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面倒くさいから全部チェンジで  作者: 衣之谷こうみ
ルミナリア編

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48/51

48 最後の戦い


これまで組織立った抵抗を受けなかったわたし達は魔王城に突入した。


そんなわたし達は魔王城のあちこちで頑強な抵抗を受けることになった。



「どれだけ居るんだよ、こいつら!」

「パット、後ろは任せて!」


パトリックが剣を振るい、シャル姉が仕込杖でサポートする。


襲って来るのは魔将級ばかり。


押し寄せる魔族をネフィーが高威力の[ファイアガトリング]で焼き払い、それでも倒れない魔族をわたしが超速の剣戟で魔核諸共細断する。


そうしながら、わたし達は魔王城の地上階から1階ずつ登っていく。


魔王城は地上50階建ての塔だ。

最上階で待っているであろう魔王の下に辿り着けるのは一体いつになるんだろう?



「クソ! 寝る間もありゃしない! まさに死のロードだぜ!」


パトリックの言う通りだ。

わたし達は、40階に辿り着くまでに既に7日を要している。

その間一睡もしていない。

敵本拠地で安心して寝られる場所などどこにも無いのだ。

朝を問わず、昼を問わず、夜を問わず、四六時中敵が襲い掛かってくるのだから。


全員が前衛職で、シャル姉が後方支援職を兼ねる、わたし達勇者パーティ。

無睡の疲労はシャル姉の神聖魔法が全回復してくれるから、ここまで誰一人欠けることなくここまで来れた。

シャル姉が『戦う聖女』でよかった。



それでもわたし達4人はギリギリだった。



魔王城に突入してから既に10日目。

既に49階。残すは後2階のみ。


突如、わたし達の前に10本腕の魔将が立ち塞がる。



魔王の最側近ムルツカムイ。

10本の腕の一番上の2本で矢を放ち、2番目の2本の腕で魔法を放ち、それ以外5本の腕で獲物を振るう。獲物は、長剣、槍、トライデント、ハルバート、モーニングスター。

一番厄介なのは、3番目の左腕で持つ魔法無効化の盾だ。


わたしが主に魔法で攻撃するため、ヤツは剣を振るうパトリックを勇者だと思っているようだ。

なにせ、パトリックが握る剣は聖剣アリアンロッドのレプリカだからね。


一方のわたしの聖剣はまだマジックバッグの中。

振るっているのは市販の安い剣だ。

それも数十本マジックバッグの中にストックしていた。

それもこれまでの戦いで次々に折れ、もうストックは底を尽きかけている。



「埒が明かない! こいつは魔王とパスが繋がっているからいくら生命力や魔力を削っても魔王から魔力供給を受けて全回復してしまう!」

「つまり、魔王を倒してしまえば、こいつも魔力を絶たれて燃え尽きるってことよね!?」

「だから、ルミナリア! おまえが50階に行って魔王を倒せ!」

「ネフィリアちゃんもリアちゃんをサポートしてあげて!」


パトリックとシャル姉を置いて行けってか!?

冗談じゃない!


「わたしもここで――――」

「僕達を舐めるな! おまえが魔王を倒すまでの間くらい粘ってみせるさ!」

「わたくし達を信じて、リアちゃん!」


ムルツカムイと戦いながら、わたし達に先を促すパトリックとシャル姉。



「行きましょう、リア。私達で魔王を倒しましょう!」


ネフィーがわたしの手を取って上に向かう階段に目を遣る。


「わかった。先を急ごう」


最後にシャル姉がわたし達を神聖魔法で全回復させてくれた。

わたしはネフィーに引かれるまま階段に走り込み、上を目指したのだった。




最上階50階。

〖謁見の間〗の玉座に魔王ミストルフィニアはいた。


わたしを見た魔王が玉座から立ち上がる。


魔王。

それはどう見ても人間にしか見えない妙齢に女性だった。

ウェーブがかった黒髪が脹脛の途中まで伸び、右目は前髪に隠れている。

目の覚めるような美貌ではあるが、金色に輝く左目が魔族であることを物語っていた。

鮮血で染め上げられたような真紅のタイトなロングドレス。

ドレスのスリットから覗く黒い網タイツと黒光りしたヒール、そして右手に握られた鞭。

それは、彼女の美しさより、残虐性を際立たせるものだった。



(ようや)く現れたわね、ルミナリア・フォルティス」



夢の中と同じ声。


そうか。

わたしの魂を取り込もうとしていたのは魔王だったんだ。


だが、何故?



「それとも、(わらわ)に刺されたアリシア・ミュルシュタットと呼んだ方がいい?」


一歩ずつ歩み寄って来る魔王。


(わらわ)に毒を飲まされ息絶えた迂闊(うかつ)な姫君リーゼロッテ・イストリアかしら?」


カツ

カツ

カツ

カツ


静寂に包まれた〖謁見の間〗にヒールの音が響き渡る。


(わらわ)に首を()ねられた鈴白舞花(すずしろまいか)でもいいわよ?」


アリシア・ミュルシュタット?

リーゼロッテ・イストリア?

スズシロマイカ?


魔王は何を言っている?



「そうね。因縁の始まり、治癒師アリーチェならどう?」



何故か、その名を聞いたわたしの手がブルブルと震え始める。



そんな私の手にそっと手が添えられた。

ネフィーの手だった。


「大丈夫よ、アリーチェ。今度こそ私が守るから」


ネフィーの言葉がわたしの体に浸み込んでくる。

不思議と震えが止まった。


でも、ネフィー?

わたしはルミナリアよ。

アリーチェって、誰?



「リア。その剣を捨てて聖剣を握りなさい。今のあなたとその聖剣なら魔王に勝てるはずよ」


ネフィーに言われるままに剣を捨て、マジックバッグから取り出した聖剣アリアンロッドを構える。



「あんたの御託に付き合っている暇は無い。参る!」



わたしは縮地で魔王との間合いを詰める。

魔王の振るう鞭を()(くぐ)りながら。



「生意気な娘!」


魔王に一太刀入れるも、わたしも魔王の振るう鞭の連撃を浴びる。

鞭で打たれる度に体から力が抜けていく。


「これは吸生(きゅうせい)の鞭。打たれる度におまえの魂は消耗していくのよ」


魔王がどす黒い笑みを浮かべながら振るう[吸生(きゅうせい)の鞭]がまるで生き物のように軌道を変えてわたしに襲い掛かってくる。


マズいわね。

後何回鞭打たれたら、私の魂は燃え尽きてしまうんだろう?



「させない!」


ネフィーが放った[ブラックホール]が魔王の[吸生(きゅうせい)の鞭]を途中から飲み込んで消滅させた。

吸生(きゅうせい)の鞭]は唯の黒い指示棒と化した。



「また、貴様か!?」


魔王が左手から特大のビームをネフィーに放つ。


「ネフィー!!」


ネフィーにビームが迫り…………直撃した。



ネフィーが!!


だが、直撃したビームはネフィーを焼失させることなく反射し、魔王を直撃した。



「ぎゃああああああああああああああああ!!」


自分が放った超強力なビームに焼かれる魔王。



「ネフィー?」

「受けた攻撃魔法を威力そのままに正確に相手に跳ね返してやる魔法リフレクトよ」

「リフレクト?」

「いわゆる、禁呪ね」


ネフィーがわたしを見てテヘペロした。



「許さん! 許さんぞおっ!」


自らのビームに焼かれて顔を(ただ)れさせる魔王。


うわあ。

醜悪になっちゃったよ。



「今よ、リア!」


わたしはネフィーの言葉の弓から放たれた矢の如く、聖剣を腰溜めにして魔王に突進する。



「これで終わりだ!!」


わたしは渾身の力を込めて、魔王の胸に聖剣を突き刺したのだった。




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