第103話 - β 夢
お父様とお母様、そして私の最愛の妹であるリゼ。
家族四人でゆっくりとお話をしながら、温かいご飯を味わう、いつもの穏やかな朝の日常。
今日のリゼはいつも以上に機嫌が良いみたいで、「もう子供じゃないのに」となんだかんだ文句を言いながらも、結局朝食を食べ終わるまで、ずっと私の膝の上から降りようとはしなかった。
私の手から差し出されるスプーンのスープや、小さくちぎったパンを、素直に小さな口を開けて全部食べてくれる。
その愛らしい姿を見ているだけで、私の胸の奥はちぎれそうなほどの愛おしさでいっぱいになってしまう。
リゼが最後の一口を飲み込むのに合わせて、私も自分の分の食事を食べ終わるように、こっそりとペースを調整する。
この幸せな密着の時間を、一秒でも長く味わっていたかったから。
「「ごちそうさまでした」」
家族みんなで手を合わせ、暖かな朝食の時間が終わりを迎える。
お母様はふわりと微笑みながら手際よく食器を下げ始め、お父様は優しく私たちを見つめた後、仕事のために奥の書斎へと移動していった。
そして、私は――。
「ひゃっ!?ちょ、ちょっとお姉ちゃん!?」
「ふふっ。さあリゼ、お部屋に戻りましょうね」
驚いて声を上げるリゼの身体を、ふわりとお姫様抱っこで持ち上げた。
「も、もう!自分で歩けるってば!」
腕の中で顔を真っ赤にしてポカポカと私の胸を叩くリゼだけれど、その抵抗にはまったく力がこもっていない。
腕の中にすっぽりと収まる、羽のように軽くて、温かくて柔らかい私の宝物。
その心地よい重みを感じながら、私はご機嫌な足取りでリゼの部屋へと歩き出した。
お姫様抱っこをしたままリゼのお部屋に入り、私は腕の中の愛おしい重みに向かって優しく問いかけた。
「今日はどうするの?」
リゼは私の腕の中で少しだけ考えるように小首を傾げてから、上目遣いに聞き返してくる。
「お姉ちゃんこそ、今日はお務めじゃないの?」
お母様から引き継いだばかりの、聖女としてのお勤め。
私はまだまだ半人前で、政治のことも魔法のことも、毎日勉強しないといけないことばかりだ。けれど――。
「今日は、何もないんだよ?」
私はリゼに向かって、とびきりの笑顔でそう答えた。
嘘ではない。
正確に言うと、私がお勤めに慣れないうちは、お母様が裏で色々と手伝ってくれているのだ。『よほどサボらない限り、リゼの隣にいていいわよ』と、特別に許可をもらっている。
だから私は、一秒でも長くこの大好きな妹の近くにいたかった。
「お姉ちゃんと二度寝する?」
甘えるようにそう聞きながら、私はリゼを大きなベッドにそっと寝かせた。
そして、彼女が照れて逃げ出さないように、私自身も素早くリゼの隣へと滑り込んだ。
「わっ、ちょっとお姉ちゃん!?」
驚いて声を上げるリゼを、ベッドの上でぎゅっと抱きしめる。
腕の中にすっぽりと収まる、あたたかくて柔らかい私の宝物。
今日という一日、この大好きな妹と二人で何ができるのか。私はそれがもう、楽しみでたまらなかった。




