27 ま~た、ヘマしちゃった。テヘ
結局、わたしはコンスタンスと暮らすこととなった。
シンシアさんが自由都市ヨマイの領主代行を返上して冒険者ギルド業務に専従することとなり、コンスタンスが新たな『領主』となった。
コンスタンスは領主就任と同時に王国から公爵に叙爵された。
住いも錬金工房から領主庁舎の最上階に移された。
わたしは魔道具製作をするために、領主庁舎から錬金工房に通勤する日々。
なんか、会社に通うOLにでもなった気分だ。
OLになったことないけど。
もちろん、夜、コンスタンスと確かめ合うことは忘れない。
まあ、わたしが一方的に征服する日の方が多いんだが、10回に1回は逆襲されて快楽の沼に突き落とされたりする。
こうして、平和かつ甘々な日常が続いていったのだが――――
■
コンスタンスとの暮らしが始まって2年。
ヨマイ村が開村されて20年目になる。
自由都市ヨマイで開村20周年を祝す行事が行われることが決まった。
開村20周年記念祭初日。
領主庁舎の大会議場で執り行われたレセプション。
来賓としてやって来たのは、国王陛下と各地の貴族の他、連邦大統領と議会の議長に各州の知事。
亡命時に第一皇女だったわたしはそんな来賓の前で壇上に立たされ祝辞を述べさせられた。
「あれが、我が国の国名の由来となった帝国の英雄アリシア・ミュルシュタット第一皇女殿下だ」
連邦の州知事達が話すのが聴こえてくる。
そこで古傷を抉るんじゃない!
恥ずか死ぬではないか!
わたしに続いてコンスタンスが領主として祝辞を述べ、その後は冒険者ギルド最高幹部に登り詰めたシンシアさん、村を自由都市にまで発展させた鉱山会社社長のゼストさんが続く。
来賓挨拶を国王陛下と連邦大統領が務め、その後は親交を深める宴となった。
わたしの下には、連邦の大統領や両院議長、州知事が詰めかけてきた。
今日ばかりは、鈴白舞花と共に歩んできたお猫様達を何枚も被る。
ホスト役(ホステス役かな?)も完璧。
ただ、後で訪れる反動が怖い。
ここ、FPSができるゲーム機無いし。
反動対策どうしよう?
初日の政府関係者との交流が終わり、二日目からは市民が催す祭りが主体となる。
なんか、トンネルを通って訪れてくる連邦国民が多いな。
みんなジロジロとわたしを見てくるんだが気のせいか?
「銅像の本人を一目見ようとやって来てるみたいね」
屋台を一緒に食べ歩いているシンシアさんが呟いた。
そうなのか?
わざわざ遠くから見に来る意味あるか?
わたしは動物園のパンダやコアラじゃないぞ?
「あんたのせいで見世物にされちゃったわよ」
「ふふふふふ」
わたしの文句にコンスタンスは含み笑いするのみ。
ムカつくわあ。
今夜は縛りと焦らしのコンボね。
覚悟しておきなさい。
――――と、わたし達の前で豪華な馬車が止まる。
なんだろう?
「お初にお目に掛かりますわ」
降りてきた少女が完璧なカーテシーを披露して見せた。
膝裏まで届く漆黒の髪、銀色に輝く瞳、真紅のドレスを纏まとった7歳くらいの少女。
その表情からは年に見合わぬ神秘的な何かを感じさせた。
どこかで見たことがあるような…………
「わたくしの名は、エルフリーデ・シュトルツェン。アデルハイド・シュトルツェンが生み残した娘になりますわ。従姉の姉様」
シュトルツェン?
叔父上を唆して帝位を簒奪させ、最期は叔父上諸共わたしを殺そうとした女。
今、目の前に居るこの少女はその女の娘だと言う。
確か、叔父上は誰とも結婚せず子も居ないと訊いている。
なら、この少女は一体何だ?
突然の従妹の訪問に考えを巡らせるわたし。
だから抜かった。
油断した。
ドスッ!
エルフリーデと自称した少女がわたしに中て身を喰らわせてきた。
それは唯の当て身ではなかった。
彼女の手に握られていた長ナイフがわたしの胸を貫いていた。
どこから出した?
腿にホルダーでも巻いていた?
「ゴフッ!」
少女が身を引くことで支えを失ったわたしはヨロヨロと後退りして、街路樹に背を預けることとなった。
口から血を吐き、胸からの出血も止まらない。
「キャッハアアアアアア! 仕留めたぞ、わたしの忌まわしき片翼よ!」
ま、まさか。
「ア……アデル……ハイ……ド…なの……か?」
「おまえを誅するためにわたくしは地獄から舞い戻って来たのですわ。おまえ一人、幸せに暮らすことなど認められるはずもなし。これで今世も――――」
勝ち誇ったようにわたしを指差して語るエルフリーデ。
だが、全てを言い終わる前にその首が飛んだ。
ゼストさんの剣が横薙ぎに振るわれたからだ。
わたしがゼストさんに作った、自在に刃が伸縮する剣。
それが役に立ったんだね?
わたしはズルズルと街路樹に背中を預けて座り込む。
「アリシア!!」
コンスタンスが駆け寄ってくる。
「どうして!? どうして!?」
目に一杯涙を溜めてわたしを抱き締めるコンスタンス。
「そんなことしたら服が血で汚れちゃうわよ」
力が入らない両手でコンスタンスを押し戻す。
「こんな時にキミは!!」
怒らないでね。
あんたが血で汚れるのが気になるんだよ。
あんたの礼服姿はカッコいいんだから。
わたしのお気に入りなんだから。
「ま~た、ヘマしちゃった。テヘ」
軽くイなして見せたが、わたし、ちゃんと笑えてるかな?
「もうしゃべらなくていい」
「うん、そうする」
遠のく意識の中、わたしはある確信をする。
鈴白舞花の惨殺も、リーゼロッテの毒殺も、わたしの刺殺も偶然じゃない。
全て同じ人物、いや同じ魂の持ち主がわたしと同じステージに転生することで為される惨劇。
だが、一体何故?
彼女は転生を繰り返してまで何故わたしを殺すのだろう?
わたしが何をした?
いや、もうどうでもいいや。
どうせ、これで終わりだ。
もう、生まれ変わらなければいいだけのことだ。
やがて、わたしの意識は深淵深く沈んでいったのだった。




