表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星色Tickets  作者: 風戸輝斗
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/38

第11話 一歩目を踏み外したのに、二歩目を踏みしめられるはずがなく……

 そして五分後、生徒会室にて。


「すまないが、私も判子を押すことはできない」

「ですよねぇ~」

 聞かずと結果は目に見えていましたとも。


 同好会から部に昇格するにあたり最小限必要な五人が集まったこと。

 だけど、俺の残念な学力が原因でみっちゃんから承認判子をもらえなかったこと。

 俺の話を律儀に頷きながら聞いてくれた会長は、こちらに部申請用紙を返却し、更なる過酷な現実を告げてくる。


「わかっていないねキミは。仮にGW明けのテストで赤点を回避したとしても、今のままでは判子を押してあげることはできないよ」

「なんでだよぉぉ!」

 俺、髪を掻きむしって発狂。


 狂乱する俺をまぁまぁと宥めつつ、会長は椅子に腰掛けるように促してくる。


「私は、キミが演劇サークル部を始動させて夢に挑む姿を見たいと兼ねてより思っている。私でよければいつでもキミの力になろうと思っている。けどね、生徒会長という立場上、演劇サークル同好会の部への昇格をすぐには承認できない理由があるんだ。まずは話を聞いてほしい」

 まっすぐ俺を見つめ、暗に絶望の底に叩き落としたくて拒否してるわけじゃないと論理的に説明されては従うほかないだろう。


 平静を取り戻して椅子に腰かけた俺に、会長は和らいだ顔で話しかけてくる。


「それにしてもすごいねキミは。物置部屋を部室にしてしまうし、宣言通り部員を規定人数まで集めてしまうし、その行動力と懸命な姿勢には舌を巻いてしまうよ。陰ながら応援していた身としては感極まるものがあるね」

「だったら判子くださいよ」

「それは無理だ」


「むぅ~!」

「ハムスターみたく愛らしく剥れてもダメなものはダメだ」


 咲崎さきざき生徒会長とは気がついたら仲良くなっていた。

 なんでも会長は夢に向かって全力疾走する人間を好ましく思っているようで、俺はその条件にぴったりと合致するため、親密な繋がりが生まれたってわけだ。


 会長が陰でこっそり俺のために部室を用意しようとしていたことも、俺のしつこい部員募集を認めるように教員たちを説得してことも、俺は知ってる。

 宣言通り俺を応援してくれている彼女が判子を押すことができないと言っているのだから、そこに大きな問題が横たわっていることは明白だった。


「では質問させてほしい」

 会長の顔が、キリっと生徒会長らしく引き締まる。

 俺は息を呑み、ピンと背筋を伸ばして言葉を待った。


「なぜ演劇部があるのに演劇サークル部が必要なんだ。私が納得できる理由を述べてほしい」

「……えぇと」


「どの部も決まって継続性と発展の可能性が必要とされる。キミがつくろうとしている演劇サークル部はこの条件を満たせるかい?」

「…………えぇと」

 やばい。どっちもすぐに答え返せないや。


「これが判子を押せない理由だ。答えを得たらまたおいで」

 会長は柔らかく微笑んで立ち上がり、俺に部申請用紙を手渡してくる。


「悲観することはないさ。今のキミには素敵な仲間が大勢いるのだろう? 仲間に協力を仰げば、赤点の回避も、私が投げ掛けた疑問に対する答えも用意できるはずだ。私はキミならこの壁を超えられると確信している。精進したまえよ少年。私はいつでもキミを歓迎するよ」

「……ありがとうございます」

 忙しい中、俺に時間を割いてくれた会長に頭を下げ、生徒会室をあとにする。


「……みっちゃんも、咲崎会長も、言ってることが正論すぎるんだよなぁ」

 GW明けにあるテストでの赤点回避と、すでに演劇部が存在するのに演劇サークル部が必要な理由ねぇ。

 ……しばらくは演劇に意識を割いてる余裕はないかもなぁ。


 部室に戻るために踏み出す一歩一歩が、泥沼の中を歩いてんのかってくらいに重たかった。



☆  ★  ☆



 で、部室に戻って三人に事の顛末を伝えると……


「なんとなくそんな気はしてたけど、せんぱいっておバカさんだったんだ」

「うぐぅ」


「どうして忸怩くんが演劇部ではなく演劇サークル部に拘るのか、私も常々疑問に思っていたのだけれど、まさかこれといって理由がないだなんてね。……ふぅ、厄介ね行動力のある無能って」

「うぐぅ~!」


「ま、きーくんがおバカで行動力のある無能だってことは初めからわかってたことだし、これからモモさんたちで支えていきましょ。というわけで、明日からは放課後みんなで勉強会だ!」

「意気揚々としているけれど、青海さんの方は成績大丈夫なの?」

「うぐぅ~!」


「忸怩くんとまったく同じ反応じゃないの……ま、そんな気はしてたけどね。ごめんなさい雛鳥さん、おバカふたりのせいで演劇活動が疎かになってしまって」

「いえいえ、ぜんぜん大丈夫ですよ。むしろ、大人数でのお勉強会なんてわたしには一生縁がないものだと思っていたので望外の喜びってやつです。ふへへぇ~」

「……さては私、とんでもない沈没寸前の泥船に乗り込んでしまったのかしら」

 なに言ってるんだ藤沢、沈没寸前の泥船だってのは端から了承してただろ?


 てなわけで、明日からご指導ご鞭撻お願いします藤沢センセ。

 ……こいつ絶対、「こんな簡単な問題も解けないの?」とか平然と言ってくるタイプだよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ