第四話 魔物に変わろうとも、旦那様は旦那様ですわ えっ、俺の方が魔物に変わるの前提?
頭に血が上った祥吾は、ろくに見ずに卵焼きを口に入れカッと目を見開く
(な、なんという美味! 七色のキノコの比ではない)
だが、その後に体がカーッと熱くなってくるのを感じて
思わず卵焼きを見直す
卵焼きは黄色ではなかった。キノコと同じく七色になっていた
「千草……」
卵焼きを指さすが、後の言葉が出てこない
「何でしょう?旦那様?」
千草は、祥吾の様子を不思議そうに見ている
「この卵は、中身が七色だったのか」
我ながら馬鹿なことを聞いていると思いながら、体のほてりを懸命に押さえる
「いいえ、殻がすでに七色でございました」
「な、なんだと、殻が!」
「はい、数羽おります鶏の卵すべてが、七色でございました。
それはもう鮮やかで——」
「なんということだ。千草、これはゆゆしき問題だぞ」
「はい?」
「味噌汁の七色のキノコといい、我が家の鶏の卵が殻から七色になっていることといい
異常なことであろう」
「卵は中身だけ七色でも同じだとおもいますが」
「そういう問題ではない。要は、我が家のすべてが、
この地の何かに蝕まれつつあるということだ」
「蝕まれる?……むしろかわいい変化では」
「今はキノコや卵ですんでいるが、
このまま、山羊、牛、馬たちが蝕まれていったら
我々もそうならないという保証はない」
「そうですねえ、目が七色になると見にくくなるでしょうし、
汗が七色になると、お洗濯が大変になりますものねえ」
千草がなるほどと肯く。
「そんなかわいいものならいいが、やがて魔物になってしまうことも考えられるのだぞ」
祥吾はそう言って、外を指さす。
しつこい炎の龍は、いまだ諦めず結界らしきものと格闘している
「そうですわねえ。それは大変なことですねえ」
千草は、のんびりと答えてから、祥吾に向かって微笑む
「ですが、どんな魔物になろうとも、旦那様は旦那様ですわ。
背中に羽が生えましても、頭にお角が生えましても、
しっかりお世話をさせていただきますわ」
(いや、俺が魔物になる前提なのか?そうなのか?)
お茶碗をもったまま固まりかけた祥吾だったが、決死の覚悟を決める
(外の捜索を行わねば)




