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桜並木の道が終わると、こうとの楽しい時間が終わるのだと清把きよはは思い知らされる。

とても残念で、もっと汞と一緒にいたいのだがそうできないことも理解している。

汞との時間を名残惜しみながら公園を出、駅に向かって歩いていたら突然背後から不愉快な音が聞こえた。


「清把! 清把だよな!? 約束もしないでまた逢えるって、やっぱ俺達縁があるよな〜。なあ、ちょっとお茶しようぜ。おい清把、清把! 聞こえてるんだろ? 清把!」


そこそこ大きい声なので、すれ違う人やその場にいる人達が振り返ったり、怪訝な視線が清把達に向けられる。


「あれか。随分頭のおかしな奴だね」


汞は清把の右手を繋いだ。

「えっ!? こっ、汞君!?」

なんの前触れもなく自然に手を繋がれたので、清把は驚き、勢いよく汞を見上げた。

「ああいうのには相手に男がいるって、まず認知させないとね。まあ認知できる頭があればいいけどね」

「はは……」

汞は辛辣だが、的確な物言いに乾いた笑いが清把の口から漏れた。

「とにかく無視して歩くよ。いいね」

「うん」

清把は頷き汞と手を繋いで歩くが、頭の中がもう嬉しさと喜びで爆発していた。

汞と手を繋ぐなんて初めてだからだ。

六年間、汞との時間を重ねてきたが、こんなふうに手を繋いだ事なんて無い。

あったのは必要にかられて手を握る、掴まれる事だけだ。

だからどんな経緯であれ、好きな人と手を繋いでいるという現状に清把は嬉しさと喜びで舞い上がっていた。

それこそ背後からしつこく呼ばれ続ける自分の名に気づかない程に。


「清把!」


すぐ近くで呼ばれた自分の名にはっとしたと同時に乾いた音が響いた。

「ってえっ!」

汞が繋いだ手を離し、背後を振り向き清把を掴もうとした原田の手を振り払ったのだ。

「あ……」

浮かれていた清把の気持ちがスッと冷えた。自分が原田に捕まれそうだった事に気付いたからだ。

原田は汞に叩かれ右手首を左手でさすりながら、ギッと強い怒りの視線を汞に向けている。

「お前誰だよ。清把から離れろ。清把も俺がいなくて寂しいからって浮気はするなよな。ほら、一緒に帰ろうぜ」

頓珍漢な事を言いながら、原田は清把に右手を差し出した。

清把は口を開く事も、原田の顔を見る事もなく、汞の方を向いて汞の長袖シャツの袖口を小さく引っ張った。

「帰ろう、汞君」

「そうだね、清把ちゃん。駅まで送るよ。危ないからね」

汞は原田を冷たく一瞥すると、また清把と手を繋いで歩き出そうとしたが。

「おい待てよお前! 清把に触るなっ! ぐっ!?」

「原田!!」

息の上がった声と原田が呻いた声が同時に上がった。清把と汞は足を止め、後を振り返る。

「加藤、なんだよ、離せよっ!」

「止めろっ! 久桷くずみさん、ごめっ、早く行って!」

「離せよっ! お前に関係ない、だろっ!」

加藤に腕を掴まれ、振り解こうとしてるが振り解けないので原田は苛ついていた。

「大人しくしろっ! お前、このままだと警察呼ばれるぞっ! 図書館の警備員だってこっち見てんぞっ」

「!!」

警察と警備員という言葉が効いたのか、原田は踠くのを止めたが清把の方をじっと見つめている。

「とりあえず場所移動するぞ、ほら」

加藤が原田を公園の中に連れて行こうとしたが、少し離れた所にいる清把に声をかけた。

「あの、久桷さん。本当に申し訳ないんだけど、一緒に来てもらってもいいかな。ちゃんと話しておきたいから。……駄目かな」

「どうする、清把ちゃん」

「いいよ」

清把は加藤を見て答えた。

「ありがとう久桷さん」

加藤はほっとした顔をしながら原田を引っ張って公園に入って行く。原田は引き摺られながらも清把を未練がましく見つめているが、清把は視線も合わせず無視している。

「行こうか、清把ちゃん」

「うん」

汞は清把と手を繋ぎ直して、距離をとりながら、加藤達の後を追った。

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