↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/22

第18話 二人で宿の一夜を過ごして―4

 お互いにそんな風に考え込んでいると、それなりに時間が経ってしまう。

 更に言えば、それこそお互いに自分の考えが正しいのか、どうにも確かめようがないことでもあり、下手をすると無限に考えざるを得ないことでもある。


 そんなことから、まずはジャンヌ・ダヴ―が我に返って、土方鈴に声を掛けた。

「そろそろ風呂から、私は出ます。ちょっとのぼせました」

 実際に考え事をしたことから、結果的に長湯したこともあって、ジャンヌはのぼせていた。


 ジャンヌの声で、鈴も我に返って、風呂場に設置されている大時計を改めてみると、既に午後11時半を過ぎている有様だった。

「私ものぼせてしまったわ。風呂から私も出るわ」

 鈴は、そう言い訳をして、ジャンヌと共に風呂から出ることにした。


 急いで髪を乾かし、身体を拭いて、鈴とジャンヌは共に部屋に戻った。


 そして、既に完全に夜が更けていることもあり、小声で少し話をした後、共に就寝した。

 その話の内容だが。


「明日だけど、どうする。本音を言えば、今日の午後に見学に行く予定だった鶴ヶ城等を、改めて訪ねるべきなのでしょうけれど」

 鈴は、其処まで言った後で、口ごもる事態が起きた。


 何事も無ければ、少し早めの昼食を会津若松駅近くで食べた後、海兵隊の駐屯地がある横須賀に共に向かっても時間的には大丈夫な筈だが。

 行きがけに起きた事態が事態である。


 鈴もジャンヌも共に、帰りがけにジャンヌが盗撮や猥褻といった被害に遭い、鈴がそれに対処せざるを得なくなり、結果的に帰営時刻に遅れることを懸念せざるを得なかった。


 勿論、事情が事情なので、上官や周囲の面々等も非難できない筈だが、そうは言っても、行きがけに起きた事態から、帰りがけにも同様の事態が起きる、と何故に二人共に予測できなかったのだ、と裏から言われて当然の事態になる。


「鈴さえ良ければ、私は野村家の旧居の跡を訪ねた後、速やかに会津を立ちたいと考えますが」

「それで良いの。此処まで来ておいて」

 鈴の問いかけにジャンヌは即答し、鈴は戸惑うようなことを言った。


「ええ。それだけで私は充分です」

 ジャンヌは、そう言いながら、改めて考えた。


 夫の雄が何処で生まれ育ったのか、それだけは何としても私は確認したい。

 何しろ夫の故郷を、やっと訪ねることができたのだ。

 勿論、鈴の話からすれば、夫の旧居は影も形もないのは間違いない。

 だが、それでも、私はこの際に夫が生まれ育った場所を確認したい。


「でも、何も無いと言っても過言では無いわよ。野村家が土地建物を売却した後、新しく買った人が新しい建物を建てたし。更に言えば、その後にも取り壊しや新居建築があったのだから」

と鈴はジャンヌは、諫めるような口調で言ったが。


 その一方で、ジャンヌなりの夫への愛を、自分も感じてならなかった。

 もし、自分がジャンヌの立場ならば、私も同様のことを言うだろう。

 最愛の夫が生まれ育った場所を、かつての面影が皆無でも、改めて確認したい。

 

 其処まで考えた後、鈴も結局はジャンヌと同じ考え、と言われても当然なのを感じてしまった。

 そして、ジャンヌが其処まで言うのならば。


「それなら、朝食を済ませ次第、夫の旧居を訪ねて、その足で会津若松駅へ向かい、更に横須賀に還ることにしましょう」

「そうですね」

 鈴とジャンヌは、そうやり取りをした上で、共に布団に潜り込んだ。


 ジャンヌは、微睡みながら想った。

 鈴は野村家の旧居を、夫の旧居と言った。

 鈴は、絶対に野村雄の生まれ変わりの「彼」と再び結ばれるつもりなのだ。

 でも、私は負けない。

 絶対に鈴に勝って、「彼」と結婚するのだ。


 鈴も微睡みながら想っていた。

 この世界でも、「彼」と結婚して、私は幸せになるのだ。

 御感想等をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「帰り着くまでが遠足です」などと修学旅行や社会科見学等で集団行動を学ばされている日本人なら『行きにあった事は帰りにもあり得る』とチンカスどもによる無意味な遅延行為を帰りの旅程に勘定しておくのは当然にし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。