七
ゴールデンウィーク前の最後の登校日。
授業も終わり、ホームルームも終わった。
休み前の浮かれた雰囲気の中、清把と睦美が教室から出た。
「久桷」
振り向くと、ドアから上半身だけ出した担任がいた。
「気をつけて帰れよ。小山、ありがとうな」
「「はーい」」
清把と睦美は振り返って返事をし、廊下を歩き出す。
「平ちゃん、凄い心配そうな顔してたよ」
「うん。睦美ちゃんもありがとう」
「うん。でも気にしないでいいよ。私が好きでやってるんだし」
「うん、でもありがとう」
「うん」
二人は小さく笑い合いながら玄関へと向かう。
あの後、清把は汞から原田の事を学校の教師に言う様にと勧められたが、清把としてはそこまでしたくなかった。個人の、しかもちょっと見方を変えれば単なる自意識過剰過ぎる話にもとれる。
だが、その場にいた睦美にあれは頭おかしいレベルと言われてしまい、第三者から見ても危険視されるのでは、教師に面倒をかける事になっても言うしかない。
清把は睦美と一緒に担任の平川に相談に行き、平川は深刻な顔で「学校でも対応する。他にもなんか困った事があればすぐに相談に来い」と言われたのだ。
こんなにあっさり信じてもらい、対応してくれるとは思わなかったという顔をした清把と睦美に、平川は苦笑しながら教えてくれた。
「うちは女子校だからな。そういう変な奴に絡まれる生徒が毎年数人ぐらいいるんだ。ずっと前の頃はそんな事は気のせいだと言って真剣にとりあわなかったんだ。そしたら警察沙汰になってな。まあそれ以降は学校も警備を強化したり、生徒のいう事はちゃんと聞く様になったんだ。それに先生にも中学生の娘がいるからな。他人事じゃないんだよ」
その話を聞いた清把と睦美は納得した。納得と同時に安心した。学校が自分達の事を信じて守ってくれると。……まあ学校の名に傷をつけたくないとかそういう理由もあるだろうが、対応してくれるならそれでいいと思った。
原田の方は加藤が対応してくれたそうだ。
睦美と加藤から聞いた。
加藤が担任に報告し、担任が指導したと。だけど原田の清把への執着ぶりを間近で見た加藤は指導程度で原田が大人しくなるはずはないと思っているそうで、可能な限り原田の側で暴走しない様見張っておくと言ってくれた。
そのおかげで、あれから清把は原田とは接触していない。
帰りも水、木曜日だけだが、学校近くまで汞が迎えに来てくれている。清把はそれがとても嬉しかった。まるで恋人同士の様で。不謹慎ではあるが内心は本当に幸せだ。
「あ、清把ちゃん。もう篠原さんいるよ。いいね〜」
学校を出、通り道にある児童公園の入口に汞が立っていた。
「うん」
清把ははにかみながら答えた。
「もー、最近は揶揄いがいがないなあ」
睦美がちょっと呆れながらクスクス笑う。
「あ、篠原さん気付いたみたいだよ」
汞の方を向くと、汞が清把達の方を向いて微笑している。
「よかったね〜、清把ちゃん」
「うん」
二人は笑い合いながら、小走りで汞の元へと向かった。




