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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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113/200

112 【過去編】1999年5月11日(火) まもりたかったもの

浮雲平輔は即座に局所位相固定を展開した。


範囲、およそ二〇〇メートル。


空気が重くなる。

地面がわずかに沈む。


無線を開放。


文翔館地下指令室。

北海道総合指令室。

同行班全員。


「防衛機キムン、神化の兆候大と判断する。

任務変更。

機体の確保およびコクピット分離を最優先、

分離不能の場合、当該機の破壊遂行。

神気拡散の可能性あり。

全員、アンチインサニティマテリアル装着状態を維持。

以上、繰り返す。機体確保を最優先。」


言い終わるや否や。


衝撃。


キムンの拳。


クマを思わせる瞬発力と質量。


山形ロボは吹き飛ばされた。


体格差は歴然。


半分以下のサイズ。


一気に空中に舞い上げられる。


だが。


重力制御、逆噴射、姿勢回復。


辛うじて着地。


浮雲の視界で、キムンの輪郭が変わっていく。


重厚な人型。


それが、

野生のヒグマのように歪む。


動きが違う。


先ほどまでの機動とは明らかに異なる。


パイロットの生存を無視した挙動。


内部制限解除。


「……部品化」


浮雲が小さく呟く。


若林の声が無線を裂く。


「神気圧上昇!

“無名の神”クラスの神格の可能性大!

平輔、持久戦は危険だ!こっちまで神化するぞ!」


大沼が続ける。


「影の形状と位相数値から、

まだパイロットは人間の可能性が高い。

救出優先。

機体まで失えば北海道の防衛線は崩れます。

保護、いけますか?」


浮雲は即答する。


「やるしかない。それが現状です」


山形ロボは超低空、地面すれすれを滑る。


神業のホバリング。


隙を待つ。


斜め右後方、丘の上、

山倉の声。


「平輔。一瞬なら気を引ける。

俺たちの安全と引き換えだが、やれるか?」


「了解。成功させます」


閃光弾。


夜空が白く裂ける。


キムンの視線が、わずかに逸れる。


その一瞬。


山形ロボ、下半身を飛行形態へ。


推力全開。


一気に肉薄。


キムンの拳が振り下ろされる。


片目、破壊。


右側のモニターがブラックアウト。


だが同時に、

山形ロボの右手が、ペンチのように閉じる。


コクピットブロックを、えぐり取る。


金属が裂ける音。


キムン、沈黙。


局所位相固定、解除。


世界が、わずかに軋み、秩序が戻る。


---


コクピットブロック。


浮雲は携帯していたヒヒイロカネ製の刀の柄で、ハッチ緊急解放用スイッチの蓋をこじ開ける。


開放。


北海道警備班が到着。


山形応援班も合流。


コクピットの中。

計器やブラウン管のモニターに囲まれ、

パイロットは、穏やかな顔で座っていた。


だが。


肉体は変質している。


皮膚の一部が半透明化。

神経線維が霊子配線のように浮き出る。


局所位相固定の反動。


因果の歪みは、必ず人間に返る。


熱として。

神経負荷として。

記憶の欠落として。

時間感覚の歪みとして。


そして最後に。


“生き方”として。


制限時間を超えて世界へ干渉し続ければ、


それは、もはや神。


神の内部に“人間の姿”は不要。


効率のために再構築される。


部品へ。


パイロットだったものが、微かに目を開く。


浮雲を見る。


「あの……女の子は……」


浮雲は北海道警備班へ振り向く。


全員無言で首を横に振る。


浮雲は嘘をつく。


「君が守った。無事だ」


パイロットは、安心したように微笑み、


沈黙。


---


戦闘結果。


キムン、中破。


パイロット、死亡。


民間人犠牲者、一名。


夜風が、冷たい。


遠くで、結界がわずかに揺れた。


浮雲は空を見上げない。


ただ、静かに目を閉じた。


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