第19話 夫の旧居を訪ねて、そして、会津からの旅立ち
結局、土方鈴もジャンヌ・ダヴ―も、色々と微睡みながら考えてしまったのもあるが、結果的に熟睡できないまま、朝を迎えることになった。
その為に、朝風呂に入って、少しでも身体を癒した上で、朝食を食べることに二人はなった。
そして、午前8時過ぎに旅館でのチェックアウト、精算手続を済ませて、二人は出立した。
二人が泊まった宿から、二人の夫である野村雄の旧居があった場所は、歩いて10分余りの処だった。
序でに言えば、その場所から会津若松駅まで歩いて10分余りの処でもある、
この世界では軍人になっている二人にしてみれば、丁度いい朝の散歩といってよい道程だった。
「ここが会津の街並み」
ジャンヌは、それ以上は口に出さずに、周囲を見回しながら、鈴と共に歩んだ。
本当は、それ以上のことが、心の中では思い浮かび、口に出したかったが。
想いが溢れすぎて、言葉に上手くならなかった。
又、下手に口を開くと、鈴の逆鱗に触れそうな気もしていた。
鈴も、想わず無言のままで歩まざるを得なかった。
異世界に赴いたときは、野村家の旧居は、私が亡くなるときまで健在で、野村雄の父から兄へ、更には甥へと受け継がれていた。
尚、細かいことを言えば、テセウスの船ではないが、野村家の旧居は、長い歳月の間に改修を繰り返しており、私が最初に、文字通りに幼児の頃に訪れたときと、私が亡くなる前に訪れたときでは、特に内装については、完全に異なる代物になっていた。
だが、この世界は、私がしくじった最初の人生の続きの世界なのだ。
だから、野村家の旧居は跡形もない筈で、この世界ではどうなっているのだろうか。
昨今のことだから、ストリートビュー等で、私は事前に見ることができたかもしれないが。
どうにも躊躇ってしまい、結局、見ることが出来なかった。
そして、地図を全く持っていないのに、私は自然と思い出して、異世界の夫、野村家の旧居への路を迷うことなく、ジャンヌと共に歩んで向かっている。
異世界では妻だったジャンヌを、夫の旧居に案内している、と言えることで。
鈴は、そのことからも、色々と想いや考えが溢れて、沈黙するしか無かった。
そして、二人が野村家の旧居の跡地に着いた際だが。
「更地になっているなんて」
「しかも売地で」
二人は、それだけを口に出して、暫く物思いに耽った。
鈴は想った。
この土地を買いたい。
土方伯爵家の資産からすれば、容易に買える筈だ。
そして、前世でのしくじりを消して、「彼」と夫婦生活を営みたい。
ジャンヌも想った。
ダヴ―家の資産で、この土地を買おう。
そして、「彼」と新たな夫婦生活を、この地から始めたいモノだ。
野村家の旧居の跡地が更地になり、更に売地になっていることが、二人に暴走した想いを抱かせることになっていた。
更地の売地ということから、二人共にこの地を買って、新たな夫婦生活を「彼」とこの地から始めたいという想い、暴走した想いを抱かせてしまったのだ。
そして、お互いに自分の想いを覚られたくない、と考えたことから、それ以上のことを口に出さないまま、暫くの時を過ごした後で。
ジャンヌが、
「会津若松駅に向かいましょう」
と口に出すことになり。
鈴も、
「そうね。会津若松駅から横須賀に向かいましょう」
と答えることになって。
二人は、会津若松駅に向かうことになり、更に横須賀へと列車の旅をすることになった。
(尚、少なからず先走った話をすれば。
二人が土方伯爵家、ダヴ―家にそれぞれ働き掛けたことから。
更に土方伯爵家とダヴ―家は内々に話し合った末、野村家の旧居の跡地を共同で購入して、鈴とジャンヌの共有名義にする事態が起きた。
鈴もジャンヌも色々と想ったが、親には逆らえなかった)
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