Lost Memory 4 リゼ・イレイナと優しい友達
私は日課のトレーニング――という名目の魔獣討伐を終え、いつものように街へと帰還した。
門をくぐろうとした時、見知った顔が笑顔で声をかけてきた。
「おかえり、リゼちゃん」
「お仕事お疲れさまです。ただいま戻りました」
門番のモリッツさんだ。私は軽く頭を下げてから、ふと思い出して付け加えた。
「……パン、美味しかったです」
「そいつはよかった!しっかり休んでくれな」
ハハッと笑って見送ってくれるモリッツさんに、「はい、ありがとうございます」と返し、私は街の中へと足を踏み入れた。
向かったのは、活気あふれる下町の通り。
私は、この下町の空気が好きだった。
ここを歩いていると、私が由緒ある『イレイナ家の落ちこぼれ』であることを、誰も気にしないからだ。
それどころか、すれ違う人たちは「いつも街を守ってくれてありがとう」と、私という個人の働きに対して純粋な感謝を向けてくれる。
そんな温かい町を歩きながら、私は少しだけ首を傾げた。
「しっかり休むって言われても……今日は大して疲れてないしなぁ」
今日は魔獣の数も少なく、文字通り軽いトレーニング程度で終わってしまったのだ。
休み方と言われても、すぐに思いつくような趣味もない。
剣を振って休む?うーんモリッツさんが言ってた『休む』ってそういうことじゃないよね?多分
どうしようかとぼんやり考えていると、不意に明るい声が飛んできた。
「あれ、リゼじゃんか!?どうした?こんなところ歩いてって」
振り返ると、そこには私の一番の親友であるカイナさんが立っていた。
「カイナさん。……そうですね、休み方を考えてて」
「もう!敬語も『さん』付けもいらないって言ってるのに!」
素直に答えた私に、カイナは呆れたように頬を膨らませて少し不満を呟いた。
けれど、彼女はすぐにパッと顔を輝かせて、とびきりの笑顔を向けた。
「そうだなー……なら、甘いものを食べにいこうぜ?ついてきて!」
「えっ? ちょ、ちょっと!?」
言うが早いか、カイナさんは私の手をギュッと握り、強引に引っ張って駆け出した。
戸惑う私の声などお構いなしに、楽しそうに笑いながら下町の通りを走っていく。
私は慌ててその背中を追いかけながら、力強く引っ張られるその手のひらに、たまらなく温かいものを感じていた。




