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超板金 山形ロボ ―ロボットがランドマークになった街で、怪異が目を覚ます―  作者: bobson3b


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109/200

108 2026年5月12日(火)_03 はたらく邪神さま!

千葉駅前のスターバックス。

ガラス越しに夕陽。

帰宅ラッシュの人波が、赤く滲む。


店内はほどよく混雑。

キーボードの打鍵音。

笑い声。

エスプレッソマシンの蒸気が、短く鳴る。


坂口は、レコーダーをテーブルに置いた。

画面は静かに点灯している。


向かいに座るのは、

元VTuber「混沌める(まじか・める)」――真鹿める。


化粧は薄い。

声は落ち着いている。

どこにでもいそうな二十代。


だが、目だけが強い。


強すぎる。


坂口が切り出す。


「まず確認です。契約解除の理由は?」


めるは、小さく息を吐いた。


「“機密情報の漏洩”だそうです」


苦笑。


「でも、本当の理由は分かってます。 政府からの圧力です」


坂口は表情を崩さない。


「根拠は?」


めるはカップを両手で包む。


「私が配信で“会議室”に触れた翌週です。 事務所に監査が入りました。 スポンサーが三社、同時に降りました」


視線は逸らさない。


「偶然って言われましたけど」


坂口の指がわずかに止まる。


「気象現象が発生した、という話も?」


めるは笑う。


「急な突風。 局地的な雷。 視聴者が“画面が歪んだ”って騒ぐ」


肩をすくめる。


「でも、そんなの偶然じゃないですか?」


言葉と、目が一致していない。


坂口は、静かに問う。


「あなたは、それを偶然だと思っていますか?」


一瞬。


ほんの一瞬だけ、

めるの視線が揺れる。


「……思いたいです」


その間。


店内の照明が、わずかに瞬いた。


誰も気づかない。


坂口だけが、ほんの一瞬だけ、

録音波形のモニターに目を落とす。


ノイズ。


一瞬だけ。


「“会議室”とは?」


めるは、言葉を選ぶ。


「意思決定の場所です。 戦争も、経済も、災害も、世界を牛耳ってる」


少し身を乗り出す。


「山形の“箱”をご存じですよね?」


坂口の鼓動が強くなる。


「……県立中央病院裏の箱型オブジェのことですか」


めるは、ゆっくり頷く。


「年配の方は、“山形ロボ”って呼ぶらしいですね。 あの箱が動いてから」


声が、ほんの少しだけ滑らかになる。


「異常気象。 行方不明。 原因不明の事故」


店内では、学生が笑っている。


現実は、変わらない。


坂口は冷静に返す。


「それはどのデータに基づいていますか?」


めるは、一瞬だけ詰まる。


「データは……消されます」


すぐに言い直す。


「でも、配信中に“波形”が出るんです。 コメント欄のログ。 同時刻の気象アラート。 音割れ。 映像歪み」


坂口はメモを取りながら言う。


「偶然の積み重ねでは?」


めるは、静かに首を振る。


「偶然なら、毎回同じ単語で起きません」


一拍。


「“会議室”に触れた瞬間だけなんです」


坂口の中で、線が引かれる。


国家的圧力。

契約解除。

超常プロジェクト。

山形の箱。


繋がる。


繋げたくなる。


「あなたは、国家に狙われたと思っていますか?」


沈黙。


めるは、まっすぐ見つめる。


「思いたくはないです」


その目は、弱くない。


「でも、私は嘘はついていません」


坂口は、カップを持ち上げる。


(彼女は被害者か?

それとも、巻き込まれただけか?)


めるが、ふと微笑む。


「坂口さん。記者ですよね」


「ええ」


「なら、調べてください」


その声は柔らかい。


だが。


どこか、確信している。


「私は、消される前に、 少しでも残したいだけなんです」


外で風が強くなる。


ガラスが、微かに震える。


坂口は、レコーダーを止める。


「……分かりました」


その瞬間。


録音データの波形が、 ほんの一瞬だけ、 人の声に似た形を描く。


再生しても、 聞こえない。


遠く。


地球を包む薄い膜が、 ごくわずかに、 さざ波を立てた。


---


取材後、坂口は通話履歴をたどった。


田中に連絡をするために。

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