第32話 すべてはこの瞬間のために
「舞台配置終わったよー。お兄さん、確認よろろ!」
「はーい。……うん、問題なし。いい働きぶりだぞふたりとも」
「お姉ちゃんから聞いてた通りいい人。……ちょっとカッコいいし」
「ちょっとは余計だよ?」
あげはちゃんと、あげはちゃんの双子の妹ちゃんたちが設営担当。
「ほんとうに私がこんな大切な役割を担ってしまっていいのだろうか」
「むしろ咲崎会長にしか任せられませんよ。昨日のリハーサルの動きは完璧でした。今日もその調子で頼みます!」
「……わかった。まかせてほしい」
で、ひと息ついて、覚悟の決まった表情をする会長が照明担当。
「最後の最後まで衣装確認してくれてありがとう、米山さん」
「いえいえ。公演中、万一の災難に見舞われても衣装関連は私がなんとかするのでご安心を」
そして、舞台袖には衣装担当の米山さんが控えていて。
「久松、機材は問題なさそうか?」
「うん、問題なし。で、恭ちゃんの指示通り劇伴流すのは俺でいいよね?」
「は? 俺だけど。お前、恭司からの指示の行間読めんの?」
「は? 行間なんて読まずに指示通り動くのがプロの立ち回りだけど?」
「っし、ちょっと表出ろよ久松」
「上等じゃん。ぶちのめしてやるよ」
「緞帳の向こう側にお客さんがいるって理解してないの君たち?」
音響担当の久松コンビもバックに控えてくれてる。
「三人とも調子はどうだ?」
「最高だよ! 早く演じたくて心臓爆発しそう!」
「雛鳥さん、あなたそんなキャラだったっけ? ま、元気なのはいいことだけどね」
「あれあれ? いつもの毒舌がないけど藤ちゃん、さては緊張してる?」
「そんなはずないでしょ? だって観客は実質ひとりだもの」
そんな万全……とは言い難いかもだけど、最低限度のバックアップがある中で演じる三人も、どうやら心身ともに問題はなさそうで、準備はこれ以上にないほどに整ったといえる。
残り二分。
緞帳が上がれば、俺たちの時間がはじまる。
小波の瞳から涙を滴らせ、演劇コンクールの優勝を勝ち取る時間がはじまる。
「すもも、瑠奈、雛鳥。こんなときに言うのもなんだけど、ほんとうにありがとう」
「ほんと今更だなぁ……。でもま、きーくんらしいっちゃきーくんらしいか」
「俺、ずっと舞台裏で他の高校の演劇見てたけどさ、正直、どこも俺たち以下だと思ったよ」
「親馬鹿みたいなこと言うわね。けどまぁ、恭司の言うことには嘘がないから、それが事実なのかもしれないけれど」
「なのかもじゃないよ。事実、そうなんだ。お前たちは最高で最強なんだ」
「はは、せんぱい、強豪校のコーチみたいになってる」
「事実強豪校のコーチみたいなもんだからな。……だからさみんな。自信をもって暴れてこい」
「うんっ」
「まかせなさい」
「やったります!」
「その意気だ。――それじゃ夢を叶えにいこうか」




