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悪役令嬢の中身の侍はシナリオを斬る  作者: あらたまのみこと


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8/19

第六話:侍は同じ日ノ本の人間に出会う

※江戸見廻組は作者の作った架空の組織です。

夏季休暇を終えて王都へ戻った俺は、再び学園で『公爵令嬢アンジェリカ』を演じる日々へと復帰した。


目的は、アンジェリカ殿に対する生徒たちの悪意の動向を観察し、可能であれば検証を行うことだ。 お茶会で王妃が正気に戻ったように、気迫(殺気)を当てるのか、それとも圧倒的な脅威を植え付けることが鍵なのか。再現可能な『呪いの解除法』を探る必要があった。


取り巻きの令嬢たちには、生徒間の噂や悪意の集積を報告するよう指示を出した。

褒美は何が良いかと尋ねると、「アンジェリカ様の剣術稽古の見学」と言うので承諾したのだが……果たしてそれが褒美になるのだろうか? だがマリー曰く、それだけで彼女たちの忠誠心とやる気が飛躍的に上がるのだという。女心というのは未だによく分からん。


新学期の授業が進み、アンジェリカ殿の優秀さが表に出るにつれ、周囲から漂う悪意の量が増していくのを肌で感じた。 勉強のできる高位貴族の優秀者であっても、アンジェリカ殿の知識には及ばない。そして彼らが嫉妬し、悪意を抱くことで、その婚約者や周囲の人間までもが感染するように悪意に染まっていく。

やはり、俺の見立て(完璧さが嫉妬を呼び、呪いで悪意へと反転する)は正しかったのだと実感する。


「……ふむ。まだまだ、俺の感働きも捨てたものではないな」


誰もいない自室で、ぽつりと独り言を呟く。

こうして市井(実際には貴族学園だが)の動向を観察し、空気の違和感を察知して事件や犯罪の目を未然に摘み取る。……俺は、江戸見廻組としての侍の仕事が性分に合っていたのだなと、改めて思う。

そんなある日、俺に密かに接触を図ってきた令嬢がいた。


離宮のお茶会で、俺にいち早く不作法な難癖をつけて自滅した、あの赤髪の巻き髪の女だ。

ミルレット侯爵家の令嬢で、名をアナスタシアというらしい。従者を介し、「二人だけで話したいことがある」と伝えてきたのだ。


マリーに集めさせた情報を取り出す。


「ミルレット侯爵領は王国の東側に位置し、公爵家との関係は可もなく不可もなくといったところです。良馬の放牧で有名で、畜産関係では王国随一の軍務派閥のトップでございます。また、ご令嬢は王太子妃候補の争いからは一歩引いておられ、最近は新しい料理の開発に熱中されているとか」


「馬は良いな。……しかし、料理をする姫(令嬢)など聞いたことがないぞ」


「ええ、王国でも極めて珍しいですわ。ですが、ご令嬢の開発したレシピはどれも斬新で、大層美味しいと評判なのです」


「ふむ……会ってみるか」


手紙で返書を送り、一週間後、学園の面談室でミルレット侯爵令嬢と対峙することとなった。

面談室は学び舎とは思えぬほど豪奢な作りで、広々とした室内の中央には円卓が置かれ、美しい季節の花が飾られている。 程なくして現れたアナスタシアは、型通りの挨拶を済ませて着席するなり、硬い表情で口を開いた。


「……お人払いをお願いできますかしら」


挨拶もそこそこに切り出してきた言葉に、俺は片眉を上げた。


「聞かれて困るようなお話をされるおつもりで?」


「ええ。お聞きしたいことがあるのだけど、人前ではちょっと……」


さてどうしたものかと考えたが、女子(おなご)一人なれば、何が起きようと手遅れにはならんと判断し、マリーを室外へ退出させた。アナスタシアもお供の侍女を外へ出す。


「して、ご用件とは?」


俺が尋ねると、アナスタシアはなぜかフンッと鼻息を荒くし、自信満々な笑みを浮かべて言い放った。


「あなた! 『転生者』でしょう!?」


……なんと? テンセイシャ、とな? 女神の依頼を受け、アンジェリカ殿の身体に入っているこの状態のことを言っておるのか?


「隠したって無駄よ! 離宮のお茶会で、本来のアンジェリカは罠にかかって失脚するはずだったんだから!」


その言葉を聞いた瞬間、俺の中で冷たい疑念が弾けた。


「――貴様ッ!! あの茶を偽って届けさせた下手人(黒幕)か!!」


鋭い殺気を全身から放ち、俺は木製椅子を蹴倒す勢いで立ち上がると、大音声を響かせた。


「ひっ……!? え、ええ!? ち、違う、違うのッ!!」


男たちの命を奪ってきた本物の武士の殺気を真っ正面から浴び、アナスタシアは顔面を蒼白にして手をぶんぶんと振り、涙目になって悲鳴を上げた。


「ならば何を知っておる!! 吐けッ!!」


「わ、私は『シナリオ』を知ってるだけなのよッ! た、ただ私も転生者で、前世で見たゲームのシナリオ通りに動いてるのを見たから……ッ!」


シナリオ? ゲーム? 聞き覚えのない怪異な単語ばかりだが、自分も『転生者』だという言葉が引っかかった。俺はすっと殺気を抑え、冷徹な視線で尋ねる。


「……お主、日ノ本の者か?」


「ひ、日ノ本……? 日本にほんでしょ!?」


「どこの生まれだ。江戸か、上方(京・大阪)か?」


「え、江戸……? 江戸川区のこと!? 私は神奈川の横浜生まれよ!」


「さっきのシナ……なんとかいうもので知ったとは、どういうことだ」


「だからスマホゲームの『春の聖女と四人の英雄』よ! 超有名じゃない!」


俺は深く眉をひそめた。


「……俺には、お主の言っていることが何一つ分からん」


「お主って……え? ちょっと待って、スマホも知らないの!? 日本の『首相』の名前とか分かる!?」


「なんだ? その『シュショウ』というのは。聞いたこともない」


「えええ!? 日本の国家元首よ!?」


「日ノ本の元首(頂点)は、上様――将軍徳川家茂様に決まっておろう」


「と、徳川ぁ!? ちょっと待って、あなたいつの日本から来たの!?」


「確か、文久二年だったな」


「ぶんきゅう!?って確か…幕末の江戸時代じゃない!!」


「お主……本当に日ノ本の出か?」


「本当よ! 私は『令和』から来たの! 江戸後期から150年くらい未来なのよ!?」


「……は?」


「こっちが『は?』よ!! 道理で話が全然通じないと思ったわよ!!」


先ほどまで俺の殺気を浴びてブルブルと震えていたというのに、会話を交わしている間にあっという間に態勢を立て直してきた。……まっこと妙な女子(おなご)だ。


「……はあ。私の日本での名前は、三枝さえぐさ静香。32歳で食品貿易会社で働いていたわ」


「む、そうか。……俺の名は、榊原直之。よわいは28。幕府直参の旗本であり、江戸見廻組の頭領を務めておった」


「見廻組……ちなみに私の死因は交通事故。トラックに轢かれて死んだみたい。あ、トラックというのは、鉄でできた馬の要らない巨大な荷馬車みたいなものよ」


「鉄の巨大な荷馬車?……俺の死因は、反幕の過激浪人どもを斬り捨てている最中に、背後から新式鉄砲で撃たれた」


「マジで!? リアル幕末の明治維新じゃん……!」


俺は思わず身を乗り出し、鋭い眼光で彼女を射抜いた。


「……待て。聞き捨てならんぞ。『バクマツ』だの、『メイジイシン』とはいったい何だ!?」


俺が詰め寄ると、静香は気まずそうに目を泳がせ、両手を前に出してなだめるように振った。


「あ、えっと……説明が難しいというか、センシティブなお話になるとというか、時間がかかるというか……」


「……もしや、幕府が倒れたのか」


静香の歯切れの悪さとその表情から、俺は悟った。 息を呑む静香に対し、俺は絞り出すような低い声で言葉を継ぐ。


「……上様はご無事なのであろうな」


「……えっと、徳川慶喜様は、大政奉還をして将軍職を天皇陛下にお返しになったの……」


「徳川……慶喜様……」


俺は深く息を吐き出すと、目頭を指で強く押さえ、ゆっくりと顔を上へ向けた。


――幕府が、落ちたか。

将軍家が政権を返上したとなれば、天下は大きく揺れ、世は再び混沌の時代を迎えたはずだ。 命を賭して江戸の治安を守ろうとした己の最後を思い返し、胸の奥に冷たい風が吹き抜けるような寂寥感が広がっていく。


だが……俺はいつまでも過去に囚われているわけにはいかんのだ。

世が代わったのであれば、あちらに残してきた榊原一族の安寧と存続は、俺がこの世界で果たす働き――この女神からの『お役目』の成否に大きく関与することになるはずだ。


(……なんとしても、このアンジェリカ殿の身体で、お役目を全うせねばならん)


俺は溢れ出そうになる感情を殺し、ぐっと奥歯を噛み締めると、三枝殿へと鋭い視線を戻した。


「……話を戻そう。その未来の『げえむ』とやらで、お主は何を知っておるのだ?」


「あ、うん。でも……ちょっとお互いの前提知識のズレが大きすぎて、説明するのに時間がかかるかも」


「ふむ。ならば日を改めても良いが……今の話、公爵閣下にも同席のうえで聞いていただいた方が良さそうだな」


俺の言葉に、アナスタシア嬢――三枝殿は目を丸くして身を乗り出した。


「え!? 公爵閣下!? あなた、公爵家の人たちに自分が『転生者』だって明かしてるの!?」


「当然であろう。女神のお役目とは言え、人様のお子に体を借りているのだ。事情も話さず隠し通すなど道理に反する。ましてや俺は元々男だ。愛娘の身体に男が入れば、親であれば違和感に気づいて当然だろう」


「め、女神……? お役目……?」


三枝殿は「そんなのアリ!?」と言いたげに呆然と口ぐせを開けている。 俺はその反応を見て、小さく溜め息を吐いた。


どうやら、お互いに腹を割って一から話す必要がありそうだ。同じ日ノ本の出身だとしても、生きた時代が三百年も違えば価値観も知識も差がありすぎる。時間をかけてじっくり擦り合わせねば、得られる情報も得られん。


「三枝殿。後日、改めた案内を書簡にて送らせてもらう。時間をかけ、胸襟を開いて話そうではないか」


俺が告げると、ミルレット侯爵令嬢、もとい三枝殿はどこか圧倒された様子で、こくりと頷いたのだった。


評価・レビュー等は受け付けておりますが、返信できない場合が多いので、ご承知おきくださいmm


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AI利用状況設定については、設定にて「補助的利用(アイデア出し・資料調査・誤字脱字のスペルチェックなど、補助的な利用)」にチェックして投稿しています。

補助的利用については、「この設定は公開されません。※ただし、コンテストに参加されている場合や、商業化等で作品へのお問い合わせがあった場合など、関係する企業に伝達することがあります」

とのことなので、AIラベルは表示されていないようです。

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本作はAI(Gemini)を利用し、作者が文章を書き→AIに校正を行ってもらい→それを再度見直し、修正・削除を行っています。

基本お話は完全に手作りですが、描写等のもサポートしてもらっています。

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