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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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187 【断章】2027年5月9日(日) 終演 終わる世界

終わっていく世界。


太平洋洋上。


狂った地平線の上。


海は静かだった。


だが、その静けさの中で、

世界は確実に崩壊していた。


空は暗く、

雲は割れ、

空間そのものが歪んでいる。


その中心で、

二体の巨人が対峙していた。


壊れた英雄、浮雲平輔の操る

120メートル級、グレート山形ロボ。


そして。


“会議室”特級序列第一位

《魔王》ナンバーシックス。


彼の操る

120メートル級防衛機、オーディン。


奇妙なことに

二機は、まったく同じ構えをしていた。


剣を持つ腕。


腰の重心。


踏み込む角度。


まるで、

同じ流派の剣士同士のように。


いや、

完全に同門であった。


ナンバーシックスが毒づく。


「……世界の果てに、そういう結末を持ってくるのか」


低く、吐き捨てる。


「道化め。

悪趣味が過ぎる」


グレート山形ロボの肩。


そこに立つ影が、

コロコロと笑った。


眼鏡をかけた褐色の女性。


片桐一葉の姿。


――否。


その姿を模した存在、

ナイアルラトホテップ。


「魔王を自称するキミから、

そんな言葉をもらえるとは」


楽しそうに肩をすくめる。


「光栄の極みさ」


軽く笑う。


「それにしても驚いたよ」


「《虚》が、まさか爵位の魔王その人だとは」


「流石の僕も、肝を冷やした」


少しだけ目を細める。


「まぁ……彼も広義では確かに人類だ」


「間違いない」


指先で顎をなぞる。


「よくここまで、あの切り札を隠してきたね」


ナンバーシックスが吐き捨てる。


「ぬかせ、

道化め」


その間にも。


二機の巨人の距離が、

ゆっくりと詰まっていく。


ジリジリと。


まるで、

世界そのものが息を止めているかのように。


オーディンが剣を構え直す。


その剣。


それは。


日本首都防衛機クサナギの二番機〈ムラクモ〉。


嘗て。


グレート山形ロボに敗れたとき、

橘陽介は、自らの機体に呪いをかけた。


剣を模した飛行形態。


そこに、

永久的な局所位相固定を施す。


それは、

パイロットを、

神の部品へと鉱物化させる呪い。


肉体は朽ちる。


魂は削れる。


だが。


剣は折れない。


その結果、

クサナギは。


名の通り、

一振りの、折れない聖剣となった。


対して。


グレート山形ロボもまた、

剣を握る。


それは、ただの武器ではない。


世界中の神話。


世界中の剣。


戦の剣。


処刑の剣。


英雄の剣。


神の剣。


王の剣。


そのすべての概念が集約された存在。

世界中の殺意と権威の集合体。


《剣》。


そこへ、

山形ロボを触媒に、

クトゥルフの神気が流れ込む。


剣は黒く染まり、

魔剣へと変貌する。


二体の巨人。


二振りの折れない剣。


世界の最後の剣士。


二機は、

一歩、


踏み込んだ。


だが。


その一歩は、

ただの歩みではない。


相手の重心線。


攻撃線。


回避線。


すべてを読み切った上で置かれた、

必然の一歩。


互いの機体が、

刃の軌道へ吸い込まれていく。


まるで。


対象が、


自ら

“斬られる位置”へ立ち直るように。


錯覚ではない。


誘導でもない。


ただ、

“そう動くしかない位置”へ

追い込まれていた。


刃が走る。


光が裂ける。


次の瞬間。


二体の巨人は、


同時に致命傷を受けていた。


裂けたコックピット。


そこから、

ナンバーシックスが飛び出す。


背中に、蝙蝠の翼。


同時に、

露出した山形ロボのコックピット。


浮雲も動く。


虚空から、

一振りの刀を取り出す。


それは、

自身の存在の記録を刻んだ刀。


二人は、

生身でも斬り結ぶ。


ナンバーシックスが叫ぶ。


「英雄!」


身体が燃え上がる。


「儂と那由多の彼方まで

つきおうて貰うぞ!」


だが。


浮雲平輔は、

反応しない。


怒りもない。


憎しみもない。


ただ。


身体に刻み込まれた習性で、

剣を振るう。


それだけだった。


刃が交差する。


次の瞬間。


二人の存在は、

対消滅した。


残されたのは、

壊れた巨人。


無人の機体が、

ゆっくりと海へ崩れ落ちる。


それを、

見下ろしている存在がいた。


クトゥルフ。


満足げに。


深い海の王は、

静かにそれを眺めていた。


その横で、

ナイアルラトホテップが、

楽しそうに笑う。


「ああ……」


「なんと面白いオモチャだったのだろう」


肩をすくめる。


「満足した」


「満ち足りた」


空を見上げる。


「ねえ、父様?」


微笑む。


「もう――お目覚めなんでしょ?」


そのとき、

月軌道上。


凶星ユゴス。


そこで、

ヨグ=ソトースの門が開いた。


門の奥。


ウボ=サスラの巨体。


そのさらに奥。


そこに。


齧りつく存在。


盲目白痴。


全知全能。


万物の創造主。


誰も、その名を口にしない、

敢えて呼ばない、

魔王。


その存在が、

目を覚ました。


そして。

人類最後の一筋、因果を越える願い。


その光が――


日本、岩手県、北上山地の地下。

崩れ落ちた岩盤の奥で、静かに、煌めいた。


海は、もう波を立てていなかった。

世界は、七日目に、暗転した。


終演だった。

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