9話
徹と隆は奉還先の熊野神社で、神主さんに話を聞く事ができた。
「私がここの神主になったのは、奉還された後でしてね。前の宮司さんの家系が途絶えてしまったので、本家から派遣されてました」
いわゆる雇われ神主さんって事らしい。
「奉還前は奥に社務所があって、前の宮司さんが住んでいたようですよ」
「今はそこには誰かが?」
「今は誰もいないですね。建物自体も残っているかどうか」
「この神社は何を祀っているのですか?」
「元々は山神を祀った神社と聞いています」
「山神?」
「害獣被害があったようです。それを山の神様の怒りとして捉えていたようですね」
「害獣って?」
「熊が出たそうですよ。今でこそ住宅も多いですが、私が来た頃は、山間にポツンポツンと家があったぐらいで、熊が出ても不思議ではない感じでした」
徹と隆は、顔を見合わせた。これは大収穫だ。
「最近、といっても10年以上まえでしたかね。私がここに来てからも熊が出て騒ぎになったことがありました。山菜採りをしていた老人が被害に。ニュースにもなったのですが、知らないですか?」
10年以上前じゃ、徹も隆もまだ幼稚園児だ。
「ハンターが処理して、一件落着でしたが、被害に遭われた方は気の毒でした」
徹と隆は、丁寧に対応してくれた神主さんにお礼を言って神社を後にした。周囲はすでに暗くなり始めていた。
「結構収穫があったな。資料が空襲で消失したのは痛いが」
「ああ、フィールドワークとしては十分だな。害獣被害もニュースになったぐらいだから、あとはネットで調べられるだろう」
隆と徹が、道端に止めた車に戻ると、二人の警官が車の中を覗き込んでいた。
「やべっ、駐禁切られたかな?」
徹が急いで駆け寄って、警官に話しかけた。この辺は駐車禁止ではなかったはずだが。
「すいません、ほんのちょっとだけ離れてました。今動かします」
警官二人は顔を見合わせて不穏な空気を醸し出してきた。
「これ、君の車?」
「はい、すいません、今動かします!」
「こんなところで何をしているの?街の人ではなさそうだけど」
警官二人が怪しむように聞いてきた。




