序章
何度も話し合った。
話して、話して、時には喧嘩して、それでもまだまだ話足らなくて繰り返す。受け入れた俺ではなく、彼女の方が受け入れられないのだ。
夢見る未来は同じなのに。
一緒にいられる方法が、この手段でしかないのにだ。
ほんと、おかしな話だと思う。当事者である俺がこれでいいと受けいれているのに、意思を明確に示しているのに、それでも彼女は、話し合いの最後には必ずこう俺に訊いてくる。
「本当に、それでいいの? 後悔しない?」かと。
その度に、俺はこう答える。
「ああ、俺が望んだ事だ。俺が考え、考え抜いて選んだ道だから、神楽が気に病む必要はない」
そう言っても、不安な君は、少し眉間に皺を寄せ念を押してくる。
「……本当に?」
そんな君を見て、俺は微笑む。そんな俺を見て、君は真剣じゃないって、少し頬を膨らませ怒るけど。それが可愛くて、益々俺は頬が緩むのは仕方ないだろ。
だって、嬉しいじゃないか。君の不安は、俺を想っての事だろう。君が怒るのも、俺との未来を真剣に考えてくれてるからだ。それだけ想われていて、微笑むなって酷くないか。
俺は君に惚れ抜いているのに。君無しじゃ、生きていけない程にだ。
だから、俺の答えは最初から決まっていた。優しくて温かい君の心に、罪悪感という名の重りを背負わせ、結果君を苦しめる事になってもだ。
「神楽、俺の心に一変の揺らぎもない。俺は、神楽に会えて幸せだ。これから先も、神楽と共に歩んでいける。選ばなければ、一緒に歩めない。俺は幸せだよ。神楽と歩む未来が残されているのだから」
その未来を手に入れるために、俺の存在全てを、人間であることさえ、捨て去る事になろうとも、後悔はしない。
臼木神楽という存在を知ってしまった俺が、君のいない未来を歩く事など、死よりも重い刑罰にほかならない。自分でも、かなり重いって自覚しているけど、仕方ないじゃないか、それが本心だし。君はどうなのかは分からないが。
優しい君の事だから、自分のせいだと苦悶するだろうね。
だが、それは違う。
これは、俺の我が儘でエゴなんだ。




