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春休みも終わり新学期が始まった。

春の桜がふんわりと美しく咲いていても、清把の心は雨が降った様に重かった。

きょろきょろと辺りを見回して、駅の改札を出て学校へと向かう前に、改札のはじの方にある柱の影に身を隠す。

あいつが——原田結貴はらだゆうきがいないか確かめていたのだ。


睦美と遊びに行った日の夜、睦美から電話がかかってきて原田の事を教えてくれた。

結果だけいえば、相当ヤバい奴だった。

小学生の頃、清把に対してやったちょっかい(原田曰く)はいじめではなく、自分を知って、気にかけて、好きになって欲しいからやった事でいじめではない。愛情表現だとの事。勿論今もずっと清把だけが好きで、高校を卒業したら清把を迎えに行く予定だったが、今日逢えたのは自分の想いが清把に通じたから逢えたのだ。だからもう待たない、自分と付き合うのは運命だから迎えに行くんだと言っていた、と睦美の彼氏——駿が教えてくれた。

どうして偶然会っただけなのに運命になるんだと駿が訊いたら、今、全く接点のない自分と清把が逢えたのが運命以外に何があるのか、と。だっておまえ達に清把との繋がりがあったなんて自分は知らなかったんだから、と。そんな状況で出逢えばもう運命以外の何物でもないだろう、だそうだ。

それを聞いた睦美はドン引きどころか、寒気を覚える程の恐怖を感じたそうだ。清把も勿論睦美と同じ気持ちだ。

そんな奴なら待ち伏せぐらい絶対にするはずだから、同じ駅で降りる清把はあいつがいない事を確認してからではないと、学校に行けなくなった。原田が見当たらない事を確認した清把は、足早に学校へと向かった。


無事学校へと着き、教室へに入った清把は自席へと着く。

「清把ちゃん」

睦美が清把に気付くと自席から清把の所へとやって来た。

「おはよう睦美ちゃん」

「おはよう。ねえ、大丈夫だった?」

少し声を潜めて睦美が訊いた。

「うん。大丈夫だった」

清把も同じ様に声を潜めて言った。

「良かったあ。ねえ、お昼外で食べない?」

言外にまだあいつの話があるという事だろう。

「うん、いいよ。外に行こうか」

「うん。あ、じゃあまた後でね」

「うん」

予鈴が鳴り、わやわやと賑やかだった教室内が、自席に戻ったり自分のクラスに戻る生徒でバタバタと慌て出した。


昼休みになり、中庭のベンチに座り清把と睦美はお弁当を食べ始める。

中庭には大きな桜の木があり、今はちょうどお花見にも最適な時期だった。

二人は花見をしながらお弁当を食べた。お弁当が不味く感じてしまう様な話題は後回しだ。

お弁当を食べ終え、パックのお茶を飲みながら睦美が口を開く。

「でね、昨日の続き、なんだけど」

清把はうん、と頷く。

「私、駿君になんでそんなヤバい奴と友達なのか訊いたの。そしたらさ、駿君もあんなあいつは初めて見たらしくって驚いたって。普段は人当たり良いし、話しやすくて良いやつなんだって。ただ、執着心は強い奴だっていうのは感じてたって。駿君は一年から三年まで奴とクラスが同じだったんだって。んで、一年から一緒だったからクラス替えした中、同じ顔がいてそこそこ話してたってなると新しいクラスの中でもなんとなくつるむじゃない? まあそれがきっかけで結構仲良い友達になったんだって。で、一緒に行動する中で、自分が気に入ったものに対しては凄く執着心がある事に気付いて、もし彼女とかできたら彼女は苦労するかもなあ、なんて漠然と思ってたんだって」

睦美は手に持っていた紙パックのお茶を飲みきって脇に置く。

清把は睦美の話を聞いて、もうヤバいと危険の文字しか思い浮かばなかった。

「で、奴はそこを抜かせば本当にいい奴なんだって言ってた。でもあの執着ぶりを目の当たりにして駿君もこれは相当ヤバいかも? って感じたから、とりあえず今はあいつが変な事しない様に見張ってるって。何かあったら私に連絡するって。だからなるべく一人にはなっちゃ駄目だよ、清把ちゃん」

「うん、わかった。ありがとう睦美ちゃん」

この話を聞いて、一人になんてなれるわけがないと清把は思った。

小学生時であれだったのだ。高校生の今、どれだけヤバい事をされるのかと想像しただけで身体が震えそうだ。

「あ、そろそろ予鈴鳴るから教室戻ろっか」

睦美が腕時計を見て言う。睦美の腕時計を見た清把は確かにそうだなと思い「うん」と頷きベンチから立ち、あいつの事は今は忘れようと意識し、教室へと向かった。

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