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第二話 異世界でも、妻の役目は変わりませんわ いや昼の話ですよね!

味噌汁を一口飲んでから、祥吾は気がついた

味噌汁の具が明らかにおかしい。


お椀の中で、七色に輝くキノコがゆらゆらと揺れている。


(こ、これは……毒ではないのか? いや、千草が毒を出すはずがない。

 しかし、地震のあと、庭の植物はすべて変異したはず……)


「旦那様、どうかされましたか?

 お箸が止まっておりますわ。お口に合いませんでしたでしょうか?」


「い、いや! ……む、美味だな(意外とイケる……!)」


箸を動かしながら、祥吾の脳裏に結婚式の日の光景が蘇る。


親族に見守られ、三三九度を交わした。

軍人として、国と、そしてこの淑やかな女性を守り抜くと誓った。


すべて、滞りなく終わり

二人は、祥吾の屋敷に戻った


新しく用意された屋敷で

二人きりになってから、祥吾は何を話していいか分からず

ただ時計の針の音だけが響いていた。


その音に耐えかねて

「千草殿、その……」

と声をかけた、まさにその時。


世界がひっくり返るような衝撃。

思わず、彼女を引き寄せ、覆い被さる。


春の陽だまりのような甘い香りを最後に

祥吾の意識は途絶えた。


意識を取り戻した後の自分の醜態は思い出したくもない

夫としての威厳も尊厳も木っ端みじんに砕け散った


と、思うのだが、妻の千草の態度は少しも変わらない

常に自分を立てて敬ってくれている

その都度、妻の顔をじっと見てしまい、


「旦那様、どうかなさいましたか?」


小首をかしげて聞いてくる姿が愛しくて


(……じゃない! 本当に頼りにしてくれているのだろうか?)


そのことが常に心をよぎる


回想から覚めた祥吾は、縁側の向こうを再確認する。


屋敷の敷地、畑、鶏小屋、さらには愛馬まで、

完璧な形で切り取られてこの森へ放り込まれている。


「千草、先日も言ったが、我々はとんでもない場所に迷い込んだようだ。

 軍の演習地でも、他国の奥地でもない……

 ここは、この世ではないのかもしれん」


深刻な顔で分析する祥吾に対し、千草がふと困ったように微笑む。


「左様でございますね」

「いや、どうしてそんなに落ち着いていられるんだ」


聞かれた千草は、逆に不思議そうに言う


「旦那様、どのような場所であれ、妻の役目は変わりませんもの」


「妻の役目?」


「ええ、朝、朝餉を作り、旦那様を起こし、お洗濯をして、

 お掃除をして、昼餉を作り、畑仕事、家畜の世話、

 夕餉を作り、お風呂を用意して、

 そして夜——」


急に顔を赤らめる千草


(いや、夜って……! いや、そうだが……いや違う!)


妻以上に赤くなってうろたえる祥吾


千草は、こほんと小さく咳払いして言う


「旦那様のために、できることが同じであれば、

 千草はそれだけで幸せですもの」


(そうなのか!)


思わず納得しかける祥吾


外では変わらず魔物が結界と喧嘩していた


第二話をお読みいただきありがとうございます。

「妻の役目」を淡々と語る千草に、勝手に深読みして自爆する祥吾……。

この夫婦、実は地震のせいで「三三九度」は済ませたものの、まだそれ以上のことは何一つできていない初々しさなのです。

次回、千草の「とんでもないスペック」が明かされる……!?

どうぞお楽しみに!

次回は5月6日17時50分に投稿予定です

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