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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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147 2026年5月19日(火)_02 アイアム イチハ カタギリ

防音ドアが開く。


鎌田、早川、エリザベス、タボ、十樫。

整備班とザ・ナインの面々がどやどやと入ってくる。


鎌田が片手を振る。


「おーい、お客さん来てるぞ? あと、こちらのお三方、もうすぐ帰るって〜」


早川が足元を見て眉をひそめる。


「なんで浮雲が海老ぞりに地面に転がっている?」


一葉は即答。


「これは気にしないで。デリカシーが無いだけなの。」


床で海老ぞりのまま、浮雲がうめく。


「……ふ、不可抗力……」


髪を振り乱していた児島は、

一瞬で姿勢を立て直し、

デスクの櫛で髪を整える。


「ありがとう。今お送りするわ」


完全に、無かったことにした。


周囲をぐるりと見渡す“優しい笑顔”。


――言うなよ?


言葉は無い。

だが目が語る。


「ふぎゃ!」


ころがっている浮雲を踏みしめ、

児島は入口へ向かう。


早川が戸惑う。


「いいのか? 浮雲? え? いいのか?」


一葉も、さり気なく。


踏む。


「ふぎゃ!」


「いいの。これはいいのよ、お父さん。」


防音ドアの外。

鉄骨むき出しの仮設通路。


そこに、

さっき会ったスーツの男性が立っていた。


「「あっ!」」


鎌田が振り返る。


「知り合いか? いやな、連絡ミスで地下ドックの入り方伝わってなくてな。さっき児島に言われて迎えに行ったんだよ」


スーツの男は、穏やかな笑みを浮かべる。


「こちらの職員さんだったんですね。先ほどはありがとうございました」


わずかな間。


その視線が、周囲を測る。


「改めまして。首都圏防衛機構“鎮守”の橘陽介です」


空気が、わずかに締まる。


児島が一歩前に出る。


「山形県総務部付属資料管理室、室長の児島裕子です。ようこそ、山形へ」


“鎮守”。


解体されたはずの世界防衛網。

その最後の残り火。


公的文書には存在しない組織。

だが、完全には消えていない。


鉄骨通路の先、

ドック内の巨大空間。


ちょうど指令室と同じ高さにある、

山形ロボの頭部が、静かにそこにある。


日本海溝、深海8000メートルのダイブを5回、

ネームド級邪神との殴り合い。


それらの負荷のチェックで、

各部のパネルが剝がされて内部が一部見えていた。


それでも。


圧がある。


---


橘の視線が、自然とそこへ吸い寄せられる。


「これが――

山形県防衛統合重機兵装システム。

通称、山形ロボ・コアユニット」


正式名称。


久しぶりに聞く言葉だった。


一葉は肩をすくめる。


「そう。うちの箱大仏です」


橘が、わずかに笑う。


「……報告より、ずっと静かだ」


「今は動きませんからね」


「ええ。激戦だったようで」


“激戦”。


その言い回しに、一葉が一瞬だけ橘を見る。


児島が苦笑する。


「二十七年前とは段違いの、本当に連戦でした。

かつてここまでこの機体が連続使用された記録はありません」


橘はうなずき、視線を外さない。


「鎮守は、本日をもって山形の保全状況と“作業記録”を再評価します。

二十七年間の封印。

そして四月二十一日以降の連戦。

その確認と、情報共有のために」


“作業記録”。


指令室内部。

武田の指が、わずかに止まる。

今田のモニターに、未整理ログの一覧が開いたままだ。

槌谷が無意識に、ドック天井の配線を見上げる。


ドックの空気が冷える。

“鎮守”の意図が見えない。

山形県総務部付属資料管理室は表向きは山形県の組織だ。

監査があるとは渡部からの定時情報には無い。


橘の視線が、

ほんの僅かに、

“コックピット”へ向く。


「……連戦中、主制御、メインパイロットの“片桐一葉”さんはどちらですか?」


児島は一拍置いて答える。


「現行運用責任者は……」


「あ、大丈夫です。同業者は気配でわかります」


橘の視線が、ゆっくりと指令室へ移る。


評価でも、敵意でもない。


測定、一人、また一人と測っている。


浮雲は気がついたら立ち上がって何時もの意味深なポーズをしている。

多分意味は無い。


「片桐さんはどなたですか?」


穏やかな声で一葉に尋ねる。

一葉は眼鏡のブリッジを精いっぱい知的に上げ


「はい、私が片桐一葉です!」


と元気よく答えた。

後頭部の寝ぐせが跳ねる。


静寂。


ドックのどこかで、

冷却水が流れる音がする。


「ん????? 貴女が、片桐一葉さん?」


「イエス!アイアム イチハ カタギリ!」


最高にどや顔。眼鏡の位置が変わり、

キープしていた左側面の寝ぐせも跳ね上がる。


児島が辛うじて知的な顔をキープしている。

指令室内から断続的に呼吸の裏返る声が聞こえる、武田死亡確認。


橘は、引きつった笑顔で頷いた。


「……そうですか」


その微笑みは、

味方のものか、

確認者のものか、

まだ判別がつかない。


山形ロボの頭部、

丸い複合センサーの奥で、

電圧が、0.3度だけ上昇する。


若林のモニターにいつの間にか移動しているハコ子が


>あのイケメン、あやしい……一葉、恋の予感?


「あんたも随分語彙増えたわね…あの子に感化されすぎると危険よ?」


若林があきれながらため息をついた。

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