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河灯未明  作者: 亀


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第二十四章 誰が七号の旗を掲げられるのか

南陵城へ戻った頃には、すでに子の刻が近づいていた。


沈硯は住まいへ戻らなかった。


そのまま秦重のところへ向かった。


机の上には、灯りが一つだけともっている。


七通の手紙は、今も木箱の中に置かれていた。


そして、門の外に置かれていた古い旗は、その反対側に置かれている。


青色はすでに白く褪せていた。


それでも、七つの水紋だけははっきり残っている。


秦重が沈硯を見る。


「何を調べる?」


沈硯は許同から受け取った古い下書きを広げた。


「七号の旗だ」


「さっき分かったじゃないか」


「分かったのは、七号の旗が臨時に割り当てられるものだということだけだ」


沈硯は最後の一行を指差した。


「だが、誰にその割り当てを決める権限があったのかは、まだ分からない」


秦重は頷いた。


「河運司だ」


「大雑把すぎる」


「なら、河運司を調べる」


沈硯は首を横に振った。


「河運司は役所だ」


「本当に署名する人間は、一人だ」


秦重は少し黙った。


「河運司の司丞か?」


「必ずしもそうとは限らない」


沈硯は白紙を一枚取り出した。


「もし普通の司丞が自由に割り当てを変更できたなら」


「河運のたびに、いくらでも臨時変更ができる」


「それなら、固定された登録制度など必要ない」


「だから、もっと具体的な権限があるはずだ」


秦重は沈硯を見る。


「印章を調べるつもりか」


沈硯は頷いた。


「印章だ」


⸻


翌朝。


沈硯は河運司の旧役所へ向かった。


今では倉庫として使われている。


古い記録保管所だけは、まだ残っていた。


沈硯は推官の身分証を出し、二十三年前の臨時旗号の割り当てに使われた印章の記録を見せるよう求めた。


記録を管理している男は、最初は渋った。


だが、沈硯が「七号の旗」と口にすると。


男はしばらく黙った。


そして二人を奥の倉庫へ案内した。


倉庫には、何十もの木箱が積まれている。


一番奥には、鉄製の戸棚があった。


古い錠が掛かっている。


鍵はすでに錆びついていた。


管理人が三度試して、ようやく開いた。


中には、使われなくなった印章が並んでいた。


「昔の河運司に残されていたものです」


管理人が言った。


「その後、制度が変わりました」


「ほとんどは使われなくなっています」


沈硯は一つずつ手に取っていく。


船務印。


臨時調配印。


検貨印。


夜行印。


そして、いくつかの割れた官印。


その時、秦重が言った。


「これだ」


彼が指差したのは、一つの銅印だった。


印面には、二文字だけ刻まれている。


「河令」


沈硯はそれを手に取った。


「これは何に使う?」


管理人は首を振った。


「分かりません」


沈硯は印の底を裏返した。


番号はない。


だが、そこにはごく浅い刻み跡があった。


七つの水紋。


沈硯はすぐには結論を出さなかった。


代わりに尋ねる。


「二十三年前、この印はまだ使われていたか?」


管理人は考えた。


「記録によれば」


「すでに廃止されていたはずです」


「いつ廃止された?」


「二十三年前です」


沈硯が顔を上げる。


「何月何日?」


「九月初七です」


部屋が静まり返った。


秦重が沈硯を見る。


だが沈硯は、ただ尋ねた。


「廃止の理由は?」


管理人は戸棚から古い記録を取り出した。


そこにはこう書かれていた。


「河令旧制の使用を停止し、司印による統一調配へ変更する」


その下には二つの印章が押されている。


一つは河運司のもの。


もう一つは、すでに判別できないほど擦れていた。


沈硯は紙を持ち上げる。


「なぜ廃止した?」


「分かりません」


「誰が命じた?」


「分かりません」


「原本は?」


「ありません」


沈硯はそれ以上聞かなかった。


もう分かっていた。


これは偶然ではない。


九月初七。


七号船が戻った日。


そして、蘇河の名前が記録から消えた日でもある。


⸻


二人はさらに記録をめくっていった。


やがて、極端に薄い古い帳面を見つけた。


わずか三ページしかない。


一行目。


『河令使用記録』


二行目。


『大晟二十三年九月初六』


三行目。


『七号』


その後の文字は、すでにぼやけていた。


沈硯は紙を窓際へ持っていった。


陽の光に透かしながら、少しずつ文字を読み取っていく。


「臨……」


「何だ?」


沈硯は答えなかった。


角度を変える。


ようやく文字が読めた。


「臨時調船、護送……」


その後の二文字は、水に濡れて崩れている。


残っているのは、「人」の字の半分だけだった。


秦重が言う。


「人の護送?」


沈硯は頷いた。


「おそらく」


「では、七号船は荷物を運んでいたんじゃない」


「少なくとも、あの時は違う」


沈硯はさらに下を見た。


最後の欄。


そこには、発行者の名前があった。


だが、残っているのは一文字だけ。


「沈……」


秦重の顔色が変わった。


「沈懐川か?」


沈硯は答えなかった。


その一文字を長い間見つめた。


そして首を横に振る。


「まだ分からない」


「なぜ?」


「筆跡だ」


沈硯は袖から沈懐川の手紙を取り出した。


二つの筆跡を並べる。


片方は筆先が右へ収まっている。


もう片方は下へ強く止めている。


どちらも「沈」という姓ではある。


だが、同じ人間の筆跡ではない。


秦重は息を吐いた。


「お前の父親じゃない」


だが沈硯は、安心しなかった。


「問題は、もっと大きい」


「なぜ?」


「つまり」


「二十三年前、河運司には少なくとももう一人」


「河令を使う権限を持った沈姓の人間がいたということだ」


秦重は黙った。


「誰だ?」


沈硯は首を横に振る。


「人を調べる」


⸻


昼。


二人は、昔の河運司の人員名簿を見つけた。


他の記録に比べれば、かなり良い状態で残っている。


二十三年前。


河運司には、沈という姓の人間が三人いた。


一人は沈懐川。


一人はすでに他所へ異動している。


そして、もう一人。


名前は二文字だけだった。


沈仲平。


役職。


河運司掌印吏。


その名前を見た瞬間。


沈硯の指が止まった。


「掌印吏?」


秦重が頷く。


「印章を管理する役目だ」


「河令は?」


「理屈の上では、そいつが保管していたはずだ」


沈硯はさらに下を読む。


沈仲平についての記録は、たった一行だった。


大晟二十三年九月初八、急死。


沈硯は顔を上げた。


九月初八。


七号船が戻った翌日。


何も言わない。


だが秦重は、すでに理解していた。


「また一人、死んだ」


沈硯は頷いた。


「少なくとも、こいつは本当に存在していた」


名簿を閉じる。


「家族を探す」


⸻


沈仲平の家には、もう誰も住んでいなかった。


近所の人間によれば、彼が死んだ後、妻は子供を連れて南へ移ったらしい。


だが二人は、当時からこの辺りに住んでいたという老人を見つけた。


老人は、すでに八十を超えていた。


記憶もあまり確かではない。


沈硯は沈仲平について尋ねた。


老人は長い間考えた。


「突然死んだよ」


「どうやって?」


「酒だ」


「酔って死んだ?」


「いや」


老人は首を横に振る。


「血を吐いた」


「誰かが調べた?」


「調べた」


「結果は?」


「急病だ」


沈硯は少し黙った。


「死ぬ前に、何か変わったことは?」


老人は考えた。


「ある」


「何?」


「死ぬ前の夜だ」


「ずっと紙を燃やしていた」


「何を?」


「知らん」


「何か言っていなかった?」


老人は突然眉を寄せた。


「確か……一言だけ」


沈硯は待った。


「こう言っていた」


老人は遠くを見た。


「『旗はもう返した』」


沈硯の胸が沈んだ。


「どういう意味?」


「分からん」


「他には?」


「ない」


⸻


そこを離れてから。


秦重が尋ねた。


「沈仲平は口封じで殺されたと思うか?」


沈硯は首を横に振った。


「まだ断定できない」


「だが、時期が出来すぎている」


「九月初六、旗が出された」


「九月初七、七号船が戻った」


「九月初七、河令が廃止された」


「九月初八、沈仲平が死んだ」


秦重は頷いた。


「少なくとも四つの出来事が繋がっている」


「だが、それだけでは因果関係は証明できない」


沈硯が言った。


「そうだ」


彼は足を止めた。


「だから、死に方は調べない」


秦重は驚いた。


「では、何を調べる?」


「死ぬ前だ」


「最後に誰と会ったのかを調べる」


⸻


夕方。


二人は古い来訪者記録を見つけた。


沈仲平が死ぬ前の日。


一人の人間が訪ねてきている。


名前は一つだけ。


沈懐川。


秦重が、その名前を見る。


「お前の父親?」


「ああ」


沈硯は何も言わなかった。


記録の下には、もう一行あった。


「二人、約半刻にわたり口論」


「内容は?」


「記録なし」


「先に出たのは?」


「沈懐川」


沈硯は、その紙を見つめた。


長い間、動かなかった。


もし父が沈仲平と口論して。


その翌日に沈仲平が死んだのなら。


誰だって疑う。


だが、沈硯は疑わなかった。


その時、父が死ぬ前に残した別の言葉を思い出したからだ。


――


「死者の代わりに話すな」


あの時。


沈硯は、父が死者の弁護をするなと言っているのだと思っていた。


だが今は違う。


父が本当に言いたかったのは。


死者は答えられないからといって。


自分たちが勝手に答えを作るな。


そういうことだったのかもしれない。


沈硯は記録をしまった。


「行くぞ」


秦重が尋ねる。


「どこへ?」


「沈家だ」


「また?」


「今度は火事を調べるんじゃない」


沈硯は夜の闇を見る。


「父を調べる」


⸻


沈家の旧宅は、すでに門が閉ざされていた。


沈硯は門の前に長い間立っていた。


だが、結局中には入らなかった。


懐から、父が残した手紙を取り出す。


もう一度、読み返す。


最後の一文。


「阿遥を七号船に乗せるな」


沈硯はふと気づいた。


その言葉の横に、ごく小さな墨の点がある。


筆を置いた時に残ったもののようだった。


以前は気づかなかった。


だが今。


許同の言葉を思い出す。


「沈懐川は九月初六の午後、わしを訪ねてきた」


そして、父の手紙。


「阿遥を七号船に乗せるな」


つまり。


父は七号船が出る前から。


誰かが阿遥を船に乗せようとしていることを知っていた可能性が高い。


だが、もしそうなら。


なぜ、その後も七号船には子供が乗っていた?


なぜ父は、それを止めなかった?


沈硯は初めて、父に対して重い感情を抱いた。


失望ではない。


理解できなかった。


父が知っていたのなら。


なぜ、救わなかった?


その時。


秦重が突然言った。


「沈硯」


「ん?」


「考えたことはあるか?」


「何を?」


「お前の父親は、止めなかったんじゃない」


「誰かに、一人しか救えないようにされたんじゃないか」


沈硯は顔を上げた。


秦重は彼を見ていた。


「二人のうち、一人しか救えなかった」


沈硯は答えなかった。


なぜなら、その推測が。


これまで現れたすべての手掛かりと。


初めて、一つの恐ろしい可能性を形作ったからだ。


二人の子供。


一隻の船。


消されなければならなかった一つの身分。


七人しか残すことのできない名簿。


そして、一場の大火。


もし、あの時。


本当に一つの選択しかなかったのなら。


沈懐川は、いったい誰を救った?


そして、もう一人は――


どこへ行った?


遠くの河面を、一つの河灯がゆっくり流れていく。


小さな灯火。


それでも、消えなかった。


沈硯はそれを見つめた。


そして、突然言った。


「明日」


「蘇河を探す」


秦重が尋ねる。


「なぜ、急に蘇河を?」


沈硯は答えた。


「もし、蘇河が本当に生きているのなら」


「二十三年前のあの日」


「父が何を選んだのかを知っている唯一の人間かもしれない」

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