表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
護国神社の隣にある本屋はあやかし書店  作者: 井藤 美樹
第二冊 絵本

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/50

序章



(いつからだろう……)


 自分と大して変わらない、何処にでもいるような平凡な少年の事が、気になって仕方なくなったのは。


 冗談や馬鹿話が出来る兄弟がいなかったせいかもしれない。一応、同じ歳の友人と呼べる存在はいたが、そんな話をする事すらなかった。友人達の背後には、親や家があったからだ。


 といっても、僕の周りには常に人が居たし、特には寂しいとは思わなかった。


 寂しいと気付かなかったのか、気付かない振りをしていたのか、今でもよく分からない。でも、心の何処かで、無意識に寂しいと訴えていたのだ。


 まぁ、理由なんてどうとでも言える。


 当時の僕は、無性に何かに飢えていた。


 その飢えを満たしてくれたのが、平凡な少年だった。少年と遊べれば、それだけで幸せで、心が満たされた。


 だから、少年が何者で、どうして自分の家に居るのかなんて、どうでもよかった。


 反対に、その事を追求したり、誰かに知られたりしたら、少年に会えなくなるかもしれない。そっちの方が僕にとって、とても恐ろしい事だった。


 だから、ずっと黙っていた。


 黙って、隠れて少年と遊んでいた。


 保証のない日々だが、当時の僕は、少年との関係が永遠に続くものだと信じて疑わなかった。本当に子供だった。


 それを痛感させられたのは、忘れもしないあの日だ。


 夏の暑い日だった――


 いつもの時間に、少年との約束の場所に行ったが、少年の姿は何処にもなかった。陽が暮れるまで待ったけど、少年は来なかった。 


 次の日も、その次の日も待ち続けた。


 少年がいなくなった事にショックを受けるよりも、僕は使えるものを全部使って少年を捜し出す事にした。


 使用人の子供の中に少年は居なかった。


 その時になって気付く。少年の名前さえ知らなかった事に。少年は僕の名前を知っていたのに……


 容姿だけで捜すのは、とても困難だった。手掛かり一つさえも見付けられない日々。不思議な事に、誰一人少年の事を知らなかった。記憶していなかったのだ。


「幻でも見ていたんじゃないか」って言う者もいた。僕がおかしくなったと、陰口を叩く者もいた。口では僕の心配をしながら、自分の子供を売り込む親戚もいた。


 悔しかった。何度も、何度も、強く唇を噛み締めた。切れる事もただあった。


「間違いなく、あの子は居た。居たんだ!!」


 大人達に何を言われても、僕は決して諦めなかった。


 年単位に月日が流れても――


 我ながら、その執着心に呆れた。もはや、苦笑しか出て来ない。


 僕が再び少年に会えたのは、彼が居なくなって十年の月日が流れた頃だ。


 本当に偶然だった。


 城が趣味だという級友に誘われて、半ば無理矢理に連れ出された日、皆で城を見学した後、護国神社に参拝していた時だった。


 実際は甘い匂いなんてしていないが、何かに誘われるようにフラフラと足が動く。


 そして、誘われるままに歩き、入った古本屋に、僕が捜していた少年がいた。


 昔と変わらない姿で、双子の幼児と楽しそうに遊んでいる。


 少年は僕を見て驚く。固まったまま、涙ぐむ。


 普通なら、その少年が、僕が捜し求めていた少年じゃないのは明らかだった。歳が合わないからだ。


 なのに僕は、その少年が自分と一緒に遊んでいた少年だと確信していた。不思議と、これっぽっちも疑わなかった。気持ち悪いとも思わなかった。


 僕は固まったままの少年に近付き、両膝を付く。泣き笑いのみっともない顔をしながら言った。


「見付けた。今度は、君が鬼だよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ