14話
佐伯は同僚とパトカーで緊急通報のあった現場付近に向かっていた。
佐伯自身は初めてだったが、携帯電話で緊急通報と言う機能があり、gpsで位置を通報してくれる。
通報者が何らかの事情で会話できない時でも場所が特定できる仕組みだ。
誤報も多いと聞くので、今回もそうなのだろう。
「この辺だよな」
パトカーのライトの先に青いシビックが浮かび上がった。
あれは、今日の学生の乗っていた車か?
まだ帰っていなかったのか。
佐伯はパトカーをシビックの後ろに付けた。シビックのライトは付いていて前方を照らしている。
周りを警戒しながらシビックに近づくと学生の一人が運転席に座っているのが見えた。
ライトを当てても身動きひとつしない。
「おい、おい、しっかりしろ!何があった?」
学生の左手が、不自然に黒い。これは。。血?!
その学生は「徹が、徹が」と山の中を指差していた。
手は赤黒く腫れ上がっていた。
徹?
学生のもう一人か?
そういえば、もう一人の姿が見えない。
運転席の床に携帯電話が落ちていた。
彼のものだろう。
やはりこの学生が通報者だ。
「しっかりしろ!友達はどうした?」
学生はすでに気を失っていた。
すぐさま無線で救急車をよんだ。
「通報者を発見した。怪我をしている様子。救急車の手配を」
ふと気になって、学生の携帯を見てみた。
カメラアプリが起動している。直前まで使っていたようだ。
直前まで撮られていた映像を確認してみる。
画面には、暗闇の中で揺れる懐中電灯の光が映っていた。
「おい、徹。フレームアウトしているぞ」撮影している学生の声だ。
突然、前方の光が消え、暗闇だけが映し出される。「おい、徹?どこだ」しばらくの沈黙の後、遠くから「逃げろー!」という絶叫。直後、画面が激しく回転し、地面がアップになる。
また画面が激しく揺れる。
学生の悲鳴が聞こえたところで画面が揺れてブラックアウトしていた。
どうやら学生たちは山の中に入って、何か事件に巻き込まれたらしい。
もう一人がまだ山にいる以上、ほっておくわけにもいかない。
佐伯は、同僚に声をかけて山に入っていた。
「もう一人の学生が山に入ったらしい。ちょっと見てくる」
俺は茂みをわけて山に入っていった。
「おーい、誰かいるなら返事をしてくれ」
声をかけたが、帰ってくるのは静寂だけだった。
あの映像だと、何かあったようだったが。
ふと、横の茂みに気配を感じた。
全身に鳥肌が立つ。
生臭い匂いが漂ってくる。
なんだ?
何かの咆哮のような音がした気がした。
次の瞬間、視界がブラックアウトしていた。




