返しのしようがございませんわ」


 頬を伝い煌めく滴と、喜びに溢れたミカツヒメの笑顔

 それは、正に神がかり的な美しさ。


 反射的に込み上げる想いの儘、タカヒコは彼女の身体をきつく抱き寄せ、想いの熱を籠めた眼差しで優しく見つめる。

 ミカツヒメは優しく微笑んでそっと目を伏せる。


(ひとつずつ、重ねあっていこう……。

 我が『いも』よ、ソナタの罪も、想いも、苦しみも、共に背負い受け止めていこう……)


「……怒りと恨みに囚われし『修羅道』を抜け、真なるアスラ、『生命生氣之善神』への道、歩まん事叶いしか……待ち焦がれしなり!」


 想いと口唇重ね合う寸前、完全に無防備だった二人は、不意を突かれ驚きの拍子に飛び退のいてしまった。


 声のした方に視線を移すと――何とそれは、彼女の愛剣であった。


「我は剣之神威フツノミタマ

 ミカヅチとなりし愛弟子の想念イレンカと境涯が、『修羅』から昇る事叶う日まで、自神に封をかけ、只の剣として、共に罪障を分かつ身へと窶し直霊せん者なり」


「お、御師匠さま! いなくなられたのではなかったのですね!」


「ミカツヒメよ。其方にかけし封、『変成男子』。

 我の神威なくば弾かれしなり。

 故、封解けぬよう傍らに在り。

 堕ちし境涯、無事還らんとするまでが師匠の責、故の……」


「……皆伝の際、賜りし両刃の大剣(カムイ エムス)とばかり……」


 大剣が、頷く様に剣身を鳴らせる。

 染み入る様に広がる、優しく荘厳なる神威の波動。


「本当に……おひさしゅうございますわ」


「うむ。良きモノとも出逢いて何より!

 タカヒコ、いや、我が曾孫、宗像之王よ。

 愛されるべき弟子……ミカツヒメを頼みしなり!」


「剣之神威様……そうか! 祖父、ハヤスサノヲ様の!」


「いかにも。あの刻の善男子ヲノコが立派になりし事、心底歓喜抱きしなり」


 ――思い出した。幼少の頃に一度会っている。

 母タギリと、父意宇之國貴と、祖父のスサノヲと……。

 そして、生まれたばかりの妹、ミチヒメと共に。


「た、確か、ミチヒメが生まれし刻に!」


「左様。素晴らしきヒメ生まれたり……斯様に聞き及びて足を運びしなり」


 ミチヒメは、幼少の頃より類稀なる権能を発していた。

 まさに、天啓之贈与……。

 受け取る霊力に応じ、「無限」に己に眠る莫大な氣力を揮う。

 正に希望の『聖乙女ピリカ・メノコ』と呼ばれる存在であった。


(……あの頃ですら……秘めし資質が明らかに違っていたな……)


 自嘲ではなく、己の忌憚なき評価(ピリマ)……。

 

「――忌憚なく申し上げますわ。

 今のタカヒコさまは、あるいはミチヒメさんよりも上手ですわ!」


 ミカツヒメが微笑みながら言う、偽りの無い評価(ピリマ)


「まわりから霊力ヌプルを貰えなければ、彼女は只の乙女、ですわ。

 その為に、限界を超えし全解放は……『百数える程』しか、身体が耐えられませんわ。

 それでも、驚くべき強さなのもまた事実」


「一生懸命の研鑽の果てにこそ、真なる強さありしなり。

 宗像之王よ、まさに今のそなたの様に」


 タカヒコが抱える胸中の痞えが、水泡の様に消え去って軽くなってゆく。


「努々忘れぬ様胸中に刻み、更なる高みを目指します。

 我が業を為してくれる精霊神ヤオヨロズと共に!」


「それでこそ我が曾孫なり!」


 剣之神威フツノミタマの忌憚なき言葉(ピリマ)

 解放された神威を湛え、ミカツヒメの掌中へと還る。


「これは――!

 この剣……真なる我が曽祖父と共に闘いしソナタは、おれより強いかもしれぬな!

 頼もしき限り!」


 タカヒコの言葉に、ミカツヒメは一礼して微笑む。


「ゆとりが生まれた様で何よりすわ。

 己が事で手一杯の者は、他者を認め称賛など出来ませぬ。

 更に頼もしき成人男性ニシパとなられて、本にうれしゅうございますわ」


 タカヒコは、少し照れくさそうにしながらも笑みを浮かべる。

 その笑顔は、蟠りを払拭し、陽光が燦然と煌く蒼天の様な、どこまでも突き抜け透き通る晴れやかさであった。


「さぁ、共に帰ろう我がモシリへ!」


「我も同行させてもらうとしよう」


「本当でございますか?

 是が非にも足を運んで頂きまして、ご指導の程よろしくお頼み申し上げますわ!」


「良き心がけなり!

 其方の剣技、想い……。

 恐らくは、更なる高みへと舞い上がらん見込み、大いにありしなり!」


 ふたりと一振りは、足取りも軽やかに『神託啓示ノ國(イトムコカヌ=ナ)』へ帰還していった。

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