第二話 旦那様には精をつけてもらわないと いや昼の話ですよね!
揺れる心を落ち着けるために
また、味噌汁を飲もうとして、祥吾は思い出した
味噌汁の具が明らかにおかしい。
お椀の中でゆらゆら揺れてる七色に輝くキノコ
(……毒ではないのか)
いまさらながらに胃の腑の熱さに、体が震えそうになる
「旦那様、どうかなさいましたか?」
「こ、このキノコは……」
「わたしも、最初見たときはびっくりいたしましたが、
ここでは、このようなものであろうと。
毒味はいたしましたので、大丈夫でございます」
「毒味!?」
その不穏な言葉に、軍人の視線で妻を見る
「はい、旦那様に食べていただくものは、すべて、毒味をしております」
「そのようなこと、千草が危ないではないか!」
「大丈夫でございます。私は、幼いときより経験しておりますので」
「幼いときから?」
「はい、父は動植物学者でして、幼い頃から一緒に全国の山野を渡り歩いておりました」
千草の父の話は、父や仲人より聞いてはいた
母親が幼いときに亡くなったことも
だが、そんな話は聞いていなかった
「その時に、やはりいろいろな、きのこや草花、木の実、
その他得体の知れないものも実際に食べて試しておりました」
「な、なんでそんなことを」
「父の教えです」
「いくら父上の教えといえど、命にかかわることではないか!」
千草の身に危害が及ぶと思うと、怒りで頭に血が上る。
「そうですわね。何度か死にかけたこともございました
父からは、味覚が痺れてからが勝負だと教わりましたわ」
ほおに手をやり、遠い目をする千草
「けれど、それがこうやって、旦那様の役に立っているのでございますから」
うれしそうに笑ってから、少し恥ずかしそうに言う
「だんなさまには、精をたっぷりつけていただかないと」
(いや待て、落ち着け俺……昼の話だ……昼の話のはずだ……!)
祥吾は、別の理由で頭に血が上った
だが、はたと気がつく
(俺は、夫たりえているのか?)




