表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星色Tickets  作者: 風戸輝斗
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/38

第17話 衣装担当と音響担当

「こんな感じの衣装に仕上げようと思っています。どうでしょうか?」

「うん、控えめに言って最高だよ」

 ミシンの駆動音以外にはかすかな吐息くらいしか聞こえない家庭科室。

 明るく元気に! がモットーの俺でも、さすがにこの場では声量を抑えざるを得ない。


「ふふ、ありがとうございます。では明日、雛鳥さんを家庭科室まで連れてきてください。正確に採寸したいので、スリーサイズまでしっかり教えていただけるとありがたいです」

 ただの約束がどこか後ろめたく思えてしまうのは、ボリューム小の玲瓏な声が、どこか秘密めいて聞こえるからだろう。


「わかった、伝えとく。改めて米山よねやまさん、俺の頼みを聞いてくれてありがとう」

「いえいえそんな。岸本さん、去年からずっと頑張っていますから。私も微力ながら夢のお力添えができて幸栄です」


「ほんとうにありがとう。結果を残せるように頑張るよ俺たち」

「はい、最前席で応援させていただきます」

 控えめに手を振る米山さんに深々と頭を下げて、家庭科室をあとにする。


 六月も終わりが迫り、俺たち演劇サークル部の活動はより活発になっていた。


 藤沢は脚本を半分以上書き上げ、雛鳥は台本を覚えながら練習に励み、すももは脇役と雖も稚拙な演技にならないよう、時には雛鳥に、時には演劇部に教えを請いながら玄人役者になろうと努力してる。

 そして俺もご多分に洩れず、演劇が最高のものになるため奔走中だ。


「失礼します。門松、作曲の方は順調か?」

 旧校舎一階にある家庭科室の次は、その通路の最奥にある軽音楽部の部室。

 今日は予定がびっしりだ。


 ……いや、いつも通りかも。俺、仕事中毒説。


門田かどた久松ひさまつを混合して門松はやめろって言ってるだろ恭司。作曲の方は順調だよ。久松、音源あるか?」

 この部屋は防音加工されているらしく、声がやたらと反響するのが特徴である。


「あるよー。シーン一からシーン五まで、脚本が上がってる分の音源は既にできてるけど、どうする恭ちゃん、今すぐ聴いてく?」

 ちなみにこのふたり、俺を一瞥することもなくパソコン操作に没頭してる。


「そうだな……うん、そうするよ。ところで門松、藤沢の脚本どうだった?」

 けど話を聞いていないわけではなくて、久松に関して言えばヘッドホンを装着しているにもかかわらず恙なくコミュニケーションが成立するのだから不思議なもんだ。


 久松は今も音源制作に励んでいるようだが、一方の門田はヘッドホンもしないで美少女ゲームに熱中している。


『たっくん……その、ダメ、かな?』


 艶めかしいアニメ声が、やまびこのように部屋の中で反響する。

 デスクトップ画面にぴこんとふたつの選択肢が浮かんだ。

 いや、お前こそヘッドホンすべきだろ。


「だから門松はやめろって。……そうだな、さすが風宮学園一の鬼才ってまっさきに思ったかな。文面を見ただけで音楽が浮かんできたし」

 そんな残念系オタクの筆頭みたいな門田だが、こいつの作るBGⅯは商品価値がついてしまうくらいにすごい。

 実際、ネットにあげたBGⅯの再生数を資金源にして美少女ゲームに投資しているとかなんとか。


「ま、門ちん発狂してたし」

 そんな個人でもプロクラスの門田のBGⅯに久松の編集技術が加われば、それはもう鬼に金棒どころか劉備に孔明。

 久松の父親は有名なラッパーらしく、その影響で幼少期から音源編集に携わっていたとかなんとか。


「久松なんて号泣してたじゃねぇか。ってか、どうすればアリシア推しになるんだよ」

「は? 真面目に文章噛み砕けばアリシア推し以外ありえないと思うんだけど」

「あ? やんのかてめぇこら」

「門ちんはギャルゲーに頭侵されて腐ってるんだよ」

「喧嘩はやめて……」

 そんな天才ふたりで結成された軽音楽部も、俺の夢に協力してくれる頼もしい仲間だ。


 久松はすんなり誘いに乗ってくれたけど、門田がなかなか折れてくれなくて、おかげでまったく知らない美少女ゲームに没頭することになったのは去年の今頃だっけ。

 あ、もちろんえっちなシーンのない全年齢版をプレイしたよ? 俺、まだ十七だから。


「あ、そいえば恭司、この間クリアしたゲームがすっげぇ名作だったから今度持ってくるな」

「あ、あぁ、楽しみに待ってる!」

 なんて回想してるけど、実は現在進行形だったり。


 演劇の完成度を上げるためだ。

 そのためなら、Pとして依頼相手の機嫌気褄を取るくらいはど~ってことないぜ!

 ……攻略目安時間をネットで調べて五〇時間とか表示されたらさすがに発狂しかけるけど。


「なに言ってんの門ちん。恭ちゃんは先週、俺が先約したんだけど」

「は? 先約とかないから。恭司は俺のもんだから」

「聞き捨てならないね。恭ちゃんは俺の親友なんだけど」

「喧嘩はやめて……」

 オーバーヘッドの門田と銀髪の久松が口論をはじめれば、それはもうただの不良同士の喧嘩の一幕でしかなくて……


 というか君たち、そんなにも友達に飢えてるならまずは髪型と髪色を見直そうよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ