最終手段
元々初めから、直接魂に訊く方法を使用するつもりだったらしい。
簡単に言えば、魂に刻まれた記憶を覗いたっての。頭の中の記憶じゃなくてね。その方が信憑性が格段と高いから。だって、記憶は時に改ざんされる事があるからね。自分の都合がいいように。でも、魂に刻まれた記憶は改ざんされる事はない。
死神様らしいって言えば、らしいやり方だよね。聞いた事はあったけど、初めて見たよ。かなりの苦痛を伴うらしいから、慶介を眠らせてからやったけどね。
眠るまでの間、嬉々として、慶介をいたぶっていたようだけど。っと言っても、直接手を出してないよ。あくまで、言葉と態度でね。まぁそれでも、慶介にとってはかなり効いたようだけど。とっくに、拘束は解いていたんだけど、それに全く気付かないくらいだったからね。
覗いて知った事だけど、例の〈魔物〉、かなり慶介に執着しているようだった。
『悪いが…この件が片付くまで、こいつをここで保護してもらえないか?』
次の日の朝、凄く言い難そうに白さんがお願いしてくる。
(そうなるよね……)
予想はしていた。記憶を覗いた時点でね。
〈魔物〉の姿形と出会った場所が分かれば、どういう経緯でいつ死んだのか、調べる事が出来る。死神様が持っている死神台帳でね。人の寿命は生まれた時に決まってるから。
そしてそれが分かると、どうして〈魔物〉になったのかも、自然と判明する。
同情はする。可哀想だと思う。理不尽だとも思う。
育児放棄で放置された挙げ句、花火大会の日に棄てられた可哀想な子供。その子供を、寄って集って乱暴し殺した。汚れた大人たち。
少年は身勝手な大人たちの犠牲者だった。
無惨にも殺された少年は、死後も棄てられた場所に留まり、やがて者を喰らい、生者をも喰らうようになった。
喰らい続けて、〈魔物〉になった。
その〈魔物〉に、慶介は手を差し出した。躊躇いなく。普通に迷子の少年だと思って。途中で死んでる事に気付いていたから、ここに連れて来たんだよね。
――善意。
生者も死者も与えられなかったもの。少年はそれに必死に縋り付こうとしたのだ。だから、慶介を欲し、執着し、決して喰らう事はしなかった。
とはいえ、一緒に居続けたら、喰わなくても慶介の未来は決まっていたけどね。
少年の気持ちは痛い程分かった。私にも近い所があるから。でも、受け入れる事は出来ない。
「しょうがないよね。私はいいけど、皆が何と言うか? 説得は、白さんがしてね」
ここは、白さんに丸投げにしよう。
慶介は、床の上で正座中。
一晩で、態度がコロッと変わったの。憑き物が取れたみたいにね。実際、取れたけどね。
それにしても、白さん達、どんな教育をしたのか気になる。途中で寝たから知らないけど。でもね、一度放った言葉は取り消せないし、失った信用も簡単には戻らない。
謝罪の言葉は貰ったけど、聞くだけで許しはしなかった。付喪神様達もだ。
『『……囮にすればいいんじゃない?』』
白さんの説得も虚しく、蒼と陸は冷たい目で、サラッととんでもない提案をしてきた。
(確かに囮にすれば、ここで保護する必要いよね)
『そうじゃ。それが、一番手っ取り早い解決法だな』
『そうよね〜彼、ここを出禁になったわけだし』
【そうですね。それが一番手っ取り早いですね】
紺も頷いている。これが、付喪神様達と家神様の総意だった。
反対に慶介は、付喪神様たちの言葉に身体を強張らせる。その隣で、高橋さんだけが、微妙な表情を浮かべていた。
『さすがにそれは、人道的から外れた行為では……』
最後まで言わせてもえなかった。私と付喪神全員から、一斉に見られたからだ。迫力負けした高橋さんは黙り混む。
「でも、それって、最終手段じゃないの?」
『……否定はしないんだな』
白さんが呆れた声で呟いた。
(否定? するわけないでしょ)




