肆拾貳
元旦。
ぼんやりした頭で目が覚めた。
母親が階段を上り下りした音で目が覚めたのだ。
枕元に置いた携帯電話を見つけ、時間を見ると七時半過ぎだった。
今日は二人しかいないからまだ寝ていても大丈夫だが、また布団にもぐっても寝れる気はしなかったが、布団から出る気にもなれなかった。
雨戸の隙間から入り込む朝の陽で少しだけ見える天井を、清把はぼんやり眺める。
(瑣高君、死んじゃったんだよ、ね……)
でも本当に瑣高君、死んだの……?
私、瑣高君の……姿、見てないよ?
でも佳奈恵さんが自分の息子(甥)に対してそんな嘘を言うわけがない。
言う意味も理由も無い。
それに最後に見た瑣高の姿、祖父達の言葉を思い出せばやっぱり瑣高君は死んでしまったのだと思ってしまう。
ううん、瑣高が死んだなんて嘘だ。
嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ!
信じない!
信じたく、ない……。
「……はあ……」
清把は今まで生きてきて、これ以上ない程最低最悪の大晦日を迎えて、新年を迎えた。
「はあ……」
(逢いたい、瑣高君に逢いたい。逢って……逢っ、て……)
どうしたいのかわからない。
逢ってもどうにもならないことはわかってる。
だから、でも、とにかく逢いたい。
ならもう逢いに行くしかない。
田舎には佳奈恵が連れて行ってくれるが、母親にこの事を話すべきなのか、黙って行くべきか。
清把は物凄く悩んだ。
自分はもういいとしても、無闇矢鱈に母親を瑣高達と関わらせていいのか。
でも母親も流澤の家の人間だ。
自分が深入りしている以上、もう何も知らないでは済まされないはずだ。
(決めた。お母さんに言おう)
清把は布団を上げ、ベッドから下りた。
元旦にこんな重い話をするのも辛いが仕方がない。清把は覚悟を決めて、部屋を出た。




