2−3 フィールドワーク②
ETCゲートをくぐり、高速に乗ると、徹はラジオから流れるJ-POPに合わせるようにスピードを上げた。スマホで道路交通情報を確認すると、目立った渋滞はなさそうだ。徹が運転をしながら声をかけてきた。
「隆、資料は読んだが、今日の場所は?」
GoogleMapを開いて、経路情報を確認する。
「おおよそ二時間弱ってところだ」
「二時間か。途中でガス入れるぞ?」
「もちろんだ、運転してもらっているんだからガス代ぐらい持つよ。満タンにしてくれ」
「マジか!助かる!」
「来週、金使うんだろ?」
「え? いや、バレたか」
少し照れたような顔を見せる。徹には、最近付き合い始めた恋人がいた。
「クリスマスぐらい、豪華にしろよ?」
「わかってるよ、レストランは予約したし、プレゼントもちゃんと用意したよ」
徹が、車の後部座席を指差した。そこには、綺麗な有名アクセサリーショップの紙袋がおいてあった。
「おいおい、これって結構高かったんじゃないか?」
「まあな、バイト代がほとんどなくなったよ」
「気合い入っているな」
照れたように嘯く徹を茶化すように言った。自分には彼女はいないが、楽しそうな徹をみていると、こっちまで恥ずかしくなってくる。
「まあ、その、ホテルも予約したしな」
「お? ついにか! やったな!」
徹は、照れ隠しにカーラジオのボリュームをあげた。カーラジオからはJ-POPが終わり、ニュースを読み上げていた。
『C県の児童行方不明事件から一ヶ月が経とうとしていますが、いまだになんの手がかりもなく……』
「隆、C県ってのはこれから行くところだよな?」
「そうだな」
「行方不明事件か……これから俺たちが向かうのも、忘れ去られた祠だろ?」
「だいぶ寂れた祠というか、元神社みたいだな。戦前からあるらしいが、今では近くの人も存在を知らないらしい」
「俺たちも神隠しにあったりしてな」
途中サービスエリアで休憩をとりつつ、今日の資料の確認を行う。徹がうどんをすすりながら、資料を眺めて言った。
「これだけじゃ、調べるのにも限界があるよな」
スマホで、詳細地図を確認しながら、ラーメンを啜った。
「現在の姿と過去の形跡が追えればな。神社だったら祭事とか何かしらの形跡があるだろ?」
(収穫なしの可能性もあり得るな……)
とにかく現地に行って見てから決めるしかない。市役所や現地の図書館での資料。可能であれば近所の聞き込み。
突然、近くでガッシャーンという派手な音が聞こえた。持っていたどんぶりを落としそうになった。
見ると、小学生ぐらいの男の子が、お盆をひっくり返して、今にも泣き出しそうになっていた。それを見た徹は、サッと席を立ち、男の子に声をかけて、一緒に片付けていた。周りを見渡しても、親らしき人はいない。広いSAだから離れたところにいるのかも。隆も一緒に片付けに立った。徹の人に親切にできる行動力は凄い。
「何買ったの?」「兄ちゃんと一緒に買い直そう」と言っているのが聞こえてきた。
呆れるぐらいのお人好しだ。
「徹は相変わらずのお人好しだな……」
「褒めるなよ! 情けは人の為ならずって言うじゃないか。いつか返ってくるぜ」
ズズッとラーメンスープを飲み干す。改めて、今日のプランを徹に話した。
「現存を確認するのは無理だとしても、周辺の郷土史物を調べるだけでもレポートの隙間埋めるぐらいにはなるだろ?」
返事の代わりに、トレイを持って立ち上がった。
「よし、じゃ行くか」
◇◇◇◇◇
セットしたナビは県道を示していた。県道とは言え道幅が狭く、住宅もまばらになってきたところで、ナビが到着を告げた。しかし、そこには何もなかった。
いや、厳密には、山の木々が茂った道沿いだった。
「おい、本当にここなのか?」
徹が怪訝そうに聞いてきた。
「場所はここであっているはずなんだけど」
茂った草むらをかき分けるようにして見ると、僅かに山道らしき木々の隙間が見えた。
「ここらしいな」
山道と言っても、草むらの中にできたほんの僅かな隙間を、草木をわけながら入って行くケモノ道という感じだ。現地は想像を超えていた。山の入り口から五十メートルほど登ったところに、少し開けた場所があり、確かに祠らしきものが見えた。
ただ、草が生い茂っており、あることを知らなければ、見逃してしまいかねない程度だ。そもそもこの道は人が通るためのものとは思えない。小さい祠と、石碑はあるが、鳥居は台座を残してどこかに行ってしまったようだ。その石碑と祠も草に覆われている。
「石碑にはなんて書いてある」
「ダメだ、読めないな。文字っぽい字が見えるけど、判読できない」
「とりあえず周囲の写真を撮っておくか」
スマホの写真で周囲を撮影し出した。周囲は生い茂った草木だらけだが、周囲の環境がわかるように、祠を中心に数十枚の写真を撮った。
ふと。背中に違和感を覚えた。誰かに見られているような。
<つづく>




