3−4 警察②
佐伯は同僚とパトカーで緊急通報のあった現場付近に向かっていた。佐伯自身は初めてだったが、携帯電話で緊急通報と言う機能があり、GPSで位置を通報してくれる。通報者が何らかの事情で会話できない時でも場所が特定できる仕組みだ。誤報も多いと聞くので、今回もそうなのだろう。
「この辺だよな」
パトカーのライトの先に青いシビックが浮かび上がった。
「あれは、今日の学生の乗っていた車か?」
「まだ帰っていなかったみたいですね」
佐伯はパトカーをシビックの後ろに付けた。シビックのライトは付いていて前方を照らしている。周りを警戒しながらシビックに近づくと学生の一人が運転席に座っているのが見えた。
ライトを当てても身動きひとつしない。
「おい、おい、しっかりしろ!何があった?」
車のドアを開けて、肩を揺すってみる。学生の左手が、だらりと下がり不自然に黒い。これは……血?!
一瞬、学生の目が開き、「徹が、徹が」と山の中を指差して、またすぐに気を失ってしまった。
徹? 学生のもう一人か? そういえば、もう一人の姿が見えない。
佐伯は、あの人懐っこい敬礼をした学生を思い出していた。
「しっかりしろ!友達はどうした?」
学生はすでに気を失っていた。すぐさま無線で救急車を呼んだ。
「通報者を発見した。怪我をしている様子。救急車の手配を」
さっき山の中を指差していた。どうやら学生たちは山の中に入って、何か事件に巻き込まれたらしい。もう一人がまだ山にいるのか。見て見ぬ振りはできない。
「もう一人の学生が山に入ったらしい。ちょっと見てくる。お前はこの学生を」
マグライトを掴んで茂みをわけて山に入っていく。
「おーい、誰かいるなら返事をしてくれ」
声をかけたが、返ってくるのは静寂だけだった。マグライトを照らすが、見えるのはうっそうとした木々だけだ。
あの様子だと、何かあったようだったが。
ふと、横の茂みに気配を感じた。全身に鳥肌が立つ。生臭い異臭が漂ってくる。いや、生臭いというより、洗っていない雑巾のような不快な臭い……。
なんだ? マグライトを向けた先は何も見えなかった。いや、これは見えないのではなく……。
何かの咆哮のような音がした気がした。佐伯は叫び声をあげる前に、視界がブラックアウトしていた。
◇◇◇◇◇
一人は確保できた。一人は逃してしまった。
ここも安全ではなくなる。もうすぐ殺戮者が押し寄せてくる。こんなことで、愛する子供達を不幸な目に遭わせるわけにはいかない。
ガソリンがある。罠を仕掛けた。来るなら来てみろ! 後悔させてやる!
<つづく>




