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第11話 桜鍋を共に食べながら、同じ夫、男性と妻二人の馬肉料理の想い出話―3

 そんな土方鈴の回想を聞いて、ジャンヌ・ダヴ―は自分なりに、鈴の赴いた異世界における野村雄の想い、考え、得に馬肉料理を好むようになった事情について憶測し、又、考え込まざるを得なかった。


 鈴は、考え込んでしまったジャンヌの様子を見て、改めて、ジャンヌの赴いた異世界では、何故に野村雄が馬肉料理を好むようになったのか、詳細を知りたいと考えた。

 

 ジャンヌが、此れまでに自分に話した内容からすれば、ジャンヌはある程度は誤魔化して言っているようだが、野村雄は第一次世界大戦が終わって、ジャンヌと暮らすようになってから、すぐの頃から馬肉料理に親しむようになったようだ。

 何故に、ジャンヌが赴いた異世界では、野村雄は馬肉料理を好むようになったのだろうか。


 そう考えた鈴は、ジャンヌに改めて問いかけた。

「貴方が赴いた異世界では、何時頃から彼は馬肉料理を好むようになったの」

「今の私の記憶が正しければ、日本海兵隊を除隊して、フランス外人部隊に転職してからですね。そして、私と駆け落ちしてから、とも言えます」

 ジャンヌは即答した。


「まあ、岸澪のやらかしが大きいとはいえ、彼もよくそんなことをしたわね」

 その答えを聞いた鈴は呆れの入った声で言った。


「あの世界の私への真実の愛に、彼が目覚めてくれたから、私と駆け落ちしたのです」

「裏返せば、それで、彼は日本に居た3人の子どもを捨て去って、貴方の下に行ったのよね」

 それを聞いたジャンヌの言葉に、更に鈴は痛烈な皮肉で返した。


 その言葉に、流石にジャンヌも暫く沈黙するしか無かった。

 ジャンヌが赴いた異世界には、彼の相手、岸澪や村山愛も共に赴いていたのだ。

(度々、描いているが、土方鈴だけが、別の異世界、彼が陸軍士官になった異世界に赴いていた)


 そして、岸澪が暴走して、あの世界では完全に違法行為の政治活動に奔走して、刑務所上等と行動したことから、彼はあの世界の正妻での正妻の岸澪ではなかった(前世では)岸忠子に愛想を尽かし、離婚を決断して、ジャンヌと駆け落ちしたのだが。


 それは彼が日本に残していた3人の子を捨て去る行動でもあったのだ。

 

 勿論、彼なりに3人の子に気を遣って、成人するまで養育料を支払い続けたが。

 自分達が物心つく前に、出征先のフランスで街娼と駆け落ちして、日本人の正妻を捨て去っては。

 更に、その街娼と結婚したことから、フランス人にまで実父がなって、更に駆け落ち相手と子どもを12人も作っては。


 自分の実母や自分は、父にとって、そんな街娼やそんな女が産んだ子ども以下の存在なのか。

 と日本に残された3人の子が、父を赦せないと考えるのも当然だった。


 そして、彼なりに、日本に遺した3人の子が自分に向ける怒りを察していたのだろう。


 だから、彼は敢えて本来の故郷である会津の地どころか、日本に赴こうとはしなかった。

 日本に居る子ども達が、自分を赦さない以上、日本に還れないと思い定めたのだろう。


 とはいえ、彼とて故郷の会津が、又、本来の祖国の日本が恋しくない訳が無い。

 そうしたことから、彼は馬肉を食べることで、日本というか、会津を偲んだのではないか。


 更には会津で、又、フランスで、馬肉料理が普及したのが、共に戦争が発端であることを知るようになって、尚更に馬肉料理を食べることで、戦争のことを様々に彼は考えるようになったのではないか。


 ジャンヌは自分なりに考えたことを鈴に語らざるを得なかった。


 それを聞いた鈴も自分なりに考えざるを得なかった。


 確かにジャンヌの考え、憶測は正鵠を射ている気が、自分もしてならない。


 それにしても、私の異世界でも、ジャンヌの異世界でも、彼は共に戦争から馬肉を好むようになったのか。

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 同じ戦禍の流れとは言え、会津とフランスの馬肉食文化は──貧しさから選択肢が無かった──ドライなお話なのに対して「彼」のそれは──死に別れ生き別れの違いはあれど失った子との繋がりを思い出させる──情念…
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