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【祝16.3万PV❗️】日輪の半龍人  作者: 倉田 創藍
第2部 青年期<武芸者篇>1章 新たな仲間と聖国の追手篇

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断章6  困惑の『黒鉄の旋風』

これにて2部1章は終わりとなります。次話から2章です。

 ラウラ・シェーンベルグ及びソーニャ・アインホルンの長期護衛依頼を請けていたアルクスら一党に、臨時で参加した『黒鉄(くろがね)の旋風』は、武芸都市〈ウィルデリッタルト〉にて少々お高めな宿を取っていた。


 帝国の3等級武芸者一党は良くも悪くも独立した存在。


 その一党による、他国の貴族令嬢相当の臨時護衛、かつ聖国の軍事侵攻とも取れる挙兵への対処。


 これが大事にならぬわけがない。信賞必罰は人の社会において非常に重要な要素だ。


 彼らの予想より事が大きくなってしまい、滞在費まで出ていた。


「あいつら、大丈夫なのかねぇ? そのまま行っちまったけど」


 個人4等級の剣士ヨハンがぼんやりと呟く。宿の食堂の長卓に肘をついて退屈そうだ。


 この都市についてから4日ほど経つが、アルクスら6人とは会えていない。


 この宿にいるように、と領主直々に指示を受け、何もしなくとも困らないくらいの金銭も受け取っていた。


「領主様のとこで休んでるんじゃない? アルクス、ちょっとカリカリしてたし」


 ヨハンの双子の妹――個人4等級の槍術士エマが投げやりに答える。


 こちらは長卓にペタンと樺茶色の頭を乗せていた。最後に見たアルクスは何やら非常に神経質になっていた気がする。


 髪色の変化や聖国の大規模術式を弾いたことや、馬車から落ちたはずなのにどうやって追いついてきたのか? など聞きたいことはたくさんあったが、会う機会にも恵まれぬまま『黒鉄の旋風』は缶詰状態。


 領軍所属の位の高そうな軍人が2人ほど事情聴取に来たのみだ。


「ラウラちゃん達、本当はラウラ様達なんでしょ? ぁふぁ~あ、色々あるんじゃない?」


 個人3等級の女剣士ハンナがそんなことを言いながら伸びをした。欠伸まで混じっている。


 肩甲骨あたりまで伸ばしている深支子(こきくちなし)色の髪も普段は括っているが、今は適当に解いていた。


「そうねぇ。支部の方にも顔出してないみたいだし……暇ねぇ~」


 シルフィエーラと対照的な白い肌、輝くような金の短髪、似たような尖り耳を持つ個人3等級の森人弓術士プリムラはとうとう退屈だと口にする。


 こちらは宿で頼んだ蜂蜜酒(ミード)を呑んでいた。意外と酒豪なのだ。


「気持ちはわかるけどダラけ過ぎだろ、お前ら」


「仕方あるまい。長期休暇など久しぶりだからな」


 食堂の方に歩いて来た『黒鉄の旋風』頭目――個人3等級の剣士レーゲンが呆れたような声を出せば、隣にいた同じく個人3等級の森人剣士ケリアがそのような返答を寄越す。


 椅子に座るとすぐにケリアは恋人プリムラが呑んでいる蜂蜜酒を少し貰って口を潤した。


「どこ行ってたのよ?」


「こいつを試しに中庭までさ」


 ハンナの問いかけにレーゲンが紙切れを見せる。


「それって確か――」


「アルクスに貰った魔力、つうか操魔核か? の鍛錬用に貰った術式だ。『吸魔陣』って言ってたっけ」


 紙切れに描かれていたのは独特な体系の術式見本だ。


「効果はどうなの?」


「数分で魔力切れした。人間(おれら)が操魔核鍛えるんなら、打ってつけだろうな」


「へぇ~、ちょっと貸してよ」


「ほれ、えらい勢いで吸われるぞ」


 興味を持ったハンナが紙を借りて「こうね」などと言いながら手を動かす。ここで試してみるつもりらしい。


「帝国のとだいぶ癖が違う術式ね――んわぁっ!? ちょ、ちょっとこれぇ! 際限なく吸うじゃないの!」


 鍵語を並べ、術を起動させたハンナの魔力がぎゅんぎゅんと吸われ始めた。


「そう言ったろ」


「そこまで詳しく言ってないでしょ!」


「数分で魔力切れ起こすって言ったじゃねーか。一回魔力流したら起動待機状態にゃ戻らねーから気ぃつけろよ」


 元々が龍血の暴走を抑え込むために作った術式だ。


 一度起動させれば吸った魔力を強制起動に使い、吸い尽くすまで止まらない。ある意味、欠陥魔術である。


「早く、言ってよね! ……はぁ、でも確かにこれ打ってつけね。貸して、ケリアとプリムラ以外の分、見本作っとくから」


 急激に魔力を吸われたハンナがグデンと姿勢を崩しながら、森人2名以外用に術を書きつけていく。


 魔族は魔力適性にムラがある為、全属性に適性のある人間より魔力鍛練は容易なのだ。


 ハンナは書き終えた術式見本をヨハンとエマへ渡し、レーゲンへと原本を返した。


 魔力を鍛えることが強さに直結するというのは、遠距離職でも近接職でも変わらない。


 それを良く知る4人が『もうここで、これでもやっとくかぁ』などと、頭の片隅で考えていた時だ。


「暇そうですね」


「おう、缶詰状態でな。聴取の方は終わってんだが、ここで待機してて――ってアルクス!?」


「こんにちは。数日ぶりですね」


 そこには、さっきからずっといましたよという顔のアルクスがいた。


 ぎょっとした顔で隣を見るレーゲンにいつも通り能天気な笑みを返す。


「アルクス!? あんたどうしてここに――!」


「数日振りだな、一人か?」


「みんなは元気してる?」


「よ~、元気そうだな」


「ほんとだ。私達に会いに来てくれたの?」


 ワッと声をかけてくる『黒鉄の旋風』の面々にアルクスは『想像以上にヒマしてたっぽいや』と苦笑をひとつ。


「『黒鉄の旋風』へ、領主から招集ですよ。ちょっとした用事があったのでついでに頼まれてきました」


 と、応えた。


 ――領主からの招集?


 6人が顔を見合わせる。


「さ、行きましょう」


 事態を呑み込めなぬ『黒鉄の旋風』へ、黎髪の青年は悪戯っぽい笑みを向けるのだった。




 そこからは彼らにとって怒涛の展開だった。


 領主からの招集と言うことで身なりを整え、アルクスに連れられるがまま外に出ると、何やら豪華な馬車が扉を開けて停まっている。


「これに乗ってください」


 と言われ、おっかなびっくり乗り込むと、ラウラとソーニャが待っていて口々に3日前の礼を言ってきた。


 2人とも元気そうで、〈ヴァルトシュタット〉を出る前に滲んでいた緊張感も見えない。


「依頼の報酬は今度食事に行ったときにこちらで持ちますから」


 と、穏やかに言われた『黒鉄の旋風』は、2人が齢相応の表情をしていることに誇らしい気持ちになるのだった。


 その後、目的地――練兵場に到着。


 降りたアルクスに連れられて行けば、そこには領主トビアス・シルトと遠征救出任務に出ていた領軍100名がいた。


 そのまま、背を押されて領主の前に立たされ、主役はあんたらだと言わんばかりの周囲の視線や空気にすっかり気後れする。


 すると前方の台に立っていたトビアスが口を開き、長口上を述べ始めた。


「武芸者一党『黒鉄の旋風』。貴殿らは、共和国令嬢ラウラ・シェーンベルグ嬢、及びソーニャ・アインホルン嬢を追って不法入国し、軍事行動すら起こした聖国の騎士団を、その知啓と実力を持って退けることに成功した。


 かの者らの侵攻は、令嬢二名を捕らえることで共和国の交易都市〈ヴァリスフォルム〉の藩主ノーマン・シェーンベルグ殿への牽制と人質、並びに都市そのものの制圧が狙いだと見られている。


 それに対し、貴殿ら『黒鉄の旋風』は本来の護衛依頼を受けた魔族の一党に協力し、臨時枠として自ら依頼に参加。低い報酬でその職務を全うした。貴殿らの提示した報酬は、護衛対象の仮所属する一党との食事たった一食分。


 これらの行いは義憤に駆られた武芸者として、更に魔族を友とする帝国人として非常に誇るべき行動である。また〈ヴァルトシュタット〉はそう大きな街ではない。騎士一六七名とその指揮官が凶行に及んでいれば、陥落していた可能性すらある。


 それらを未然に防いだ功績は決して低いものなどではない。よってここに褒賞として一人、五〇万ダーナ――総計三〇〇万ダーナ。そして、我が領地でも有数の保養地〈ヴァルムウーファー〉にある旅館の宿泊券を贈呈することとする」


((((((……は?))))))


 『黒鉄の旋風』は提示された金額に絶句し、ぽかんと口を開けた。


 対外的に見れば他国の侵攻染みた軍事行動を少数で止めたので当然なのだが、6人からすれば友人を傷つけられたという私怨と、後輩の為にひと肌脱いだという感覚しかない。


 それが1人頭500,000ダーナだ。


 ちなみに1ダーナが100ケント。


 6人が泊まっていたのは3等級武芸者が『ちょっと奮発した』と思うくらいの宿で、食事もついて1日2,400ダーナ――つまり1人400ダーナだ。


 レーゲン達が普段ちょっと贅沢な夕食にしようと奮発しても大体1人200ダーナが精々。


 帝国の最低賃金が1日当たり40ダーナということを考えても、3等級武芸者である彼らが高給取りであることは間違いない。


 それでも働くことなく数年はあの宿に泊まっていられる金額を貰える、というのはあまりに破格。


 勿論、決して見たことがない額というわけではない。


 2等級の先輩一党や熟練の武芸者が指名依頼を請け、それくらいの報酬で動いているのを見たことはあるが、まさか自分達がそんな纏まった金を手にするとは思ってもみなかったのである。


 そして〈ヴァルムウーファー〉と言えば〈ウィルデリッタルト〉の端にある河畔で、有名な高級行楽(リゾート)地。


 そこの旅館はどこも他の宿泊費とは桁が違うことでお馴染みで、『いつかは素敵な恋人と』などと言われていたり、一般家庭の中年夫婦がお金をせっせ、せっせと溜めて『日頃の垢を流そうじゃないか』と行くような観光・保養地である。


 そこの宿泊券ともなれば当然、非常に価値の高いもの。


 こちらだけでも充分なのでは? と、思わずにいられない。


 そうやって固まっている先輩の背をアルクスがとんっと軽く押す。


「お、おぉ……っ」


 レーゲンは表彰台に乗っているトビアスの前へ1歩ふらりと進み出るなり、頭を下げた。彼に仕えているわけではない為、武芸者としての略礼だ。


(お、落ち着け俺ぇ……! と、とりあえず、お礼、お礼を言っとけばハズレにはならんはず……!)


「あ、あ、あ、有難く頂戴致します」


「うん、これからも頑張ってね」


 トビアスは整った武人顔に柔和な笑みを浮かべている。


(な、なんか好感持たれてないか……!? なんで!?)


 そう思っていると領主の直ぐ後ろにいた前領主ランドルフが、ぱちぱちぱちぱちっと勢いよく拍手しだした。


 彼は既に『黒鉄の旋風』の支持者(ファン)だ。粋な報酬で最後まで戦い抜いた武芸者が見られたとあって上機嫌。


 途端、6名の後ろにいた兵士達も力強い拍手を送ってくる。彼らも武芸都市の気風をしっかりと受けた者達だ。


 よくやった! と、言わんばかりの顔をしている。


「あ、あは、はは。ど、どうも……」


「さすがに恥ずかしいな」


「胸張ってたら?」


「私情バリバリで動いた身としちゃあなぁ」


「ヨハン兄、居づらいよぉ」


 一列下がったところから万雷の拍手を受けた5人は顔を赤くしたり、困惑したり、泣き言を言ったりしている。


 横の方を見れば、ラウラを始めたとしたアルクスの一党5名も客席のような場所から、先輩武芸者へ向けて拍手を送っていた。


 こういった場にいなさそうな品の良い見知らぬ少女までも目をキラキラさせている。


 ちなみにアルクスも兵にさらっと紛れて拍手しており、その上空では夜天翡翠が楽しそうに旋回している。


「『黒鉄の旋風』の諸君、前へ」


 とトビアスに言われ、5人もレーゲンの隣へと一歩進み出た。


 彼らの前に兵達が長机を持って来て、長方形の革鞄を丁寧に6つ置いていく。


「中を検めてくれ」


 進行指示に6人が恐る恐る鞄を開く。そこには眩いばかりの大金貨が1,000枚と、領主の署名入り宿泊券が入っていた。


 帝国、王国鋳造製の硬貨であるダーナ硬貨は種類が多い。


 以前ラウラが共通貨幣と呼んでいたのもこの硬貨のことだ。聖国でも単位自体は変わらないが、硬貨の種類が更に多かったりする。


 その内訳は上から大金貨、大銀金貨、中金貨、中銅金貨、金貨、小金貨、大銀貨、中銀貨、銀貨、銅貨である。


 価値は大金貨が500d(ダーナ)。大銀金貨が200d。中金貨が100d。中銅金貨が50d。金貨が25d。小金貨が1d=100C(ケント)。


 大銀貨が50C。中銀貨が25C。銀貨が10C。銅貨が1Cだ。尚、単位表記はこれが正式である。


 また大銀金貨とは大金貨と同径で外縁が金、くり抜かれた中心部が銀で鋳造された硬貨のことだ。


 また、外縁の金が中金貨と同量の金で作られている為、大金貨と大銀金貨はそこそこ大きい。更に中銅金貨は中金貨と同径で中が銅になっている。


 ちなみに昔は紙幣も使われていたのだが、当時帝国にいた義賊が偽札を作って悪賊と成り果てた末、帝国だけでなく王国まで荒らす大騒ぎを生み出したという経緯があって今も製造されていない。


「ぅお……」


 眩い金の輝きにレーゲンら6人はゴクリ、と喉を鳴らした。


 大金貨を見たことがないということはまずない。そこいらの商会の丁稚とて見たこと自体は何度もあるだろう。


 しかし、あまり普段使いしない上に、こんな量は見たことがない。


 一向に鞄を手に取らない6名に『僕でも同じ反応するだろうね』と思いつつ、トビアスは苦笑した。


「君達、警護をつけるから必要な分だけ取ってこのまま銀行へ預金しに行くのはどうかな?」


 と、提案してみれば、


「「「「「「お願いします!」」」」」」


 彼らは即座に頭を下げた。


 素早い反応だ。が、こんな革張りの鞄を持ち歩く危険性を考えれば、然もありなん。


 それよりも何よりも硬貨は重い。


 ラウラとソーニャはあるだけ持ってきたが、アルクスの背嚢に入れてもらうまでは、その重量でも非常に苦労していたりする。


「お、重い……」


 レーゲン達は革鞄を閉じて持ち上げ、その重量に驚いた。ずっしりとしており、鍛えている彼らの腕でも千切れそうなほどである。


 ――本当に五十万ダーナ貰えたんだ。


 その感覚が足取りを軽くする。


 こうして『黒鉄の旋風』はあたたかい視線を受けながら馬車へと乗り込んでいき、褒賞授与式は恙なく終了したのであった。



 * * *



 その1週間後の朝のこと。


 たまたま武芸者協会〈ウィルデリッタルト〉支部の建物内で『黒鉄の旋風』と出会(でくわ)したアルクス達は不思議そうな顔を向けた。


「あれ? レーゲンさん達、〈ヴァルムウーファー〉に行ったんじゃ?」


「もう帰ってきたのか?」


 何か不都合でも? と、アルクスとマルクガルムが訊ねる。少なくとも当分働く――つまり、支部の建物にいる必要などないはずだ。


「依頼請けてるじゃない」


「何かあったの?」


 凛華とシルフィエーラもレーゲンの手にある依頼書を見て訊ねた。


 すると彼が気恥ずかしそうに頬をポリポリと掻き、


「行ったよ。良いとこだったさ」


 と、ひと言。


「でもそのぉ……ね?」


 わかるでしょ? と、ハンナが引き継ぐように口を開いたが、こちらもどうにもバツが悪そうだ。


「どういうことです?」


 わからないという顔をしたアルクス達へ、


「最初の三日で飽きちゃったのよ」


「まぁ……楽しかったんだけどね」


 プリムラとエマがハッキリと答えた。


「飽きた? 〈ヴァルムウーファー〉って狭いんですか?」


 ラウラが首を傾げる。


「いや、狭くはねえよ? その……」


「合わなかったとか?」


 ソーニャも問うた。保養地だと聞いている。客層に合わなくても不思議はないかもしれない。


「そうじゃない。あー……自慢じゃないが我々一党は精力的に働いている。無論、休養もしっかり取っているのだが……」


「疲れてもねーし、怪我してるわけでもねえ、身体を休める必要もねえってのにゆっくりするっつうのが性に合わなかったんだよ」


 ケリアの言を引き取って、些か恥ずかしそうにヨハンが答えた。


 最初の3日間は料理に舌鼓を打ち、河畔で釣りを楽しみ、美容施術(エステ)や按摩(マッサージ)を堪能した。


 しかし、彼ら『黒鉄の旋風』は向上心が強い。


 依頼を定期的(コンスタント)に請け、仕事をこなしてはまた依頼を請ける。


 彼らにとって休暇とは、身体を休めたり、すり減った精神を回復させる時間なのだ。


 そうやって信頼と実績を積み重ねてきた真面目な彼らに、長過ぎる休暇は時間の牢獄以外の何物でもなかった。


「ははあ」と後輩一党がようやく得心のいった顔をする。


 若い彼らにとっても、何もしないでいい時間というのは案外苦痛だ。それが理解できたのである。


「ってことで四日目に帰ってきて、今までは防具とか盾の細かな修繕だとか、多少値の張る丈夫な背嚢なんかを頼んだりで仕事の準備をしてたのよ」


 金ならある。だからこそ装備の良質化(アップグレード)をしていた、とハンナが言う。


「なるほど、武芸者ですねぇ」


 くすっとアルクスが笑えば、6人も照れ臭そうに笑った。


「重い依頼?」


 凛華が問う。重い依頼とは、日帰りもしくは丸1日で帰って来れない長期依頼のことだ。


「ううん、武芸者活動再開ってことで軽い依頼だよ」


 エマの返事を聞いたシルフィエーラが「あっ」と、ラウラを見た。彼女もその視線を受けて頷く。


「では戻られたら、我々と夕食ご一緒しませんか?」


 報酬でしたよね? と、ニッコリ微笑む朱髪少女にレーゲンもフッと笑う。


 ――やっぱりこのくらいの報酬が丁度いい。


「おう、そんじゃ今日はアルクス達の一党と晩飯だ。お前ら怪我なんてするんじゃねえぞ、呑みっぱぐれるからな」


「まっかせなさい!」


「タダ酒に!」


「タダ飯だ!」


「あそこの蜂蜜酒、美味しいのよね」


「ふっ、気を抜くなと言われたばかりだぞ」


 楽しそうに言葉を交わしながらウキウキと歩き出す。


 自分達は、やはり武芸者なのだ。


 その思いも新たに『黒鉄の旋風』は、後輩達へと手を振って依頼に向かうのだった。

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