番外編2 大崎と目黒はこうして仲良くなった
二部の男子たち。
「ありがとう大崎」
「おまえと知り合えてよかったぜ」
「感謝したまえよ、二人とも」
この会話をしているのは、男子バレー部一年の三人である。
何があったかと言うと、一年生の間で有名な二組の雪真冬を、紹介してもらえることになったのだ。彼女が有名なのは、簡単に言うとものすっごい美少女だからである。
「二組行ったとき、ちらっと見たけどかわいかったなあ」
「大崎が水津ちゃんに頼んでたおかげだな」
大崎が女子バレー部員で真冬の友人である水津湊に、前から紹介してほしいと頼んでいた。それが実現することになったのだ。そして「他の友達も来るから人数集めておいて」ということで部活仲間の田町と田端が誘われた。
「他に誰かくんの?」
「俺の小学校からの友達が来る。田端知ってるだろ、目黒ケン」
田端は三組、目黒と同じクラスだ。顔くらいは知っている。
「知ってるけど、目黒? 大崎知り合いかよ。意外だな」
「どんなヤツ?」
田町は大崎と同じ一組だ。知らない名前である。
「眼鏡でパソコン部」
同じクラスの田端の認識はこんなものだ。
「ふーん」
それを聞いた田町の反応。
「二人ともケンに興味無さすぎ」
それはそうだ。可愛い女の子を紹介してもらえるのに比べたら、男友達の男友達なんてどうでもいい。女子が一目惚れしそうなイケメンは困るが、そうではなさそうだし。
「ケンすごいんだぞ。小学校の仲間で一番ス●ブラ上手かったし」
「おまえら今高校生だろ」
「プログラミングとか詳しい」
「へー」
眼鏡のパソコン部が、ゲーム得意でもプログラミングに詳しくても、意外なことではない。
どうも大崎は目黒のことを、田町と田端に認めさせたいらしい。だったら、もう少しマシなエピソードはないのか。
「ケンすごいイイヤツなんだって」
「大崎なんで目黒推してんだよ。命でも助けられた?」
「命じゃないけど、それに近いことはあった」
「ガチで? 何があったんだよ」
田端の方は、少し興味が出てきたようだ。小柄眼鏡パソコン部の目黒が、高身長バレー部の大崎を助けたとは何があったのか。
「あれは、俺が小五の頃だった……」
「語り出したぞ」
「アホな話になる気がする」
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大崎壮太は、両親と姉の四人暮らしである。よくあるファミリー向けのマンションに住んでいる。両親は共働き会社員で、近所に住んでいる祖母が壮太と姉の世話をしにきていた。そのため、壮太が自宅で一人になることは滅多になかった。
その滅多にない日がやってきたときのことだ。祖母が、お世話になった人が亡くなったのでお通夜に行くという。
祖母は、中学生の姉が帰宅するまで一人になる壮太を心配していた。壮太は「もう五年生なんだから大丈夫、姉ちゃんが帰るまで一人でいられる」と言って、送り出した。
いつもの自宅であるが、一人で留守番することにワクワクしていた。リビングの大きいテレビでゲームをやろうか。コーラにポテチでも食べながら。
そう考えてキッチンからコーラとポテチをとってくる。途中で違うものが目に入った。家族共用のパソコンである。
パソコンでも遊べるゲームがあるらしい。ゲームじゃなくても、インターネットにはなんか面白いものがたくさんあるらしい。じゃあ、今日はパソコンをやろう。
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「長い。目黒いつ出てくるんだよ」
「巻きで。とりあえず大崎ピンチまで話すすめろ」
大崎の語りを、一応真面目に聞いていた二人の意見が一致した。
「わかったよ。えーとその日の俺は……」
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壮太も男の子である。小五ともなれば、えっちなことにも興味がある。インターネットでは、無料でそういうものが見られるらしい。
そんな訳で、小五の語彙で思いつく範囲の『そういう言葉』を検索してみた。
ドキドキしながら、そういうコンテンツを見る壮太少年。最初のうちはよかったのだが……。
パソコンが壊れた。具体的には動かなくなった。マウス動かしてもカーソル動かないし、キーボード叩いても反応がない。ピンチである。
家族共用パソコンを壊した。自分がエロサイト見て。どう考えても怒られる。ついでに姉ちゃんからは、これをネタにいじられまくるに決まっている。
どうしようかとあせっていると、玄関のインターホンが鳴った。誰か帰ってきた? いや、家族なら鍵を持っている。宅配便の人だろうか。それなら受け取っておかないと。
恐る恐る、壮太がインターホンの映像を見る。そこにいたのは、友達のひとりである目黒ケンだ。
ケンは、ゲームが上手い。そしてパソコンも詳しい。
「ケン! 助けて!!」
ドアを開けるなり、壮太が言った。言われたケンの方は、訳がわからない。
「パソコン壊れた!」
ちょっとわかった。そしてリビングで実際のパソコンを見て、あきれながら対応したのだった。
「ケンすごい! どうやったんだ?」
「強制終了させて再起動しただけ」
「ふーん?」
よくわからないが、壮太が想像した『最悪の事態』は避けられた。パソコンは壊れていなかった。
「家族のパソコンでエロサイト見るなよ。……履歴も消しといたから。せめてプライベートモード使え」
「わかった。ありがとう!!」
実はあんまりわかってない。プライベートモードってなんだろう。
「そういえばケン、なんでウチ来たの」
「これ、お母さんがおばさんに返しに行けって」
大崎家で使っている大きめのお皿である。祖母の作り過ぎた料理を、何日か前におすそわけしていたっけ。ご近所付き合いだ。
「とにかくケンありがとう。えーとお礼お礼……」
お礼には、壮太が食べる予定だったポテチとコーラをあげた。まあ、壮太もいっしょに食べたのだが。
そのあと、いっしょにス●ブラをやってからケンは帰って行った。
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「アホ崎」
「エロ崎」
「田田ひどい」
田田というのは、田町と田端をまとめて呼ぶときの名称だ。いつの間にかバレー部の中で定着した。
「目黒は迷惑かけられただけじゃん」
「……まあ、そうだけど。ちゃんとお礼したし、感謝の気持ちも忘れてないから!」
そこそこ長い話だったが、まとめると
留守番に浮かれた大崎少年がエロサイト見てパソコンフリーズ、偶然やってきた目黒にしりぬぐいしてもらう、だ。
「このアホにつきあってやる目黒はイイヤツなのかもな」
「そうだな、目黒がイイヤツなのはわかったよ」
代わりに大崎の印象は、だいぶアホ寄りになったが。
「……そんなに言うなら、雪さんの紹介は他のやつ誘う」
大崎は、現在使える中で最強の手札をだした。
「それはなし! 今の発言なし!」
「大崎くんカッコいい! 素敵! だから連れてって!」
その光景をながめる、隣のコートで練習している女子バレー部員たち。そこには、水津湊もいた。
会話は聞こえないが、大崎と田田であることから想像がつく。
「真冬に会えるから、浮かれてるんだろうなあ」
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余談。
カラオケで雪真冬とその友人たちと遊んだ後のことである。同じクラスということもあり、田端は目黒と話すようになった。
「目黒なんで大崎と仲いいんだ? 小学校からずっとって」
「壮太はアホだけど、いいやつだから。アホだけど」
二回言った。アホって二回も言った。
「それ大崎に言ったら喜ぶんじゃね」
もちろん、いいやつの方である。
「一回言ったらウザかったから、二度と言わない」
全国の大崎さんごめんなさい。本編ではこんなアホではないです。




