二十四
あの忌々しい騒動の翌日の早朝。
俺はまたあの作業小屋に、父さんと祖父ちゃんと一緒にいる。母さん達に聞かれたくない話がある場合はここでする事になっていた。
先に来ていた父さんと祖父ちゃんは上り框に座っていた。
「里如。昨日の話だが」
「ああ……」
わかりきっていた事とはいえ、聞きたくない話だ。
「清把は今日帰らせる。そんで清把は高校を卒業したら村長ん家の離れに住まわせる。あとはお前が面倒見るんだ」
「は?? 何でそんな事になるんだ。いや、言われたけどさ、それに何で村長ん家??」
俺は突然わけのわからない話をされて、頭の中がハテナマークだらけだ。
「いいか、里如。昨日も言ったが清把は罪人だ。罪人を出したら、その家の者が責任を取らねばなんねえ。ここまではわかるな」
「ああ」
(理解したくもねえけどな)
と俺は心の中で毒づく。
「罪人は罪を償わなければなんねえ。男なら肉体労働や汚れ仕事やまあ、そんな感じだ。若い女なら、村長ん家の離れで暮らす事だな」
「男はまあわかるけど、若い女だとなんで村長ん家なんだ?」
父さんは言い難そうに、しばらく沈黙した。代わりに祖父ちゃんが話し出す。
「若い女は村の男の共有財産になる。つまり、何をしてもいいんだ。……慰み者にしたってな」
俺はその言葉を聞いてざっと血の気が引いた。それはつまり村公認の娼婦って事だろ……?
俺はもう清把の事は妹みたいには思えない、どころか俺達に不幸を持って来た厄介者だ。だが、村の男全員の娼婦になれ、とまでは流石に考えていなかったが、今後俺達がする苦労を思うならそれは相応しい罰かもしれないと思い直す。
「……何で村長ん家なんだ?」
俺は別の疑問を祖父ちゃんに訊ねる。
「村長ん家なのは村公認って意味になるのさ。だから村の男なら誰でも手を出して構わねえっていう意味になるのさ。所有者はお前になるから、清把になんかあったらお前が面倒をみるんだ。村長はあくまで土地を貸すだけだ。だが、もしお前が清把をそうしたくないなら、お前が清把を嫁にとれ」
「はっ!? なんでそうなるんだよ! それに俺に彼女がいて結婚する事も知ってるだろ!?」
「お前が清把を嫁に取れば、罪人は家の長が責任を持って償わさせる、だから許してくれという意味になるんだ。お前に女がいるのはわかってる。その場合、女の方は妾にすればいい」
「そんな事できるわけないだろっ!! 俺は美穂子を愛してる、あいつ以外の嫁なんて考えた事もねえよっ!!」
俺は大事な事をどうでもいい様な事のように言う祖父ちゃんにキレた。美穂子を馬鹿にされて腹が立った。
「なら清把を離れに住まわせればいい。……ああ、ただその前にお前、清把とまぐわれ。女の状態を一番初めに検分するのは所有者の責任だからな」
俺はあまりの悍ましさに吐気を感じ、咄嗟に右手で口元を押さえて外に出た。朝の冷んやりした空気が身体に触れると吐気が少しおさまり、気持ちも落ち着いた。
小屋に寄りかかると父さんと祖父ちゃんが小屋から出て来た。
「話は終いだ、里如。心積りはしとけ」
祖父ちゃんはそう言うと、父さんと一緒に帰って行った。
俺は板壁をズルズルと背中で擦りながらへたり込んだ。
(祖父ちゃんは何を言ってるんだ? あんなに清把を気にかけてたのに、今はあっさりと掌を返す様に普通じゃない事を言う。……っていうか、こんな祖父ちゃん、初めてみた。家のためなら誰が犠牲になってもいい、みたいな……。それに心積りってなんだよそれっ……!)
祖父ちゃんも父さんも勝手に色々決めやがって、こっちの事は無視かよっ!
俺は考えれば考える程、腹が立って仕方ない。ちくしょう!
俺は腹立ちながらも立ち上がる。仕事に行く前にもやる事はあるのだ。俺は腹立ちながらも仕方なく立ち上がり、家へと向かった。




