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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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177 2026年5月25日(月)_02 謎が増え、位階は上がる

学校、昼休み。

体育館のある棟の階段の踊り場。

その陰になった場所は、普段から人があまり来ない。


陽葵とカルが向かい合っていた。


周囲には生徒の声や足音が響いている。

だが、この場所だけは静かだった。


二人の周囲には、認識阻害の魔法が張られている。

ここで交わされる会話は、たとえ誰かが通りかかっても記憶には残らない。


陽葵のスマートフォンは机の上。

機内モード。


ハコ子には「没収されないように電源を切っている」と伝えてある。

実際には、完全に通信を断っていた。


陽葵は腕を組んだ。


教室の窓から差し込む昼の光が、机の上に静かに広がっている。


だが彼女の表情は、どこか納得していないものだった。


「昨日さ」


ぽつりと言う。


「いち姉ぇ、手術成功ってお母さんから連絡来たけど」


指先で机を軽く叩く。


「手術するほどの大ケガって、そもそも私聞いてないし」


一度、天井を見る。


そしてカルに視線を戻す。


「お母さん、何か隠してる」


少し顔をしかめた。


「絶対」


「ハコ子も……なんか隠してるよね?」


カルが頷く。


「僕もそう思う」


陽葵は少し空を見上げる。


「そもそもさ、

なんでお姉ちゃんがアメリカにいたのかも、正直よくわかんないのよね」


カルは少し考える仕草をした。


「陽葵。

アメリカとは、“アメリカ合衆国”で間違いないんだよね?」


陽葵が頷く。


「うん。

この世界というより、この星の裏側」


手で地球をひっくり返すようなジェスチャーをする。


「真裏ぐらい?

でも飛行機なら……たぶん半日くらいかな」


カルは腕を組む。


「この世界の技術力については、もはや何も言わないが」


「アメリカは友好国、なんだよね?」


陽葵は少し首を傾げる。


「のはず?」


「貿易摩擦がーとかたまに聞くけど、

昔戦争したくらいで、今は仲良し……のはず」


カルが頷く。


「その辺りの歴史は認識している」


少し沈黙。


陽葵がぽつりと言った。


「やっぱり……いち姉ぇ、異世界に関係してない?」


カルが少し目を細める。


「……その件なんだが陽葵。

君のレベルが上がっている」


陽葵は瞬きをする。


「……?

どういうこと?

この前の公園で頑張ったから?」


カルが頷く。


「確かに、その時も一レベル上がっている」


陽葵は少し胸を張る。


「やっぱり?」


カルは静かに続けた。


「だが、それとは別だ

陽葵のレベルが、一昨日の夜だけで六上がっている」


陽葵の顔が止まる。


「……え?」


カルは冷静に言う。


「君は一昨日の夜は、部屋で勉強していただけだ。

通常、この現象は起こらない」


陽葵の眉が寄る。


「なにそれバグ?」


カルは首を振る。


「違う。

これは、かなり限定された条件でしか起こらない」


静かに言う。


「血の繋がりが濃い存在が、

世界に重大な干渉をした場合。

その余波で起こる現象だ」


陽葵が目を丸くする。


「例えば?」


カルは少しだけ考える。


そして言った。


「例えば……魔王討伐」


陽葵が即座にツッコむ。


「いるの!?

この世界に!?」


カルは淡々と答える。


「いない……はずだ。

そこが重要ではない」


一歩近づく。


「一昨日起きたことを思い出してくれ」


陽葵の顔が少し固まる。


「……いち姉ぇが……大ケガした……アメリカで……」


カルが静かに頷く。


「そう。

恐らくだが……、

陽葵の姉上は一昨日――

魔王クラスの敵を討伐した」


「その結果、重傷を負った」


沈黙。


陽葵の口が少し開く。


「いやいやいや……」


首を振る。


「いや……?」


その瞬間。


キーンコーンカーンコーン。


学校のチャイムが鳴り響いた。

昼休みの終わりを告げる音だった。


---


山倉は、綾から届いたLINEの文面をもう一度読み返していた。


元観測班の人間だけあって、言葉の選び方は見事だった。

露骨な表現は避けながら、要点は確実に伝えてくる。

隠語と符丁が、程よく織り込まれている。


内容はこうだ。


娘――次女の陽葵の自転車が、ズタズタに切り裂かれた状態で捨てられていた。

警察から連絡があったという。

防犯登録から身元が割れたらしい。


そして、最後に一文。


最近、“怪異”絡みで何か変わったことは無かったか。


もし何かあるのなら。


一葉の看護のため渡米している間、

陽葵を見守ってほしい。


そう書かれていた。


山倉は、短く息を吐く。


児島の許可はすでに取ってある。


警備二班から、

髙橋。

長井。

加藤。


三名を動かし、昨晩から陽葵の護衛と周辺調査を始めていた。


観測機材も一通り展開している。


赤外線。

微弱霊子センサー。

監視ドローン。


通常の尾行ではない。

完全な観測任務だ。


状況がデリケートなときは、同性である加藤が近距離監視を担当した。

学校内や私生活の領域に踏み込みすぎないよう、細心の注意を払いながらの観測だった。


そこで、いくつかの事実が分かった。


まず一つ。


陽葵の行動は、基本的には普通の高校生のそれだった。

授業を受け、友人と話し、昼休みに校内を歩く。


だが。


一日に数回。


こちらの観測が、途切れる瞬間があった。


カメラが捉えている。

赤外線も反応している。

霊子センサーも異常はない。


それなのに。


「そこにいるはずの人物」が、認識から滑り落ちる。


ドローンのログにも、わずかな空白が生じる。


ほんの数分。


だが確実に。


観測から抜け落ちる時間がある。


山倉は腕を組んだ。


そして、もう一つ。


これはデータではない。


感覚だ。


山倉は、初めて陽葵を見たときからずっと引っかかっていた。


初対面のはずなのに。


なぜか。


最近どこかで会ってる。


どこかで。


確実に。


会ったことがあるような気がする。


山倉は小さく呟いた。


「……どこでだ」



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