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《《 ブログ「熊と共存を考える会」》》
皆さん、重大発表があります。今度テレビ番組に「熊と共存を考える会」の代表として出演することが決まりました。
テレビの公開討論という形式です。内容はまだ公開できないのですが、誰でも知っている有名な人がコメンテーターの人と共演し、熊との共存を宣伝してこようと思います。
この時期、森は食料が少なくなってきています。私たち人間は、熊の生活圏内を侵食し、彼らの生活を脅かし、食料を奪ってきました。彼らこそが被害者、いや被害熊なのです。
だからこそ、私たち人間は、熊との共存を第一に考えなければなりません。
駆除するなんてもってのほか! だって、彼らからしたら私たち人間は侵略者なのですよ。
言ってみれば、勝手に家の中に入ってきた泥棒を撃退したのに、撃退したことが悪いと言われて射殺されるようなものです。理不尽ですよね。
だからこそ、私たちのような良識ある人間が、彼らの生活を守るために、自然を破壊する人間に訴えていかなければなりません。
今度のテレビ番組を楽しみにしていてください。
◇◇◇◇◇
開いていたブログを閉じた。
そうだ、人間は侵略者だ。食べ物を奪ったのは人間の方だ。
だから人間が食料を与えるのは、当然のこと。そう、当然だ。
人間が、奪ってきた食料を与えるのでは意味がない。それは略奪の連鎖だ。
人間自身が生み出したものでなければならない。
そうでなければ意味がない。贖罪にならない。
侵略者としての贖罪だ。
さて、また狩りに行かなければ。
鮎の友釣り。
そうだ。
鮎の友釣りが最も効率的に狩りができる。
まずは、オトリ鮎だ。
そしてオトリを使って、また別の鮎を釣る。
オトリの管理は大切だ。逃げられては元も子もない。
うまく飼い慣らさなければ。
希望だ。目の前にニンジンをぶら下げるんだ。
◇◇◇◇◇
森の木々が風に吹かれてザザザッというノイズを響かせていた。陸は、途中で拾った長い棒を、まるで伝説の剣を見つけた勇者のように振り回し、山肌のコンクリートブロックに擦り当てながら歩いていた。ガリガリという感触が手に伝わってきている。
「ブルドーザー!岩を採掘します!」
最近テレビでやっていた言葉を真似して、棒の先をコンクリートブロックの隙間に這わせながら歩く。
「ドリルオン、ただいまより地中に潜ります。本部応答どうぞ!」
コンクリートブロックの隙間に棒を捻り込みながら、昨日の特撮番組のセリフを真似していた。
緩やかなカーブを描く山間の道は、少し離れたところに民家や畑道具をしまう小屋が見えるが、人の気配はなかった。あるのは、鬱蒼とした山の木々だけだった。
陸は、学校が終わって家から帰ると、すぐに家を飛び出して友達の家に向かっていた。友達の家までは陸の家から歩いて十分程度だ。もう何度も通い慣れた道で、迷うこともなく、不安もなかった。
「ブブー!」
陸は口で車の排気音を真似しながら、徐々に歩く速度をあげていた。どこかに落としたのか、いつの間にか持っていた棒が無くなっていた。
友達の家の赤い屋根が見えてくる頃だった。
「お兄ちゃん、待って!」
そんな時、不意に女の子の声がした。陸は立ち止まり、辺りを見渡す。先の道にも誰もいない。振り返っても誰もいない。
「お兄ちゃん!」
もう一度声がした。陸が少し見上げると、コンクリートブロックの上の木々のきれ目から白い服をきた女の子がこっちを見ていた。年は陸より下のように見える。
「お兄ちゃん、助けて!」
その子が陸に向かって声をかけてきた。『お兄ちゃん』と言われて悪い気はしなかった。
「何? どうしたの?」
陸がその女の子に話しかける。すると、その女の子は、一瞬木々に隠れて見えなくなった。
もう一度声をかけてみる。
「おーい、どうしたの? 出てきて」
すると、少し離れた階段の上、山道の入り口から、ぴょこっと顔を覗かせていた。
「お兄ちゃん、助けて」
女の子が同じ言葉を繰り返してきた。泣きそうな顔をしているのが目に入った。
『知らない人について行ってはダメ』
いつもママに言われている言葉が頭をよぎる。しかし、相手は自分より年下の女の子だ。その女の子が助けてって言っている。
「どうしたの? 何か困っているの?」
その女の子の泣きそうな顔を見て、立ち止まって話しかけた。
「あのね、ボールが森の中で、どこかに行っちゃったの。大切なボールが」
女の子が泣きそうな顔で、山の中を指差していた。
「ボール? どんなボール?」
「小さくてピンクのボール、森の中でなくなっちゃって。無くすと怒られちゃうの。一緒に探して?」
陸は手招きする女の子に、引き込まれるように山道に近づいて行った。
「分かった。一緒に探すから。もう泣かなくていいよ。一緒に探せば必ず見つかるから」
階段を上り、先に行ってしまった女の子を追いかけて山道の入り口に入っていった。
風がビュッと吹いて、木々が大きな音を立てて揺れていた。道路を静けさが支配する。まるで、ずっと誰もその道を通っていないかのような静けさだった。
<つづく>




