第21話 - α 王城の死角と、死神の短剣
その場を看守さんたちに任せ、私たちはおじさんの案内に従って、剣戟が響いたというその建物へと駆け込んだ。
そこにそびえ立っていたのは、燃え盛る帝都の中でも一際目を引く、まるで大きなお城のような豪華な建造物だった。
「この建物、凄い豪華……でも、すごく入り組んでる」
「……ここは帝国を象徴する建物、分かりやすく言うとお城だな、……ここにまで火の手を上げるなんてどうかしてる……」
おじさんは苦虫を噛み潰したような表情と声の響きが、その『象徴』を燃やすという行動、それに明らかに動揺してるみたい。
……きっと帝国の人達にとってこのお城は心の拠り所なんだ。矜持と誇りが、このお城に詰まっていた。
それを燃やすなんて、信じられない。
「死角が多いよ、おじさん、……気をつけて」
大鎌を構えたまま周囲を警戒する私に、おじさんが鋭い声で指示を飛ばす。
「建物内でデカい武器は不利だ。壁や柱に引っかかる。短剣に持ち替えろ」
……確かに、広いとはいえ建物の中で、私の身長より長い大鎌を振るうと、壁に引っ掛けそうになる。
牢のなかで型をなぞっていた時は、引っ掛けても大丈夫だったけど、実戦では命取りになっちゃう。
「わかった!」
その言葉に納得し、私は大鎌を背中にしまい込んで、代わりに腰に提げていた短剣を一本引き抜いた。
おじさんの先導で燃えるお城を駆ける私たち。
やがて、いくつにも分かれた廊下にでる。
「……どっちに行くのが正解なの!?」
広大で迷路のように入り組んだ城内の構造に、私は戸惑いの声を上げる。
「ひとまず皇子のいる部屋を目指すぞ! 皇帝だけじゃなく皇子まで失ったら、もう帝国は完全に統制不能になる。ついてこい!」
そう言って、足を引きずりながらもおじさんが先陣を切って通路の奥へと進んでいく。
「うんっ!」
おじさんに続いて私も続く。
――――次の角を曲がろうとしたその時だった。
「――ッ!」
死角になっていた柱の陰から、帝国の兵士らしき男が突如として躍り出た。
その手に持つ凶刃が、先頭を走るおじさんへと容赦なく振り下ろされる。
「おじさんっ!」
私は叫びと同時に、手の中の短剣を帝国兵らしき人に向けて咄嗟に投げていた。
ヒュンッ! と空気を裂く音が響く。
短剣は、まるで急所の首に吸い込まれるような完璧な軌道を描き――男の首元を深々と貫いた。
「ガ、ァ……ッ」
男は血飛沫を上げ、剣を振り下ろす姿勢のまま、崩れ落ちるように床に倒れ伏した。
ああっ……!
魔獣じゃない。また『人』を殺してしまった。
心の中に、ズキリと重い罪悪感が広がる。手が震えそうになる。
……殺した。またあたしは、人を……。
――ここで私が止まったら、おじさんが死ぬ。
だめだ!ここは命をやり取りする戦場なんだ……!
躊躇いはあたしだけじゃない、おじさんまで殺しちゃう!切り替えないと……!
動揺も謝罪も贖罪も、全部終わってから、背負う!
「おじさん、方向案内して!」
私は首を横に振って罪悪感を無理やり心の奥底に押し込め決意する。
この戦いが終わるまで、あたしは……!
倒れた兵士の首から短剣を引き抜き、おじさんの前へと出た。
「方向を教えて――私が、先陣を切るっ!」
血に濡れた短剣を構え、私は暗い城の廊下を真っ直ぐに睨みつけた。
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R・D




