二十七
夕飯を終えた後、瑣高は部屋でぼんやりとしていた。今日はもう何もする気にはなれないが、かと言って眠くもない。ならばベッドに横になり目を閉じれば眠くなるかもしれないと思い、座っていた椅子から立ち上がり、持っていた携帯電話をサイドテーブルに置くと同時に、ディスプレイが点滅した。点滅した光で誰からのメールかはすぐにわかった。瑣高はベッドに入り、置いた携帯電話を開けると、清把からのメールだと通知された。
だが——すぐにメールを開ける事はできず、躊躇った。
あんな最悪な別れ方をしたのだから、きっと自分を気遣う内容に違いない。だが、瑣高はその気遣いをされる事がなによりも堪える。
それにメールをこのままにしておいても気になってしまうので、瑣高はメールを確認した。
そうしてメールを読んでいくと失笑した。
「あっははっ! 本当に何を考えているんだか、この子は」
高校を卒業したら私を村に住まわせると祖父が言ったけど、断りました。
今までみたいに夏や冬休みに行くなら構わない、と伝えました。
ただその場合、住む場所は瑣高君の家がいいと言ったら却下されました。
でも私は本気です。
瑣高君や瑣高君の家族の方の了承がもらえたら、本当に行きます。
あの時告白した気持ちは嘘ではありません。
本当です。
私は瑣高君の事が大好きです。
だけど、その私の気持ち——私自身が瑣高君の生きる時間を奪ったと祖父から言われました。
それが本当なら私は……。
ごめんなさい、まだ、ちゃんと伝えられそうにはありません。
お身体を大切にして下さい。
「僕の家に住みたいなんて誰も思わないよ! ……本当にこの子は斜め上の発想ばかりするなあ」
僕はまた清把ちゃんからのメールを読み返す。
何度も読み返す。
そして——心から溢れるのは際限のない愛しさと、際限のない腹立たしさ。
清把ちゃんへの愛しさが増せば増す程、瞋恚も増す。
何故お前はそんなに無神経に僕に好意を告げるんだ。
お前のせいで僕はもうすぐ逝くのに。
だけど、君の想いが嬉しい。
清把ちゃんの事を考えれば考える程、想えば想う程、感情も身体も壊れていく。
ああほら今この瞬間も壊れていく。
人としての理性が壊れ、目にうつる全てを壊してしまいたくなる。
僕は携帯電話を裏返し、メールから意識を逸らす。大きく息を吸って感情を整える。
(ああ、今の僕にあの子の存在は害にしかならない。今の、僕には——)
僕は裏返した携帯電話をまた戻し、清把ちゃんからのメールを削除した。
(ごめんね、清把ちゃん)
今の僕はただ生きる事しかできないんだよ。
ごめんね——
僕は清把ちゃんへの全ての感情に蓋をした。
そして横になり、目を閉じた。




