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第10話 桜鍋を共に食べながら、同じ夫、男性と妻二人の馬肉料理の想い出話―2

 ジャンヌ・ダヴ―は、土方鈴から直に、異世界では野村雄と鈴の間に3人しか子どもがいなかった事情を聞いて、想わぬ衝撃を受けていた。

 

 まさか、そんな事情から3人しか子どもを作らなかったとは、とジャンヌは考える一方。

 野村雄らしい、ともジャンヌは考えた。

 私が赴いた異世界でも、野村雄は私のことを常に気遣ってくれた。

 本当に愛妻家としか、言いようが無かった。

 そうしたことからすれば、鈴と結婚した異世界では、子どもを産んでも、又、子どもを失うかも、と心配する鈴を気遣って子どもを結果的に3人しか作らなかったのも、ある意味では当然のことだ。


 そんなことをジャンヌが考えていると、鈴は反撃の言葉をジャンヌに浴びせた。

「ところで、貴方が異世界で12人も子どもを産んだのは、彼が貴方の浮気を心配したからでは?」

「失礼ですね、彼と結ばれた後、私は浮気は一切、していません」

 ジャンヌは即答した。


「ええ?

 ここに来るまでに、男を誘う街娼のような挙動を無意識のうちにして、一日に5件も事件を起こしたのは、何処の何方かしら」

 鈴は、皮肉を込めた言葉をジャンヌに更に浴びせ、ジャンヌは答えに詰まらざるを得ず。

 ジャンヌなりに、鈴の皮肉について考えざるを得なかった。


 ジャンヌは考えた。

 確かに彼が私との間の子を12人もつくった事情の一つではないか、と言われれば否定できない気が。

 度重なる出産や育児の為に、40歳過ぎまで私は半ば家に引き籠った生活をせざるを得なかった。


 それこそ妊娠した身で、又、乳飲み子が家にいる身では家から度々出歩く等、極めて困難だ。

 買い物とかは、雄が通勤の行き帰りにするのが、ほぼ当然だった。

 40歳近くになって産んだ末っ子が小学生になった頃から、私はようやく家からそれなりに出歩けるようにはなったが。

 

 その頃の私は40歳過ぎだ。

 さしもの私も若かりし頃の美貌と色気は、年齢と度重なる出産から衰えていて。

 同年代の平均的な女性には勝っている自信が、その頃でも私にはあったが、最早、街中を出歩くだけで男が声を掛けてくるような存在では無くなっていた。


 そうしたことからすれば、鈴の憶測は案外当たっているかもしれない。

 夫、野村雄は私の浮気を心配したのもあって、私との間の子作りに励んだのかも。


 そんなことをジャンヌが考えている内に、鈴は改めて話を戻した。

「ともかく彼が、馬肉を好んで食べるようになったのは、第二次世界大戦後だったわ。

 馬肉を食べることで、戦争絡みの様々なことを考えていたようだった。


 彼は第二次世界大戦勃発時には満洲に駐屯していて、そこからソ連領へ、更には中国本土へと転戦して戦い続け、成都等の占領を果たすという武勲を挙げたわ。

 そして、陸軍大学校を卒業した際、「恩賜の軍刀組」の一人でもあったから、何事も無ければ、悪くても営門大将、恐らくは陸軍三顕職を務めた上で停年と考えられていたけど。


 第二次世界大戦で子どもを二人共に失って、更には中国大陸での戦禍を見続けたことから、本当に色々な意味で軍人という仕事が嫌になり、戦争について、色々と想うようになっていたのでしょうね。


 何しろ、共産中国の暴政と第二次世界大戦の戦禍で、中国本土の過半数を超える人口が、(この世界の)史実とほぼ同様に、あの異世界でも失われたのよ。

 それを現場で己が眼で見続けたなら、頭が良すぎる人程、却って悩んでしまう、と私は考えるわ」


 鈴の長い語りを聞いて、ジャンヌは改めて想い考えた。


 確かに鈴が言う理由から、彼は鈴と結ばれた世界では、馬肉を食べて、様々な戦争でのことを想い起こし、色々と考えるようになったのだろう。

 実際にそんな地獄を見聞きしては、彼が思い悩むのも当然だ。

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