第三話 異世界でも、妻の役目は変わりませんわ いや、だから、昼の話ですよね!
(俺は、夫たりえているのか?)
改めて祥吾は自問する
結婚式の夜の自分の振るまい
その後の訳のわからない衝撃
春の陽だまりのような甘い香りを最後に
祥吾の意識は途絶えた。
意識を取り戻した後の自分の醜態は思い出したくもない
夫としての威厳も尊厳も木っ端みじんに砕け散った
そう思うのだが、妻の千草の態度は少しも変わらない
自分を立てて敬ってくれている
その都度、妻の顔をじっと見てしまい、
「旦那様、どうかなさいましたか?」
小首をかしげて聞いてくる姿が愛しくて
(……いかん! 断じて左様なことではない!
私は夫として、家の長として、千草に、真に頼られる存在とならねばならん!)
回想から覚めた祥吾は、縁側の向こうを再確認する。
屋敷、蔵、離れ、家畜小屋、さらには畑と、耕作予定の広大な敷地まで
すべてが、切り取られて放り込まれていた
しかも、その周りは、四方八方すべて、見たこともない木々に囲まれている
「千草、先日も言ったが、我々はとんでもない場所に迷い込んだようだ。
軍の演習地でも、他国の奥地でもない……ここは、この世ではないのかもしれん」
深刻な顔で分析する祥吾に対し、千草がふと困ったように微笑む。
「左様でございますね」
「いや、どうしてそんなに落ち着いていられるんだ」
聞かれた千草は、逆に不思議そうに言う
「旦那様、どのような場所であれ、妻の役目は変わりませんもの」
「妻の役目?」
「ええ、朝、朝餉を作り、旦那様を起こし、お洗濯をして、お掃除をして、昼餉を作り
畑仕事、家畜の世話、夕餉を作り、お風呂を用意して、そして夜——」
急に顔を赤らめる千草
(いや、夜って……! いや、そうだが……いや違う!)
妻以上に赤くなってうろたえる祥吾
千草は、こほんと小さく咳払いして言う
「旦那様のために、できることが同じであれば、千草はそれだけで幸せですもの」
(そうなのか!)
思わず納得しかける祥吾は、まだ気付かない
その朝餉の膳のもう一つの爆弾に




