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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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125 2026年5月15日(金)_02 消える存在

いつものように。


艦のアンテナ基部。


風を受け、海を見下ろす場所。


そこに、浮雲は座っていた。


膝を立て、腕を組み、

何でもない顔で。


その姿が、不意に揺らぐ。


陽炎のように、輪郭が薄くなる。


半透明。


「……あ?」


声が、かすれる。


力が入らない。


重力の感覚が、遠のく。


世界との“接続”が、緩む。


意識が、薄れる。


身体が、崩れる。


落ちる。


甲板へ。


真下に控えていたはずの髙橋と長井は、

その異常に、なぜか数分遅れて気づいた。


そこに“いた”はずの存在を、

一瞬、認識できなかった。


「……あれ?」


違和感が、形を持つ。


次の瞬間。


「浮雲さん!?」


駆け寄る。


そこに、横たわる身体。


確かにある。


だが、どこか、薄い。


世界との距離が、遠い。



---


医務室。


白い照明。


消毒液の匂い。


意識を取り戻さない浮雲を、艦の医療スタッフと合同で診察していた今野は、顔をしかめた。


モニターの数値を見つめる。


「……おかしい」


浮雲が、怪異。


つまり、非日常の存在に近づいている。


PPCF。

精神投影型戦闘構造体の召喚。


本来、あり得ない現象。


それを可能にするのは、

使用者の強靭な意識と、

現世での“存在”の消費。


誰かとの思い出。

観測。

共有。


それが、消耗を回復させる。


だが――


最大値で使っても、

合計五回。


多く見積もっても六回。


今野は、継続数値と日次データを重ねる。


老眼鏡をずらし、

目頭を押さえる。


「……残り、一回」


正確な算出は困難。


だが、体感値として明白。


次を使えば。


その次は、ない。


浮雲の“現世での存在”が、危うい。


資料管理室の面々は、

定期的に浮雲と思い出を作るよう配慮してきた。


今回の太平洋上、

東北六機のサルベージ作業。


これも、その一環。


記憶に残る経験。

共有される時間。


それで、この数字。


重い沈黙。



---


医務室に呼ばれた観測班と児島。


遠隔参加の、山形ロボ補助AI、ハコ子。


モニターに数値が並ぶ。


今田が指差す。


「ここです。」


「山形ロボの出力は変わっていないのに、

世界への干渉律が大幅に上昇しています。」


グラフが跳ね上がる。


「瞬間的ですが、1999年に観測された

ネームド級邪神クラスの数値です。」


武田が続ける。


「恐らくですが……」


「山形ロボと山形ロボ<影>。」


「浮雲さんにとっては、本来、同一の存在。」


「所謂ドッペルゲンガー。」


「それが同時に存在したことで共鳴が発生した。」


「どちらも、強大な神格に近い存在感を帯びた。」


槌谷が眉間に皺を寄せる。


「ですが、山形ロボは機械。」


「そして、山形県民に観測され続けた存在。」


「対して浮雲さんは、あくまで一個人。」


「存在強度の弱い方に、負担が集中した。」


「それが、私たちの仮説です。」


沈黙。


遠隔回線から、柔らかな電子音。


>わたしも おなじ いけんです


ハコ子の声。


児島は、ベッドで眠る浮雲を見つめる。


微かな呼吸。


どこか、遠い。


「……浮雲のPPCF召喚は、当面封印ね。」


決断。


誰も、異論を挟まない。


機械の駆動音。


「しなの」の動力が、低く唸る。


その規則正しい振動が、

沈黙を、いっそう際立たせた。

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