3−3 帰り道②
さっきまで茂みの中をゆらゆらしていた光が見えなくなっていた。
「おい、徹?どこだ」
大声で呼びかけるが、返事がない。
「おい、徹。こんな時にふざけるなよ。おい!」
周囲を照らすが、光輪の中に浮かぶのは草木だけ。ふと、違和感を覚えた。昼間に感じた違和感。誰かに見られているような気配。暗闇の中から誰かに。懐中電灯を向けるが、やはり草木だけ。
いや……。
見えないが、草の擦れるような音が僅かに混じっている。その時だった。
「逃げろー!!」
徹の叫び声が聞こえた。
「徹?!」
声のした方を振り向いた瞬間、何かが肩に当たり、焼けるような痛みが走った。
なんだ!?
振り向くと、棒を持った女が見えた。誰だ? 懐中電灯を女の顔に向ける。一瞬女がひるんだように見えたが、次の瞬間、棒を隆の頭に振り下ろしてきた。
ヤバい。
咄嗟に懐中電灯を持っていた手をあげる。ミシッと音がして、右手に棒が当たった。懐中電灯が転がって光が消えた。
なんだ、こいつは!
ヤバい!
ヤバい、ヤバい!
来た道を無我夢中で走り出していた。左手が濡れていた。血だった。真っ暗なので、どこを走っているかわからないが、徹のシビックのライトが見える。
あそこまでいけば。
途中何度か足を引っ掛けたが、何とか茂みを抜けて、車に辿り着くことができた。
なんなんだ、あいつは!
徹はどうなった。車の鍵は? 徹が持っている!
そうだ、スマホ。警察!
右手が痺れて、棒のようだ。その時に激痛が走る。
ちくしょう。右手が動かない。指紋認証ができない。暗証番号、なんだ?! そうだ、緊急通報。
どうするんだっけ? 電源ボタンを連打!
隆の記憶はそこで途切れた。
<つづく>




