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【10万PV 感謝!】日輪の半龍人  作者: 倉田 創藍
第2部 青年期 武芸者編ノ壱 新たな仲間と聖国の追手編
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6話 虐殺の後始末 (虹耀暦1286年9月:アルクス14歳)

2023/10/10 連載開始致しました。


初投稿になりますのでゆるく読んで頂ければありがたい限りです。


なにとぞよろしくお願い致します。

 健康的な肌に燃えるような朱髪をした少女――――ラウラは、血溜まりに佇む自分と同年代に見える魔族達4名へと歩み寄った。


 彼らはたった今の今まで、神殿騎士ら30名ほどを相手に大立ち回りをしていたというのに然して息を乱した様子もない。


 かと云って勝利の余韻を噛み締めているようにも、闘争に興奮しているでも血に酔っているでもなさそうだった。


 寧ろ落ち込んで、消沈しているように見える。


(やっぱり……)


 ラウラは半ば確信に近いものを抱きながら、地獄も斯くやという惨状の旧街道へ踏み出した。


 一歩進むごとに粘ついた血がベチャリと跳ね、足元を赤黒く汚す。


(……酷い、光景)


 それでも歩みを進める。


 踏み入った途端、どろどろに混ざり合う血が噎せ返るような生臭さと金臭さを以て、ラウラの鼻腔を支配していく。


 脚や下半身、中には首を噛み千切られてグチャグチャになった馬の残骸が散乱し、首のない骸が幾つも倒れていた。


 中には灼け焦げ、中身があるのかすら判別不能なものまである。


「う……っ」


 胃に酸っぱいものが込み上げてきた。


 しかし、ラウラは無理矢理それらを呑み下し、眼の前の惨状を直視する。


 黎い髪をドス黒い血で染めた剣士――――否、彼らの頭目と思われる青年は騎士の群れへ突喊し、誰よりも首を刎ねて回っていた。


 それはきっと仲間の為で……そしてその引鉄は引かせたのは間違いなく自分達だ。


 自分達が神殿騎士(追手)を退けられるほど強かであれば、彼らの手が血に染まることはなかっただろう。


 だからこそ、彼らの元に辿り着いたラウラは真っ先に頭を下げた。


「あの……ありがとうございました。あなた方のお陰で、私もソーニャも助かりました」


「え…………」


 掛けられた言葉にアルクスが硬直する。


 ラウラの行動が奇異に映って戸惑ったのだ。


 何より人を殺したのに礼を言われた、という事実に酷い忌避感を覚える。


 確かに彼女らを助けたことにはなるのだろう。


 しかし、たった今同類である人間を撫で斬りにした連中へ向ける視線ではない。


(なぜ、怯えてない?)


 こちらは圧倒的な武力を示して殺戮を行ったばかりの魔族だ。


 だというのにも関わらず、彼女の琥珀色の瞳には恐怖心がまるでなかった。


 本当に感謝の意を示しているかのような態度だ。


 アルが答えあぐねていると、


「……かふっ」


 と苦しそうな呼気が聞こえてきた。


 音のした方を向いたアル達とラウラは、そちらで横になっている栗色髪をした少女騎士――――ソーニャに気付いてハッとする。


「いけない。アル、いい?」


「うん、頼む」


 シルフィエーラの問いかけに、アルは一も二もなく頷き返した。


「翡翠!いる?」


 頭目の了承を得たエーラが上空に向けて呼びかけると、


「カアー!」


 三ツ足鴉の夜天翡翠が上空でバサバサと羽ばたく。


 騎兵の気配を感じた時点で、状況がマズくなりそうなら助けを呼ぶよう指示を出すつもりでアルが上空に待機させていたのだ。


「ちょっと手伝って!」


 そう言ってエーラが夜天翡翠を引き連れて駆け出す。迅速な動きだ。


 きっとソーニャと呼ばれた少女の治療に意識を専念することで、一時的に気持ちを切り替えたのだろう。


(俺もクヨクヨしてる場合じゃない。悩むのは後だ)


 アルも意識を引き戻し、頭目として指示を出す。


「凛華とマルクはこの子と一緒に、あっちのソーニャって呼ばれてた子を運んでくれ。 追手がまだいるかもしれない。 水場があって隠れやすい場所を。 翡翠を後で飛ばしてくれれば俺も向かう」


「お前は?」


 暗に自分は残ると言うアルへ、マルクガルムは人間態に戻りながら問うた。


「死体を片付ける。一気に燃やして埋めてくるよ」


「なるほどな、了解だ」


「……一人で大丈夫?」


 凛華が整った顔に不安の色を浮かべ、青い瞳を揺らす。


 アルのやるせなさそうな表情が彼女の胸を今も痛く締め付けていた。


「……うん。燃やすだけだから」


 己に言い聞かせるように答えたアルはくるりと振り向いて、蒼炎を両手から噴射する。


 龍焔の代わりに扱っている蒼炎だ。伊達な火力ではない。


 神殿騎士の胸甲であろうと、甲冑兜であろうと炙られ続ければ徐々に溶け、それより先に中身が燃える。


 既に手前の死体は炭化しつつあった。


「っ!?」


 普通の炎ではないと気付いていたラウラでも、この威力には驚愕を禁じ得ない。


 あれを纏った剣が騎士胸甲を牛酪(バター)のように斬り裂いていた理由がわかるというものだ。


 思わず魅せられかけたラウラの腕を凛華が掴む。


「行きましょ。あなたのお友達、エーラが何とかしてくれるから運んであげないと」


「は、はい」


 凛華はアルの背に声を掛けたい気分をグッと堪え、3人でソーニャの元まで歩いて行った。



~・~・~・~



 マルクは再度『人狼化』した。


 視線の先にいるソーニャと呼ばれた少女も神殿騎士のそれと意匠はかなり違うが、胴鎧ではなく胸甲を着ている。


 これが人間の間では主流なのだろうか?


 わざと益体もないことへ意識を割きながら「よいしょっと」と彼女を背負い、


「鎧が重いだろうから俺が背負うわ。お前らはどっか見つけてくれ」


 後ろの2人に声を掛けた。


 人狼からすれば苦もない重さだ。


 むしろ腕や足にも鎧を纏っている割に軽すぎて驚いたくらいだった。


「そうね、じゃあマルクに任せるわ」


 凛華が先頭を歩き出し、マルクも続く。


「は、はい。すいません、お願いします」


 ラウラはそんな2人に慌ててついてきた。


 そんな朱髪の少女へマルクがちらりと眼をやって冷静に観察する。


(人間からは逃げて魔族(おれら)には大して警戒してねえ)


 ややあって結論を出した。


(……国ってやつか)


 神殿騎士共は当然ながら聖国の者、そんな連中から逃げていたのなら彼女ら2人は別の国出身の可能性がある。


 しかし、どうしてこうなったのか経緯まではわからない。


 冷静に思考していても、人間の概念や通念には染まったことがないマルクにはわからなくて当然だった。


 先に草藪に飛び込んだエーラの姿は見えない。


 だが彼女には『精霊感応』がある。


 おそらく簡単にこちらを見つけられるだろう。


 鬼娘と人狼に背負われた鎧姿の少女、そしてもう一人の人間の少女という帝国の武芸者一党の中でも珍しい組み合わせの一行は治療が行える場所――――もとい今夜の野営地を探して歩を進める。



☆ ★ ☆



 アルは両手から蒼炎を噴き出しながら眼前の惨状を見つめていた。


 ほんの一歩動くだけで、グチャリとした感触が靴の裏を通して伝わってくる。


 結局アルが斬り殺した神殿騎士は18名。


 30名ほどいた連中の半数以上の命を奪った。


 最初に魔術で殺した馬も数に入れれば殺害総数はもっと上だ。


(あれしかなかった……とは言え気分が悪い)


 目の前の醜悪(グロテスク)な光景に胸をムカつかせながら黙々と燃やし続ける。


「う……っぷ」


 ようやく血の匂いに慣れたと思ったところで、焦げた肉の臭いがアルの鼻を突く。


 率直に云えば苦しい。精神的にもキツい。


「ぅぐっ」


 込み上げて来た吐き気を一瞬堪えたが、耐えられたのはそのほんの一瞬だけだった。


「おえぇぇぇ……っ!」


 嗚咽を上げ、その場に吐く。


 胃の中のものを全部ぶちまけた。


 血溜まりにアルの吐瀉物が混じり、更に酷い異臭を放つ。


 アルは涙目になりながら範囲を広げた。


 轟々と音を上げる蒼炎が地を舐め、奔り回る。


「はぁっ、はぁっ……クソったれ」


 撒き散らした反吐と受け止めた血を全て灼き尽くさんと蒼炎が躍る。


―――――決断したのは、俺だろうに。


 平素ではなかなか口にしない悪態まで吐き捨て、アルは蒼炎を全方位へ一気に放った。


(早く終われ。終わってくれ……!)


 その願いを体現するように蒼い華が舞う。


 幻想的に見えなくもないが、現実は真逆だ。


 死体すら灰燼に帰す幽世(かくりよ)の炎。


 神殿騎士と馬の死体を呑み込んだ蒼炎が鬼火と化して奔り、命の存在そのものを否定するかの如く真っ黒にひしゃげた塊だけが跡に残る。


「……最悪な気分だ、畜生」


 アルの呟きは風に乗り、散り散りに消えて行った。



* * *



 凛華達が見つけたのは点在している雑木林の中にあった湖へと繋がる川だ。


 そのほとりで治療することにした。


 時刻ももう夕方。今日はここに野営する他ないだろう。


 ラウラとソーニャを乗せてきた馬は勇敢にも人狼(マルク)に怯えることなく着いてきて、今は木陰で草を食んでいる。


 ソーニャは矢を抜かれ、止血をしてもらい、エーラの煎じた麻痺抜きを飲むことで徐々に体が動くようになってきた。


 元々胸甲をつけて動いていただけあって、少女の割に体力はそこそこある方だ。


 舌が回るようになってすぐに口にしたのは、ラウラが生きていることへの安堵と魔族達への感謝の言葉だった。


 失血で気絶する途中までは眼で追い続けていたため、助けてもらったことも、その後の戦闘もある程度は憶えていたようだ。


「本当に良かった。あなた方には何度お礼を―――――」


 涙ぐんだラウラが何度目かわからない礼を述べていると、不意に茂みがガサガサと揺れた。


 ラウラは跳び上がり、腰に提げていた剣を引き抜こうとして――――止める。


 魔族の面々も振り返ったのだが、些かも焦っていなかったからだ。


 次いで草藪を掻き分けて現れたのは、夜天翡翠を肩に乗せたアルだった。


 魔族3名が彼の様子に心配の表情を浮かべる。


 アルの顔は、かなりやつれていた。


 歩いて来た疲れなどでは断じてない。あの場から数km(キリ・メトロン)離れたここに来るだけで疲れるような鍛え方はしていない。


「お疲れ、みんな」


 アルは一声かけて近場の岩に崩れ落ちるように座った。


 明らかに憔悴している。


「死体は全部燃やしてきた。残ってた黒焦げの鎧とか槍とか剣とか骨は、全部埋めたよ。たぶん抜けはないと思う。周りも翡翠に頼んで見てもらった」


 アルは平素と違う抑揚のない声で義務的に報告した。


―――――もう、何か言う気力もない。


 ここまで草臥れている彼を初めて見た凛華とエーラが露骨なまでにおろおろし、ラウラやソーニャは何も言えない。


「お疲れさん。それよかアル、ひでー臭いだぜ?俺も爪に残ってる血とか落としてーし、そこの川で身体洗って来ねえか?」


 そこにマルクが「こりゃ俺の出番かね」と言わんばかりに立ち上がって声を掛けた。


「あ、悪い……行こう。凛華、エーラ、悪いんだけどちょっと見張り頼める?」


「え、ええ。勿論よ」


「うん……」


「急ぐよ、二人も汚れは落としたいだろうし。ちゃんと風呂作っとくから」


「ゆっくりしてきていいわよ。あたしはそこまで汚れてないし」


 凛華の言う通り、彼女の服や装備はそこまで汚れていない。


 走りながら地面を凍結させていたからだ。


 既に凍った地面を踏みしめて尾重剣を振るっていたことに加え、『流幻りゅうげん冰鬼鑓(ひょうきそう)』を発動していたので然して返り血を浴びることもなかった。


「ボクも弓だから大丈夫だよ。あ、それよりこれ」


 そう言ってエーラが汚れ落とし(即席石鹸)を渡す。


「さっきついでに作ったんだ。まだ少し固まり切ってないとこもあるけど川に流れても大丈夫だよ」


「お、助かる」


「ありがと」


 受け取ったマルクが嬉しそうに笑い、アルもやや微笑んだ。


「……あっ」


 が、何かに気付いて動きを止める。


「どうしたの?」


 首を傾げるエーラにアルは胸元から青緑色の涙型をした香料袋を取り出した。


 胸元に入れていたので血は一滴もついていない。


「これ、匂いまだしてるよね?」


「うん、そのはずだよ?」


 質問の真意がわからず、エーラが首を傾げたまま頷く。


「そっか。ならいいや――――あ、そうだ。向こうに行ってる間、預かってて。残りは洗ってくるから」


 そう言うと香料袋をエーラに預け、マルクと川の方へと向かった。


 あの場に留まって死体を焼いていたせいか、アルの鼻には焦げた肉と金臭い血の匂いばかりが残っていたのだ。



~・~・~・~



 アルとマルクは先に川の水を引き込んで簡易的な岩風呂を作った後、川にドボンと飛び込んだ。


 血が川に滲んでいくが、一向に止まる気配がない。


 特に頭に染みついていた血が取れない。


 不愉快さに顔を歪めつつ、汚れ落としで全身を洗い、ついでに服や龍鱗布を洗う。


 さすがにトリシャの鱗と蜘蛛人族の『撚糸』で出来ていた為か、龍鱗布に着いていた血は呆気なくスルリと落ちて元の淀みのない真紅へと戻った。


 その後、2人は後から後から滲んでくる血をなんとか落とし切り、ようやく熱い岩風呂に身を沈めた。


「ふぅ~……」


「……はぁ」 


 2人の身体から強張りが抜ける。


 アルの顔つきも先程よりは幾分マシになった。


「大丈夫か?ひっでえ顔してたぜ」


 マルクが夕空を見上げながら訊ねると、


「大丈夫じゃ……ない。しんどかったよ」


 アルがポツリと答える。


「……そうか」


 親友の参っている様子は、普段の彼をよく知っているだけにマルクを余計閉口させた。


 しばし、澄んだ川の水音だけが流れる。


 ややあってアルは思い切ったように口を開いた。


「なぁ、やっぱり皆は――――」


「それ以上言うなら張り飛ばすぞ」


 だがマルクによってピシャリと遮られる。


「…………」


「あんまナメてくれるなよ、アル。 お前について旅に出るって決めた時点でとっくに覚悟はできてんだ。 俺も、あいつらもな。 唯でさえお前の立場はあやふやなんだから、遅かれ早かれ似たような諍いは起こると思ってたよ。


 ま、予想以上に早かったし、最悪の展開に近かったが……()()()()だ。 そんだけなのさ。 そもそもお前のせいでああなったわけじゃねえ。 あの場なら俺だってお前と同じ指示を出してたよ」


 親友の真摯な言葉を黙って受け止めたアルが、ゆっくりと肩まで湯に浸かる。


「……そっか」


「そうだ。あの二人にそんなこと言ってみろ、間違いなくシバかれるぜ」


「そりゃ……恐いや」


「だろ?だから俺らのことで気に病むな。俺らだってただ着いてきてるわけじゃねえんだからよ」


 結局のところマルクの言いたいことはそれだ。


 頭目だからって責任を背負い過ぎることはない。


 殺人を強いてしまったと考えるのはアルのエゴでしかない。


 そう言いたかったのだ。


 ネーべルドルフでもアルは警戒心をギリギリまで解かなかった。


 それはなぜか?


 当然仲間達のことを考えていたからだ。


 3人ともちゃんと気付いている。


「……そっか。ふうっ、もう泣き言言うのはやめよう」


 アルはザバッと顔に湯をかけた。


 親友(とも)の瞳に強い光を確認したマルクがマモン(彼の父)のようにフッと笑う。


(ったく。ようやっと戻ってきたか)


「そんなしょうもないこと言うくらいなら甘えてやった方があいつらは喜ぶぞ。膝でも借りて来いよ」


「考えとく」


 こうして男衆はいつもより口数は少ないものの、和やかな雰囲気へと戻っていくのだった。



* * *



 風呂から戻った男2人を迎えた凛華とエーラは、柔らかくなったアルの雰囲気に胸を撫で下ろし、自分達も汚れと汗を流しに行こうと立ち上がる。


「ほら、ラウラとソーニャも行くよ」


「わ、私達もですか?」


「汗かいてないの?」


「それはまぁ……しかし傷が」


「行くわよ」


 有無を言わせぬ魔族の少女2人と人間の少女2人はそんな押し問答の末、水場の方へ連れ立って行った。


 アルとマルクが入浴している間に多少仲を深めたようだ。


 彼女らを見送ってすぐ、マルクが考え込むように疑問を口にする。


「どう思う?やっぱ警戒心薄くねえか?」


 それは魔族相手への、という意味だ。


 アルも深く頷いた。


「確かに。神殿騎士相手には逃げてたのに――――聖国の人間より魔族の方がまだ信用できるってことかな?」


 2人揃って首を捻るが如何せん情報が足りない。


「現状はそれくらいしか予想つかねえか」


「追われてた理由もわからないし」


「何者なのかもな」


 小隊規模で、しかも聖国からそこそこ離れた土地を追い回される理由と素性が気になった。


 犯罪者にしては鎧や身なりが整い過ぎているし、何より彼女らからは真っ当な()()()()()()()()


 話し方や動き方がそれを如実に物語っていた。


「だね。追われる事情があるのは間違いないんだろうけど」


「これからどうするつもりなんだろな?」


「そこも聞いてみるしかねえか」


 そうして1時間半ほどが過ぎていき、ようやく頬を上気させて4人が戻って来た。


 凛華とエーラもひと心地ついたのかリラックスしているように見える。


(良かった)


 アルは静かに息をついた。



~・~・~・~



 陽が落ち、6人は夕食を摂った。


 幸いなことにネーベルドルフで貰った食糧がまだあったので人間の少女2人分くらいは賄える。


 口数も少なく火を囲み、身体に染みるような夕餉に舌鼓を打ち、満腹になったらじわりじわりと疲れが滲んできた。


 さてじゃあここいらの樹に頼んで樹上小屋(ツリーハウス)でも拵えようかという段で、徐ろに軽い癖のある朱髪を揺らしてラウラが立ち上がる。


 ソーニャも付き添うように続いた。


 ラウラは胸に手を当てそわそわしている。


 しかし魔族4人をまっすぐに見つめて、


「お話があります……その、私達のことで」


 と緊張頻りな声音で切り出した。


 ソーニャの萌黄色をした瞳にも真摯さが窺える。


 アル達4人は、彼女らの醸し出す空気から長い夜になるだろうことを悟るのだった。

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