第四十八章 最後の証言
周娘子がベッドへ運ばれた時には、もうまともに言葉を話すこともできなくなっていた。
秦重が脈を取り、湯を沸かすよう人に頼む。
「毒じゃない」
「ただ、身体が弱りすぎている」
沈砚はベッドの脇に立つ。
「どれくらい持つ?」
秦重は答えなかった。
ただ沈砚を一度見る。
沈砚には分かった。
もう、あまり時間がない。
周娘子が目を開く。
「私を見ていても仕方ない」
「まだ死なないよ」
声は弱い。
それでも。
あの頃と変わらない、聞き慣れた口調だった。
蘇晩晴がベッドの脇に座る。
「どうしてずっと私たちに会わなかったの?」
周娘子は彼女を見る。
「分からなかったから」
「何が?」
「私はあなたを守っているのか」
「それとも、誰かの代わりに、あなたの人生を決め続けているのか」
蘇晩晴は黙った。
周娘子はゆっくりと言う。
「二十三年前、二人の子供を隠せば、生きられると思った」
「後になって分かった」
「生き残ることは、最初の一歩にすぎない」
「自分の過去さえ知らない人間は」
「生きていても、誰かの人生を生き続けることになる」
蘇晩晴は俯く。
「後悔している?」
周娘子は答えなかった。
長い沈黙のあと。
ようやく言った。
「後悔している」
「でも、もしあの日に戻れたとしても……」
そこで言葉を止める。
「私は、またあなたたちを救う」
蘇晩晴が顔を上げる。
周娘子は彼女を見る。
「だって、あの時のあなたたちは、ただの子供だった」
「大人の後始末を、二人の子供に背負わせる権利なんて、私にはなかった」
⸻
沈砚は机のところへ歩いていく。
墨で隠されたあの残頁を取り上げる。
「今度こそ教えてくれ」
「最後の一人は誰だ?」
周娘子は彼を見なかった。
「一人じゃない」
沈砚が一瞬、止まる。
「どういう意味だ?」
「二十三年前、本当に七号船を出した人間は三人いた」
「一人が命令を出した」
「一人が記録を書き換えた」
「一人が船を動かした」
「三人のうち一人でも欠ければ、できなかった」
陳旺が俯く。
「船を動かしたのは俺だ」
周娘子は頷く。
「あなたは、その一人にすぎない」
陳旺が顔を上げる。
「他の二人は?」
周娘子は沈砚を見る。
「沈懐川」
沈砚は動かなかった。
「それから、もう一人……」
周娘子は目を閉じる。
「私だ」
部屋が一瞬で静まり返る。
秦重が尋ねる。
「あなたが?」
周娘子は頷いた。
「私が名簿を書き換えた」
「二人の子供を、元の身分から消した」
「そして、すでに死んでいた人間を何人か、記録の中では生きていることにした」
「自分が間違えたことは分かっている」
「だから、この二十三年間ずっと」
「いつか名前を元に戻す機会を探していた」
沈砚が尋ねる。
「では、沈懐川は?」
周娘子は目を開く。
「彼は子供たちを連れ出した」
「自分がそこに残れば、全員が見つかると分かっていた」
「だから、わざと皆に思わせた」
そこで言葉を止める。
「二人の子供のうち、一人はすでに死んだと」
沈砚は、ようやく理解した。
だから。
これほど長い間、すべての記録が互いに矛盾していた。
誰かが単純に一つの記録を偽造したのではない。
彼らは当時。
互いに隠し合うことのできる、二つの真実を同時に作ったのだ。
一つは、官府に見せるため。
もう一つは、子供たちを追う者たちに見せるため。
そして本当の事実は。
第三の記録の中に隠された。
⸻
「では、あの火は?」
沈砚が尋ねる。
周娘子は黙った。
「火をつけたのは趙六」
「だが、彼は船が空になったと思っていた」
沈砚が眉をひそめる。
「子供たちがすでに送り出されたことを知らなかった?」
「知らなかった」
「では、なぜ火をつけた?」
「誰かに、帳簿が船にあると教えられた」
「だから帳簿を焼こうとした」
沈砚はゆっくり拳を握る。
「自分が人を殺すことになるとは、知らなかったのか?」
「船に人がいる可能性は知っていた」
周娘子は言った。
「それでも火をつけた」
「それが彼の罪だ」
「最後に何人死ぬのか知らなかったからといって」
「責任がなくなるわけではない」
沈砚は頷く。
「分かった」
周娘子は彼を見る。
「でも、あなたも忘れてはいけない」
「彼が間違えたからといって」
「彼の命に価値がなくなるわけじゃない」
沈砚は何も言わなかった。
その言葉を。
心に刻んだ。
⸻
門の外から足音が聞こえた。
南平令が役人に連れられて入ってくる。
抵抗はしなかった。
ただ、周娘子を見ると。
足を止めた。
「まだ生きていたのか」
周娘子は彼を見る。
「あなたもまだ生きている」
南平令は苦笑する。
「お前は私を恨んでいると思っていた」
「恨んでいた」
周娘子は答えた。
「でも、もう恨んでいない」
「なぜ?」
「あなたを恨んでも、死んだ人間は戻ってこない」
南平令は俯く。
周娘子は続けた。
「でも、恨まないことと」
「許すことは同じじゃない」
「あなたがしたことは」
「あなた自身が背負うべきだ」
南平令は何も答えなかった。
二人の間には。
二十三年という時間が横たわっている。
争いもない。
許しもない。
ただ。
ようやく口にされた事実だけが残った。
⸻
沈砚は終冊を役人に渡す。
「全部持って帰ってくれ」
南平令が顔を上げる。
「それが何を意味するか、分かっているのか?」
「分かっている」
「河運司の人間が調べられる」
「分かっている」
「当時の役人たちも責任を問われる」
「分かっている」
「多くの人間が、今持っているものを失うことになる」
沈砚は彼を見る。
「それは、自分たちの選択が招いたことだ」
南平令が笑う。
「結局、お前は規則を信じるようになったのだな」
沈砚は首を横に振る。
「違う」
「俺が信じているのは」
「規則が真実を受け入れられないのなら」
「規則のほうを変えるべきだということだ」
「だが、規則に問題があるからといって」
「人が勝手に誰かを殺していい理由にはならない」
南平令は沈砚を見る。
長い時間のあと。
初めて。
深く頭を下げた。
⸻
蘇晩晴が沈砚の隣へ歩いてくる。
「じゃあ、私の名前は?」
沈砚は彼女を見る。
「どうしたい?」
彼女は長い間、考えた。
「このまま蘇晩晴と名乗る」
「なぜ?」
「この名前は、生まれた時から持っていたものじゃない」
「でも、私はこの名前で二十三年生きてきた」
「この名前を覚えている」
「そして、この名前を受け入れている」
彼女は沈砚を見る。
「名前は、誰かが私にくれたものじゃない」
「私自身が残したものだから」
沈砚は少し笑った。
「なら、それがお前の名前だ」
蘇晩晴は頷く。
「うん」
⸻
夕方。
周娘子は沈砚に一人で残るよう頼んだ。
「もう一つ、話がある」
沈砚がベッドのそばへ歩く。
周娘子は枕の下から、小さな木箱を取り出した。
「これは沈懐川から預かった」
沈砚が受け取る。
蓋を開けると。
中には一通の手紙だけが入っていた。
印章もない。
封もされていない。
紙はすでに黄ばんでいる。
沈砚は広げた。
最初の一行。
「砚儿。この手紙を読んでいるなら、あの日の私の選択を、お前がついに調べ当てたということだ」
沈砚の手が止まる。
その下には、続きがあった。
「私があの日、正しかったのかは分からない」
「ただ、あの時、私の前には二人の子供がいた」
「全員を無事にする方法はなかった」
「だから、私は先に二人を連れ出すことしかできなかった」
「いつか、あの子たちが成長して、私を恨む日が来たとしても」
「私の代わりに説明しないでくれ」
「私は確かに一度、あの子たちの人生を決めたのだから」
沈砚の目が、わずかに赤くなる。
最後の段落には、数行しかなかった。
「だが、これだけは覚えておいてほしい」
「一人の間違いを理由に、その人の命を、別の人間の命の代償にしてはいけない」
「人が死ねば、すべてが終わる」
「生きていれば、間違いを認める機会がある」
沈砚は長い間、次の頁をめくらなかった。
なぜなら。
もう、その先はなかったからだ。
⸻
翌日。
南陵府衙は、二十三年前の河運事件について再調査を始めた。
古い記録は再び封印された。
当時の関係者たちは、一人ずつ呼び出された。
認める者もいた。
否定する者もいた。
自分は命令されただけだと言う者もいた。
そして。
二十三年間、誰も口にできなかったことを。
ようやく話す者も現れた。
過去を、なかったことにはできない。
だが少なくとも。
死んだ人々には、ようやく名前が戻った。
⸻
沈砚が南平を離れる時。
陳旺は船着き場に立っていた。
「これからも調べるのか?」
沈砚は川を見る。
「調べる」
「何を?」
「残っていることを」
陳旺が笑う。
「まだ終わってないのか?」
沈砚は首を横に振る。
「事件は終わった」
「だが、人間はまだ生きている」
陳旺は一瞬、言葉を失った。
沈砚は彼の肩を軽く叩く。
「これからは、自分で決めろ」
「何を?」
「いつ話すべきか」
「いつ立ち上がるべきか」
「もう自分に言い聞かせるな」
「俺には関係ない、と」
陳旺は長い間、黙っていた。
そして笑った。
「今度は」
「俺のことだ」
⸻
蘇晩晴は、少し離れたところに立っていた。
手首の赤い糸は、もう外してある。
新しいものはつけていない。
沈砚が歩いていく。
「行こう」
「どこへ?」
「南陵へ戻る」
「それから?」
沈砚は遠くを見る。
「残った名前を整理する」
蘇晩晴が笑う。
「本当に一生、死人と付き合うつもり?」
沈砚も笑った。
「違う」
「今度は、生きている人間のためだ」
二人は並んで渡し船へ乗り込む。
船は、ゆっくり岸を離れていった。
夕陽の下。
川面には細かな光が揺れている。
誰も気づかなかった。
船室の隅で。
一人の船員が古い木箱を整理していた。
彼は箱の底から、一枚の銅牌を取り出した。
半分しか残っていない。
そこには一文字。
「沈」
船員は、それを長い間見つめた。
そして。
銅牌を再び箱の底へ戻した。
持ち去ることも。
壊すこともなく。
ただ。
箱を閉じた。
船は、そのまま南へ進んでいく。
誰にも分からない。
二十三年前、あの火が残した最後の秘密が。
本当にすべて語られたのか。
だが今度こそ。
少なくとも。
この秘密のために、誰も死ななかった。




