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面倒くさいから全部チェンジで  作者: 衣之谷こうみ
ルミナリア編

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40/51

40 面倒くさい状況は全部チェンジで


再び辺境伯邸に戻って来たわたし達は、1階の会議室に通された。


「やあ、フィリップ。待たせてしまったね」

「構わんさ。まあ、座ってくれ」


相変わらず飄々(ひょうひょう)とした長官を立ち上がって迎える辺境伯。


長官の後について会議室に入ったわたしを見た金髪縦ロールの魔法士の女性が驚いたように立ち上がった。


「ルミナリ――――」


そんな彼女に、口の前で人差指を立てて内緒の合図を送る。


彼女が察して黙り込むのを確認したわたしも長官の隣に座る。

長官の前には辺境伯。

わたしの前には金髪縦ロール。

わたしの隣には当然のようにネフィーが座る。


「ネフィリア嬢。紹介しよう。彼女は魔法師団副師団長のロベリア・ウォールワース君だ」

「ロベリア。彼女がアルテオン辺境伯令嬢のネフィリア嬢だ」

「ネフィリア殿。ロベリア・ウォールワースです。ロベリアとお呼び下さい。いつも、魔法師団長のルミナリア様には良くして貰っています」


ロベリアがチラッとわたしを見た。


お願いだからバレるような真似はやめてね、ロベリア。


「あなたが『遠目(とおめ)のロベリア様』ですか? 御高名は存じております」


遠目(とおめ)のロベリア様』

彼女は広域の索敵が得意で、超長距離の複数の目標を正確に選び出し、その情報をわたしと感覚共有するスキルを持つ。

わたしが極大魔法を行使して超長距離から正確に目標を撃破できるのは彼女のおかげだ。

彼女は魔法師団が大規模な作戦を行う上で欠かせないわたしの右腕だ。


そんな彼女がこの場に居るということは――――



「長官。今回は大規模な作戦になるということですか?」


長官に確認すると彼が嬉しそうに微笑んだ。


「話が早くて助かるね」



長官がロベリアに目で合図する。

それを受けたロベリアがテーブルに地図を広げた。

世界地図じゃないか。

これはまた大雑把だね。


普通は王国地図か地域を絞った地図を出すものなんだが…………



「情報部からの報告によれば、現在、全王国国境に向けて周辺国全ての軍が進軍を始めております。一番近いナルディア王国軍は既に西部国境に到達しつつあり――――」


ロベリアによれば、我がガートランド王国以外の全ての国が魔王国と講和。

講和した各国は魔族軍と共同で王国に侵攻を開始。


つまり、王国が世界の敵として一斉攻撃される立場になってしまったということだ。



「王国陸軍の偵察部隊がナルディア王国軍に威力偵察を行ったところ…………これは本当のことなのか疑ってしまいたくなるような報告を受けていまして…………」


ロベリアが話を中断してわたしに視線を向けた。


どうしてわたしを見るのかなあ?

長官を見なよ。

もう、わたしは君の上司じゃないよ。


わたしは溜息を()くと、ロベリアにだけ判るように視線で合図した。



「斬り伏せたナルディア兵が再び立ち上がってきたそうです。それだけでなく、斬り落とされた手足が再生し、斬り傷も治ってしまったそうです。首を刺して絶命させたはずの兵すら起き上がって来たとも」


間違いない。

そいつは傀儡兵(くぐつへい)だ。

魔王の傀儡(くぐつ)にされてしまったんだ。


「更にナルディア王国の王都に侵入した諜報員によれば、王都民に特段の変化は無かったのですが、王宮内部は違っていたそうです」

「どういう状況だったのですか?」


わたしがロベリアに質問するとロベリアの表情がパアアアッと明るくなった。


だから、もうわたしは魔法師団長ではないと…………


「はい! 国王他王族が(うつ)ろな表情で指示を受けていたそうです、魔将に」



そういうことか。

王族は完全に自我を奪われて魔将に隷属。


つまり、ガートランド王国以外の支配層と軍は魔族軍の意のままに動く使徒となったということだ。



「この状況、ひっくり返せるかね?」


長官が意見を求めてきた。


わたしは(あご)に手をやって考察する。


周辺国は全部敵。


それなら対処方法はひとつだ。

全部殲滅してしまえばよい。


面倒くさい周辺国には消えて貰おう。



「可能ですね。彼等にはこの世界から退場頂きましょう」


長官が黙って頷き、ロベリアが中腰になって『よしっ!』てな調子で両手の(こぶし)を胸の前で握り締めている。



な~んか、この場を仕切っているのがわたしになってるみたいだが、いいのかそれで?



「ジョー! ちょっと待ってくれ! 今まで黙っていたが、彼は部外者だぞ!?」


辺境伯が立ち上がって長官に抗議する。


当然だよね。

彼から見たら、わたしはちょっと魔法の腕が立つだけのただの平民の旅人。

そもそも、国家の存亡を左右する会議に出席させることすら(はばか)られる存在だ。


「陛下の許可も出ているよ」

「陛下の許可だと!? バカな!」


ロベリア君?

(つか)み掛からんばかりの勢いで辺境伯を(にら)むのはやめてあげてね。

辺境伯は何も知らないんだから。


『何も知らない』と言えば、隣のお嬢様も同じだったよ。


ネフィーに顔を向ける。


だが、こっちのお嬢さんは辺境伯とは反応が違った。


目をキラッキラさせながら何かを期待するようにわたしを見ている。



「じゃあ、早速状況を開始して貰おうか」


長官が、さも当たり前のようにわたしに命じてきた。


「了解しました、長官。では、早速ですが、フィリップ様。何処か建物等の障害物の無い、周囲が広く見渡せる場所はありませんか?」


辺境伯がニコニコ顔の長官をチラッと見て大きな溜息を()いた。


「領都の西10kmのところに標高1200mのワラキア丘陵がある。平原が広がり、丘の麓に広がる領都が見渡せる絶景自慢の地だ」

「では長官、そこに向かうとしましょう。付いてきてくれるね、ロベリア嬢」

「もちろんですわ!! よろこんで!!!」


どこぞの居酒屋の店員にしては情の籠り過ぎた返事が来た。



「わ、私も同行してもいいですか!?」


ネフィーが立ち上がったわたしの腕を(つか)んだ。


「ネフィリア!?」


辺境伯が驚く。



「私、師匠の役に立てるはずよ! だから、ぜひ、連れて行って!」


真剣な眼差しのネフィー。

ロベリア、敵意を向けるのをやめなさい。



「いいんじゃないかね?」


長官がのほほんと言った。


「彼女も相当な魔法の使い手じゃないか。大公が連れてきた魔族軍を一撃で仕留めたのはまぐれじゃないと思うね」


いいのか?


「それに将来の魔法師団の担い手として、君の戦い方を見学するのは彼女のためにもなると思うよ」

「しかし…………」


確かにネフィーは強力な魔法士だがまだ学生で民間人。



「ネフィリア嬢もそれでいいね?」

「はい! よろしくお願いします!」

「私も行こう」

「それは承服できない」


辺境伯が立ち上がったが、長官がそれを止めた。


長官の雰囲気が急変する。


「アルテオン辺境伯フィリップに命ずる。魔法省長官として、この会議室を臨時の作戦指令室として接収する。辺境伯はここで全体の戦況把握に務めてくれ。後で連絡員を寄こす。いいね?」

「はっ! ご命令承りました」


辺境伯が右手を胸の前にして、長官に頭を下げる。


友人ではなく、王国政府重鎮からの命令に従う諸侯の礼だ。



「急ぎましょう、長官」


わたし達は辺境伯邸の会議室を辞すと、馬車でワラキア丘陵に急ぐのだった。




30分も掛からずにワラキア丘陵に到着。


「ロベリアさん」

「はい! ルミナリ――――モガッ!」


ロベリアが全てを言い終わる前にその口を塞いで丘陵の一番高い場所に連れて行く。


不審な顔を向けてくるネフィー。

面白そうに様子を見ている長官。


うん。この二人のことは無視しよう。




この辺でいいかな?

塞いでいた手をどけてロベリアを解放した。


「酷いです。ルミナリア様」


ロベリアが恨めしそうにわたしを(にら)んでいた。



一々(いちいち)名前を言わなくてもいいの。わかった?」

「でも…………」

「さあ、索敵を頼むよ。範囲はここを中心に周辺国外縁までかな」

「了解致しましたわ、ルミナリ…………いえ、何でもありません。索敵開始します」


わたしがギロリと(にら)むと、ロベリアが顔を引き()らせ………そして、目を閉じて索敵に集中したのだった。



数分後。


「索敵を完了しました。共有します」



わたしの中に三次元マップが流れ込んでくる。

敵は、王国の各国境に向けて周囲から進撃して来る13カ国の正規軍570万。

そして、彼らと行動を共にする魔族軍300万。

13カ国の王城や統治機関の場所の位置情報もマップ上に(くま)なく表示されていた。



さあ、始めましょう。


面倒くさい状況は全部チェンジよ!



わたしは、右手を天に(かざ)して膨大な魔力を一気に込める。


「エリアデフィニッション」


手を(かざ)しながら、ぐるりと周囲を見渡す。


直近は北部国境の外。

そして、王国を取り巻く遥か遠くの地平。

その全ての上空に(おびただ)しい真紅の魔法陣が顕現する。




「サテライトキャノン」


挙げていた右手を振り下ろす。


次の瞬間。


真紅の魔法陣を突き破るように天空から光の柱が降り注ぎ――――



魔法陣直下の全てを灼熱の中、(ちり)も残さず焼失させたのだった。









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