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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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113 2026年5月13日(水)_02 目め目で通じ会う、そういう仲

夜。


「しなの」の夕食はステーキとライス。


肉、厚い。

ソース、濃い。

最高。


一撃で美味しく頬張る。


潮流が変わり、艦がわずかに揺れる。

フォークの先の肉がぷるっと震える。


「予定より早く作業できるワタクシ、シゴデキです。

シゴトデキルガール。はい、まだガール。重要」


誰もツッコまない。


食後。


今野先生に「ちょっと来て」と連行される。


医務室。


なぜか。


児島。

武田。

槌谷。


ついてくる。


ドラクエか。


しかも全員、無言。

神妙。


やめて、

検査結果、良好のはずなんだけど?

やめて。


今野先生は年季の入ったアタッシュケースを取り出す。

ぱちん、と金具が鳴る。


中から出てきたのは、

血圧計みたいな何か。


それを、わたしの手足に巻き付ける。


は???


「簡易的な測定器です。詳しくはドックの医務室で」


ドック???


もしかして不治の病?


ちょ、待って。


せめて推し見つけるまで待って!


わたしはまだ、


推しのライブにも行ってないし、

限定グッズも揃えてないし、

同担拒否できる相手も見つけてないし、

推し活を全肯定してくれて、足になってくれて、物販列に一緒に並んでくれる彼氏もいない。


人生これからなんですけど???


「片桐さん、落ち着いて」


児島の声は静か。


「数値は良好よ」


「ならなんでこの重い空気なんですか!」


機械が小さく振動する。


表示される数値。


読めない。


でも。


武田の目が、わずかに細くなる。


「……上がってます」


槌谷が淡々と続ける。


「同期率、95.2%」


医務室が、静かになる。


私は、きょとん。


「それって……ダメなやつ?」


今野先生は穏やかに言う。


「今すぐどうこう、ではありません」


その“今すぐ”が嫌なんだよ。


児島が、ゆっくりと聞く。


「片桐さん。あなた、ロボの動き、前より軽く感じない?」


軽い?


……あ。


海底で、

抱き上げた瞬間。


「こう動く」って思った通りに、


機体が動いた。

ズレが全くなかった。


補正の感覚が、ほぼ消えていた。


楽。


ノンストレス。


「……気のせいじゃなかったの?」


武田が静かに言う。


「機体が、先輩に合わせています」


槌谷が補足する。


「そして、先輩も機体に」


私、ぽかん。


え。


なにそれ。


ロボと両想い?


いや待って。


最近ちょっと“かわいい”とは思うようになったけど、

あの“ずんぐりむっくり”は色気ないわ。

かわいいと、推せるは別。


武田が続ける。


「本来、霊子認証は複数候補に対して許容幅があります」


槌谷。


「現在、その幅が急速に狭まっています」


児島。


「あなた専用になりつつあるの」


専用。


その言葉が、妙に重い。


「……それ、良いことでは?

真っ赤に染めたりするやつでは?」


どこかで鎌田さんの声が聞こえた気がする。


“えらい人にはわからんのですよ!”


でも。


武田は、首を横に振る。


「専用化は、短期的には効率向上です」


一拍。


「しかし、長期的には“代替不能”になります」


「代替不能?」


槌谷が淡々と説明する。


「仮に先輩が負傷、あるいは長期離脱した場合、

山形ロボは即時運用不能になります」


今野先生が、静かに補足する。


「そして、強制的に霊子認証をリセットすれば、

片桐君の神経に負荷がかかる可能性があります」


わたしの心臓が、一拍遅れる。


「え、負荷って」


武田。


「切断ショック。

最悪の場合、意識障害」


医務室の空気が、重くなる。


わたしは、機械に巻かれた手足を見る。


あれ。


ちょっと待って。


「それってつまり」


児島が、まっすぐ見る。


「あなたとロボが、

切り離しにくくなっているの」


ロボと。


切り離しにくい。


なんだそれ。


恋愛漫画のタイトルか。


でも。


海底でのあの感覚。


ぴたりと噛み合った。


あの、軽さ。


「……じゃあ、どうすればいいの」


沈黙。


誰も、すぐに答えない。


今野先生が、静かに機械を外す。


「経過観察です」


武田。


「操縦時間の制限を設ける必要があります」


槌谷。


「95%を超えた状態での連続運用は、推奨できません」


児島は、少しだけ笑う。


でも目は笑っていない。


「片桐さん。

あなたは兵器じゃない」


一拍。


「でも、守ってもらう側だけでもいられないの」


わたしは、深呼吸する。


ステーキ、脂が重い。


いや違う。

なんか、胸が重い。


同期率、95.2%。


ロボは、わたしに合わせている。

そして、わたしも。


――それって、悪いこと?


まだ、わからない。


ただ一つ。


明日も、潜る。


それだけは、変わらない。

無意識に胸のお守りを握りしめていた。



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