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護国神社の隣にある本屋はあやかし書店  作者: 井藤 美樹
第二冊 絵本

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30/50

爆弾発言の行方



 ずっと黙って聞いていた矢那さんが、サラリと爆弾発言を噛ましてくれました。


『……その手があったか!!』


 朱里様が矢那さんの案に食い付く。紺もだ。蒼と陸も賛同する。っていうか、話聞いてたの。


 反対に私は焦る。黙っていたら、どんどん話が進んで行きそうな勢いだった。


「それこそ、無理!! だって、死神様の仕事は、とても大変で忙しの。迷惑に決まってるじゃない」


『一応、有給があるのでは?』


(はぁ〜何言ってるの、朱里様は。落ち着け、私。っていうか、神様が有給って)


「私事で、貴重な有給を使わせる訳にはいかないでしょ。それに、そもそも、あの補佐官様が認める訳ないわ」


 地獄に本を卸しているから、何度か話した事がある。話し方はとても柔和だけど、中身は全く違うの。出来れば会いたくない。避けるべき人の代表格の様な人だ。


(仕事は超ホワイト、精神は超ブラックだよ、あの職場環境は。それに、白さんも休日は休みたい筈。やりたい事もあると思う。迷惑を掛ける訳にはいかないわ)


『『試しに相談してみれば?』』


 蒼と陸にそこまで言われたら、「駄目」とは言えない。私より遥かに歳がいってるのに、見た目が子供のせいか、強く出れないのよね。


 項垂(うなだ)れていると、紺が私のスマホを持って来た。受け取ってから顔を上げると、付喪神様達は頷く。


 渋々、皆に促されるままスマホを操作する。番号は以前から知っていた。電話ではなく、メールにしたわ。それなら迷惑は掛からないでしょ。


 白さんが来てくれたのは、夜の十時を少し過ぎた頃だった。今回は死神バージョンだ。まだ、仕事中なんだって。


(本当に、ごめんなさい)


 心の中で必死で謝ったよ。ほんとは口にしたかったけど、目下、当事者である私を無視して、朱里様達がサクサクと説明し話を進めているから、口を挟めないの。


『なるほど…………で、俺に護衛を頼みたいと』


 低い声で白さんは確認する。


(呆れてるよね)


 不機嫌そうな顔で真っ直ぐ見詰められると、萎縮して顔をそむけたくなる。


(あ〜怒ってますね。忙しいのに、こんな事を頼んだ私達が悪いのは分かってます。言い出したのは、付喪神様達だけど)


「……いや……そこまで大袈裟にしなくていいです。パトロールしている時に、頭の隅に入れておいてくれるだけでいいので」


 慌てて訂正する。


『別に怒ってはいない。(むし)ろ……』


(寧ろ……? 何?)


『有給は取れるのか?』


 埒があかんとばかりに、朱里様が詰め寄る。  


『いきなり、取れるわけないだろ? それに、いつまで続くか分かんない状態なのにか?』


 確かに、白さんの仰る通りです。


『まぁ……佑樹が言ったとおら、暫くはパトロールの際、この上空を通るように皆には言っておく。後は、時間が許す限り、俺が一緒にいてやろう』


「それじゃ、白さんが休めないんじゃ……」


『俺は何処でも寝れるタイプだ。既婚者でもない。その点は自由だ。だから、安心していい』


(ん? どういう意味かな? ……まさか!?)


「もしかして――」


【ここに泊まる気ですか?】


 ずっと黙って聞いていた見えない同居人さんが、私の台詞に被せてきた。


『その方が安全だろうが』


【ここは、私がいるので安全です】


『確かに、家神のお前が居れば安心だ。だが、外に出られないお前は佑樹を護れないだろう。佑樹は仕事を休みたくない。いつ、外に出る用事があるか分からないなら、一緒に住んでいた方がいいだろうが』


【それを言うなら、貴方が仕事に行っている間はどうするのですか?】


 とっちも引かない。


 片方は紙、片方は口。静かな応酬だけど、見えない同居人さんと白さんの間に、とてつもなく険悪な空気が漂っている気がするのは、私だけかな。


 そんな二人を見て、付喪神の皆はやれやれと溜め息を吐いている。だけど、矢那さんだけは、目をキラキラ輝かせていた。どうしてかな。


「……あの〜お忙しい白さんに、そこまでして頂く訳には……」


 やんわりとお断りする。当たり前でしょ.。


【そうです】


 折角、穏便にお断りしようとしているに、見えない同居人さんは畳み掛けるように言い放つ。


(ヒエッ!! 白さんの顔、超怖い。眉間の(しわ)が今まで見た中で一番増えてるよ)


 白さんが、そこまで私の事を心配してくれてるのは嬉しい。嬉しいけど、そこまで甘えるのはちょっとね……仕事上の知り合い程度なのに。だから正直に、仕事に影響が出ないよう、やんわりと伝えようと思う。


「白さんが心配してくれるのが、とても嬉しいです。私が死神様達から距離を取られているのに、気付いていましたから……こんな、個人的な頼みを真摯に考えてくれて、本当にありがとうございます。だからこそ、白さんには無理をしてほしくないんです。必要以上に甘える訳にはいきません。なので、出来る範囲で、しんどくない範囲でお願い出来ますか?」


 話終えた後も、白さんは黙って私を見詰めている。


(白さん?)


 首を傾げる。そんな私を暫く見詰めた後、白さんは大きな溜め息を吐いた。


『…………分かった。出勤前に寄ることにする。報酬はそうだな、飯を頼む』


(そんな事でよかったら、いくらでも)


「分かりました。ありがとうございます。好き嫌いはありませんか?」


 にっこりと微笑みながら尋ねる。


『特にない』


 短くそう答えると、白さんは仕事に戻って行った。

 



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