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第5話 会津に着いた際のジャンヌ・ダヴ―の想い

 ジャンヌの想いです。


 尚、ジャンヌは此れまで過ごしてきた人生の中で、初めて会津の地を訪れていました。

「此処が夫の野村雄の本来の故郷の会津なの」

 会津若松駅の改札口を抜けて更に駅舎から出て、周囲を見回した瞬間、それ以上の言葉が、私にはどうにも出ない事態が引き起こされていた。


 勿論、今は21世紀であり、私の夫の野村雄が故郷を捨てるのを決めた頃、第一次世界大戦が終結した1918年頃からすれば、約100年もの時が流れてはいる。

 だが、私が調べた限り、又、土方鈴の話を聞く限り、故郷の会津の山河の景色は大きく変わってはいない筈なのだ。


 私は自分の故郷のマルセイユに、正直に言って良い想い出が無い。

 何しろ私の両親も兄弟姉妹もほぼ早世しており、唯一生き残った長兄でさえ、第一次世界大戦のマルヌの戦いで戦死してしまったのだ。


 そんなことから捨て鉢になって、更に生活に困窮していたのもあるが、私はマルセイユで街娼になって2年程を過ごすことになったのだ。


 街娼と言うが、現実のところは、その当時のマルセイユの闇の世界を仕切っていたユニオン・コルスの企業舎弟といえた街娼組織の一員になって、私は生活していたのだ。


 そして、私はその美貌と体型から、更には少しでも稼ごうと努力した結果として、1年程で「マルセイユのサキュバス、ジャンヌ」の異名を持つようになり、街娼組織のトップエースといえる存在になった。

 その結果として、後に「ユニオン・コルスの首領の中の首領」と謳われたレイモン・コティの童貞を私が奪う事態等が起きたのだ。


 だが、野村雄との出会いが、私を変えてしまった。

 街娼を辞めて、こんな闇の世界から抜けて、野村雄と暮らしたい、と私は考えるようになった。

 そして、野村雄は私に協力してくれて、私の足抜けを手伝ってくれたのだ。


 その結果、私の足抜け自体は上手く行ったのだが、その代償として野村雄は戦死したのだ。

(と今の私は考えている。

 実際には違うのでは、という考えが、私の頭の中で浮かばない訳では無いのだが。

 そうは言っても、私の心の中の色々なことからそう考えないと、私の気持ちが収まらないのだ)


 でも、奇跡が起きて、彼が戦死しなかったら、そう私が考えていたら、あの異世界に私は赴けたのだ。

 彼が第一次世界大戦で戦死せずに長命出来た、あの異世界に。


 最もこの辺りは岸澪ではなかった、岸忠子の自爆があの世界では大きかったのは否定できない。

 岸忠子は、21世紀の人権感覚を振りかざして、刑務所上等とあの世界で暴れ回ったのだから。

 

 あの当時の常識人だった彼にすれば、忠子との結婚生活等、妻に振り回される地獄にしか考えられず、私との駆け落ちを決断する事態になったのだ。


 だが、それは彼に日本を、故郷の会津を捨てさせることでもあった。

 更には、私以外の女性3人に結果的に産ませた3人の子を、養育費を払ったとはいえ、あの当時の日仏の距離等の問題から、捨て去ることにもなったのだ。


 そうしたことから、彼は私以外の女性に産ませた3人の子に対する気兼ねもあって、生涯、故郷の会津どころか、本来の祖国日本の土を踏むことさえなかった。


 私が気兼ねの余りに、

「日本に、故郷の会津を訪ねても良いのでは」

とそれとなく言っても。


 彼は、

「僕の今の祖国はフランスだ」

と意固地になって言う有様だった。


 実際に彼は、祖国フランスの為に尽くし続けた。

 第二次世界大戦で、フランスいや連合国軍最高の名将とまでの名声を博し、更には仏印やアルジェリア等、フランスの植民地の損切りをレイモン・コティと協力して進めて、1970年代に米日に次ぐ世界第3位の大国に仏を止めることに成功したのだ。


 本当に私と彼が結ばれたことが、あの異世界のフランスを救ったのではないか。

 そんな考えが、私には浮かんでならないことだった。

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 ジャンヌさんの回想やこれまでの外伝で垣間見える「彼」が前世20世紀世界で成し遂げた日本人らしからぬ偉業が本編を読んでいない読者にはベラボーに感じられちゃう(・Д・)しかしこんぐらいの外れ値な「彼」だ…
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