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第8話 ジャンヌの馬肉料理に対する様々な想い、回想―2

 この辺り、私、ジャンヌ・ダヴ―自身も、自分の記憶の精確さについては自信が無いが。

 

 フランスで馬肉を食べるようになった、と言っても、その馬肉を食べるために馬を飼育するようなことは無かった。

 そう言った点で牛や豚、鶏等とは違う取り扱いだった。

 牛や豚、鶏の場合、肉を食べるために飼育して、それが食肉に提供されることになるが、馬の場合は輓馬等で使われた馬が年老いて、そういった労役に耐えられなくなったとき、食肉になるのが通例だった。


 この辺り、馬を食肉用として飼育するとなると、牛や馬、鶏よりも効率が悪い、という問題があると、私は聞いたことがある。

 そして、年老いた馬を単に屠殺処理するよりも、年老いた馬の肉を食肉にした方が良いのではないか、という意見が強まったことから、そういった老馬の肉が、フランスでは食肉として提供されるようになったのだ。


 その為に肉屋にしても、一般の肉屋では余り馬肉が取り扱われず、馬肉専門の肉屋で馬肉が取り扱われていたように、最初の人生や野村雄と結婚できた異世界での人生の中での私の記憶にはある。


 更に言えば、そういった事情で馬肉が供給されていたことから、輓馬が徐々にトラクター等に置き換えられて行き、荷馬車が自動車になっていったこと等から、馬肉の供給量が減る事態が起きたのだ。


(この辺りだが、フランスは歴史的にも農業大国と言える存在で、馬を大量に飼育、使用してきたという背景もあるのだが。

 20世紀に入っての自動車の普及や農業の機械化が進捗したことは、馬の飼育、使用を急激に減らす事態を引き起こしたのだ)


 少なからず話、考えが先走ったので、昔に考えを戻すと、1871年に終結した普仏戦争が転機となって、フランス国内では馬肉食が急速に普及することになったのだ。

 普仏戦争の戦禍は、フランス国内の食肉の供給量を減少させ、又、食肉の価格高騰を招いた。


 それに対処するために、老馬が屠殺されて、食肉に加工されて、フランスの国内市場に徐々に出回るようになり、フランス国内で馬肉を食べる人が増えていくことになったのだ。


 私の記憶に間違いなければ、1900年から1960年頃が、フランス国内で馬肉が良く食べられた時代と言えた。

 そう30年近く掛けて、フランス国内では馬肉食が広まったのだ。

 そして、その後の60年程は安価な食肉として、馬肉はフランス国内各地で好まれた。


 だが、1950年代以降、自動車の普及で荷馬車が激減し、又、農業の機械化で輓馬が減ったことから、馬肉の供給量が減少することになり、馬肉は高級化することになり、消費量も減少したのだ。

 そして、今ではフランス国内でも、余り馬肉は食べられなくなっている。


 そこまで考えを進めた私は、土方鈴に先程の嘘話のお返しをすることにした。

「確かに会津の馬肉食に、フランスの馬肉食が影響を与えた可能性は否定できませんね。

 そう言えば、私の最初の人生での長兄はフランス軍の下士官で、第一次世界大戦のマルヌの戦いで戦死したのですが」

 

 私は、わざと言葉に其処で詰まって、暫く躊躇った(ように振る舞った)後で言った。

「戦死する前に長兄は、私に言いました。

 普仏戦争以降、ずっとフランス軍の糧食の肉は馬肉だ。

 普仏戦争を筆頭とする歴史的な独に対する屈辱等を絶対に忘れるな、ということで、馬肉を食べていると。

 そして、フランス軍の馬肉食をきっかけに国内では馬肉料理が広まったのだ、と。

 それこそ古代中国の臥薪嘗胆の故事を思い起こさせる話ですね」

「そんなことが、かつてはあったの」

 鈴は絶句した。


「前半は本当ですが、後半は私の大嘘、さっきのお返しです」

「本当の話と想った」

 二人はそんなやり取りをした。

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― 新着の感想 ―
 ホント仲良しさんだなぁこのふたり♪(ᵔᗜᵔ*)前話での巧妙な馬肉ウソ話の流れから──お返ししてやる──と助走をつけてからの作り話だったから読者も『やられた!』とはならなかったけど、ネットにジャンヌ説…
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